2025/1/23

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【インタビュー】ブルース・リウ 6月ロッテルダム・フィルと共演!

ブルース・リウ

ブルース・リウ、ロシア音楽の季節のさなかに
――ラハウ・シャニ指揮ロッテルダム・フィルとプロコフィエフで共演

取材・文 青澤隆明(音楽評論)

 ピアニストの自由は、豊饒なレパートリーとともに、大きく広がっているものだろう。
ショパン・コンクールで注目を集めたりすれば、しばらくはどこへ行ってもショパンを弾くことを求められる。しかし、才能ある若者のストーリーにはまだまだ先もあるはずだ。
 「そういう時期がきたのだと思います。僕はかなり自然で自発的な人間だし、まだ取り組んでいない作曲家に挑戦してみようとも思っている。尽きせぬレパートリーがあるのは、僕たちピアニストにとって贅沢なことですからね。残りの人生、ショパンだけを弾いていくことも、自分が望めばできるのだろうけれど」と言ってブルース・リウは笑った。

ブルース・リウ

 ショパン・コンクールの後、チャイコフスキーの愛すべき組曲『四季』に心惹かれたリウは、2024年1月にレコーディングもまとめ、来る春のリサイタルで全12曲を弾く。ラフマニノフが自らの編曲で愛奏したメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」、スクリャービンのソナタ第4番、プロコフィエフの第7番「戦争ソナタ」を巧みに組み合わせたプログラムで、ロシアの多様な名作を通じ、自身の進境を鮮やかに示していくことになるのだろう。
 そして、6月になれば、ラハフ・シャニ指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団とまた来日し、プロコフィエフの名作、ピアノ協奏曲第3番を共演する。ロシア音楽へのチャレンジの続きが聴けるわけだ。「プロコフィエフの第3番は何度か演奏してきましたが、もちろん僕の好きな曲です。ラハフ自身もピアノで弾きますが、指揮者が同じ協奏曲を弾いているのは、僕にとってたぶん初めての機会になりますね」とリウは愉快そうに微笑み、「ピアニストとしてどう演奏するかを、彼なら前もって想像できるだろうし、とても面白いことになると思う」と言った。
 そういえば、チャイコフスキーはピアノがいつも好きだったし、ラフマニノフ、スクリャービン、プロコフィエフはステージでも大活躍した。「ラフマニノフは最高のピアニストですよね。プロコフィエフの録音はちょっと聴いたけれど、それほど偉大ではないと思います」とリウは言う。「コンポーザー=ピアニストについてどう考えるかということに関しては、もしピアニストによって演奏されなければ、作品はただの紙で、音楽ではない。楽譜に書かれていることそのものが音楽なのではなく、演奏されることで音楽になる――僕はいつもそのように考えています。どんな作曲家の楽譜をみるときも、台本を手にしているようで、自分がそこに籠めるものがたくさんあると感じる。ラフマニノフが彼自身の感情を籠めて弾くと、ときには彼が書いた楽譜と正反対のものになっているところもあると思えますからね(笑)」。

ブルース・リウ

 さて、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ハ長調op.26は1921年、30歳の頃に完成された曲で、彼一流のモダニズムの傑作として名高いし、20世紀の代表的なコンチェルトとして、古今の名手たちをこぞって惹きつけてきた。リズミックな躍動や勢いとともに、抒情的な魅力に溢れ、全体がコントラストに富んでいる。腕の立つピアニストにとっては絶好のレパートリーだし、オーケストラの緊密なかけ合いも聴きごたえがある。指揮者としての躍進も目覚ましいラハフ・シャニにとっては、リウも楽しみに語っているように、ピアニストとしても知悉したレパートリーだろう。
 そのラハフ・シャニは2023年6月以来、待ち遠しい来日となる。あのときは、史上最年少でロッテルダム・フィルの首席指揮者に就任して5シーズン目であったが、力量の確かさと人柄の良さがよくうかがえた。藤田真央を独奏に迎えたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、そしてチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》を聴いたが、ソリストも上手に立てながら、オーケストラをエネルギッシュに導き、しかし質感のくっきりした良い響きを抽き出していた。ピアニストのアンコールに加わって、ドヴォルザークのスラヴ舞曲をふたり仲良く連弾で聴かせたのも実にチャーミングだった。
 「ラハフとロッテルダム・フィルとは一度共演して素晴らしかったし、プロコフィエフはもっと良い演奏になるはず。非常にエネルギーに満ちた、推進力のあるオーケストラですからね」とリウはいよいよ期待を募らせる。
 曲のもつエネルギーや爆発的な勢いも、20代後半を歩むソリストと30代半ばの指揮者、オランダの名門オーケストラの情熱を焚きつけるのにうってつけだろう。今をときめく顔合わせだけに、新世代によるプロコフィエフへの期待も高まる。

ブルース・リウ


≪公演情報≫
世界を席巻する若き巨匠シャニ、熱狂を再び!
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
2025年6月23日(月) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月26日(木) 19:00 サントリーホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月27日(金) 19:00 サントリーホール [庄司紗矢香 (ヴァイオリン) 出演]
2025年6月28日(土) 14:00 横浜みなとみらいホール [庄司紗矢香 (ヴァイオリン) 出演]
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2124/

[その他全国日程]
2025年6月21日(土)ザ・シンフォニーホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月22日(日)愛知県芸術劇場コンサートホール [庄司紗矢香 (ヴァイオリン) 出演]
2025年6月25日(水)福井県立音楽堂 ハーモニーホール福井 [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月29日(日)所沢ミューズ アークホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]


⇒ ラハフ・シャニのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/lahavshani/
⇒ ブルース・リウのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/bruceliu/
⇒ 庄司紗矢香のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/sayakashoji/
⇒ ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/rotterdamphilharmonicorchestra/

おすすめの公演情報

ブルース・リウ ピアノ・リサイタル

  • 2025年3月17日(月) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール Muza Kawasaki Symphony Hall
  • 2025年3月18日(火) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール Tokyo Opera City Conceret Hall
公演情報はこちら
ブルース・リウ ピアノ・リサイタル

ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

  • 2025年6月23日(月) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール MUZA Kawasaki Symphony Hall
  • 2025年6月26日(木) 19:00 サントリーホール Suntory Hall
  • 2025年6月27日(金) 19:00 サントリーホール Suntory Hall
  • 2025年6月28日(土) 14:00 横浜みなとみらいホール Yokohama Minato Mirai Hall
公演情報はこちら
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団

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