2022/12/31

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【ハンガリー国立フィル 来日直前インタビュー】オーケストラメンバーが語る、小林研一郎マエストロ、日本への思い ―― チェロ奏者 コー・タマーシュ ――

1974年に第1回ブダペスト国際指揮者コンクールに優勝して以来、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者や音楽監督を歴任し、長年にわたりハンガリーで愛されるマエストロ、小林研一郎。
オーケストラメンバーが、小林マエストロへの思いや懐かしい出来事について語っています。

ハンガリー国立フィル コー・タマーシュ

チェロ奏者のコー・タマーシュです。
49年目のオーケストラシーズンを迎えました。

同僚がたくさん語ってくれましたので、他に何を語ったらよいか難しくなりました。最初に思い出す事は、やはり1974年に小林マエストロがブダペスト指揮者コンクールで優勝された時に戻るわけですが、まだインターネットも携帯電話もなかった時代、仕事終わりの気分転換はテレビを観ることとラジオを聴くことでした。他には余りありませんでした。

この第1回目の指揮者コンクールがハンガリーで開催された時、全国民がテレビ前に釘付けになって、
最終日まで興奮しながら放送を観ていました。音楽家はもちろんのことですが、そうでない方々も含めて。ハンガリーとって本当に大きな出来事だったのです。各ラウンドも最後まで、とてもエキサイティングしましたし、小林さんの指揮は本当に素晴らしかったです。
本選でベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を彼が指揮したことをよく覚えているのですが、冒頭で衝撃を受けました。まるで自然の中にいるような感覚の音響でした。

あの頃はフェレンチク・ヤーノシュ氏がハンガリーで一番有名な指揮者でした。そして彼が審査員長でもありました。彼がインタビューでコンクールについて、そして小林さんについて聞かれた時に、「この若者は神に祝福された天才だ」と答えたのです。あれからずっと、この言葉が脳裏に焼き付いています。優勝者として私たちの所に指揮をしにいらしてから、何度も共演したコンサートは大成功を納め、オーケストラは彼の事を本当に慕っていました。
後に、残念ながらフェレンチク・ヤーノシュ氏が他界されて彼の不在によって穴が開きましたが、小林さんに私たちの指揮者になって頂くために、国内各方面に依頼し、多くの壁を乗り越えないとなりませんでした。

小林さんとの思い出でもあり大きな出来事に戻るのですが、ストラヴィンスキー:「春の祭典」を何度か共演した時、初日のリハーサルで、冒頭からではなく、曲の途中から降り始めたのです。そこは曲の終盤にあたり、大舞曲・狂喜的な要素があり最後を迎える部分なのですが、いつも同じ場所からリハーサルが始まりました。
そこにはクラリネットに何小節か短いフレーズがあるのですが、次の日も、同じ場所からお願いしますというので、当然クラリネット奏者も吹き始めました。そして3日目以降は、彼がリハーサル室に入ってくると同時にクラリネット奏者はそのフレーズを吹き始めました。これはウェルカムカードのような、挨拶がわりとなりました。オーケストラ内でも習慣となり、すぐに良い雰囲気のリハーサルをするきっかけとなったのです。

まだお伝えしたいことがあるとすれば、彼の本職である指揮者としての姿勢ですが、準備から本番までの全工程において、羨ましくなるくらい、良い方向に導いていくのです。彼の指揮で、演奏できない奏者は一人もいません。彼の完璧な指揮法によって曲中も正確にとらえることができます。仮に何か起こったとしても、彼が追加で示す必要はなく、彼の2つの動作で新たに続けることができます。これらは奏者側の私達が気づく瞬間であり、彼にとってごく自然なことですし、聴衆が気づくことはありません。

最後にもう一つ伝えてもいいでしょうか。
小林さんの最大の魅力は、表現の豊かさです。リズムやキャラクターそして音量。最弱のP(ピアノ)から最強のF(フォルテ)まで、彼のパレットには全て表現されています。彼がハンガリーで愛される存在になったのは当然のことなのです。

―― ハンガリー国立フィルはどんなオーケストラでしょうか。

思い返してみると、ここ数年、昔の録音が時々放送されています。以前はハンガリー国立交響楽団という名称でした。フェレンチク・ヤーノシュ氏との録音や映像が、もちろん小林研一郎さんとのものも数多くあります。
テレビの前に座ってヘッドホンを付けてコンサートを視聴するのですが、一つのミスも見つけることができないのです。以前のオーケストラの演奏も素晴らしく、もちろん時代が違いますので、演奏レベルは異なりますが、それだけが大事だったわけではありませんでした。
現在はありがたいことに、素晴らしい奏者たちが全ポジションにいます。とても気持ちの良いことで、ステージ上が良い状態であれば素晴らしい音響で良いコンサートへと繋がるからです。
小林さんの昔の録音も、今日も変わらず聴きごたえのある素晴らしい演奏です。

ハンガリー国立フィル
<写真:左より[ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団]コー・タマーシュ (チェロ)、クビナ・アーグネシュ (オーボエ/イングリッシュホルン)、コヴァーチ・イムレ (フルート)>

【ハンガリー国立フィル 来日直前インタビュー】
オーケストラメンバーが語る、小林研一郎マエストロ、日本への思い

首席フルート奏者 コヴァーチ・イムレ
オーボエ奏者 クビナ・アーグネシュ
チェロ奏者 コー・タマーシュ


小林研一郎 指揮 ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
《公演情報》
現代いまを熱く駆けるマエストロが謳い上げる、時代を強靭に生き抜いた作曲家たちの魂
ハンガリー国立フィル創立100周年記念コンサート
小林研一郎 指揮 ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団

新年の幕開けを告げる“新世界”ほか (千住真理子出演)
日程:2023年1月16日(月) 19:00開演
王道の名曲プログラム (仲道郁代出演)
日程:2023年1月17日(火) 19:00開演
会場:サントリーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p988/

ハンガリー国立フィル


◆千住真理子のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/marikosenju/
◆仲道郁代アーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/ikuyonakamichi/
◆ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団アーティストページはこちらから

https://www.japanarts.co.jp/artist/hungarianphil/

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