2023/7/21

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【インタビュー】“作曲家・坂本龍一”の作品をクラシック界の俊英の演奏で<前編>

取材/執筆:原典子

 ピアニストの中野翔太とヴァイオリニストの成田達輝。日本のクラシック界を担うふたりの俊英が尊敬してやまない音楽家、坂本龍一の作品を演奏するコンサートが、8月29日に東京オペラシティ コンサートホールにて開催される。
 ふたりがはじめて坂本と会ったのは、彼が世を去る半年前の2022年9月。坂本が東京芸術大学の学生時代に書いたヴァイオリン・ソナタと弦楽四重奏をプライヴェートで録音したときのことだった。

成田:ヴィオラ奏者の安達真理さんからのお声がけでレコーディングのオファーをいただいたとき、YMOファンだった母にいちばんに連絡しました。母がピアノで弾く『Energy Flow』を小さい頃からいつも聴いていた思い出があって。僕はバッハの音楽にはじめて触れたのとほぼ同時期に、坂本さんの音楽を聴いていたのだと思うと、まるで自分にとっての“音楽の父”のように感じる存在でした

中野:僕も連絡をいただいたときはびっくりしました。僕は15歳からニューヨークに留学していたのですが、なぜ日本人である自分が西洋の音楽をやっているのか、意味を見出せなくなって、壁にぶち当たっていた時期がありました。そんなとき、ふと坂本さんの音楽が耳に入ってきて、“あ、こういうことなんだ”と思ったんです。言葉にするのが難しいですが、今までの自分の悩みが小さなものに感じられて。それから坂本さんの音楽にどんどん惹き込まれていきました

 今回のコンサートでは、そのヴァイオリン・ソナタを聴くことができる。1970年に作曲され、ほとんど人前で演奏されることのなかった作品だ(1984年のライヴ録音が残されている)。

中野:おそらく皆さんがイメージするような坂本さんの作風ではなく、現代音楽的な響きのなかに、ラヴェルやドビュッシーをはじめさまざまな音楽の要素が詰め込まれている感じ。若き日の坂本さんの“やってやる!”という音楽に対する情熱があふれ出ているような作品です

成田:無駄のない、高度な作曲テクニックで書き上げられた形式的な第1楽章、能のすり足を思わせるような第2楽章、そして血潮がほとばしるような鮮烈さをきわめた第3楽章。学生運動吹き荒れる時代ならではの、ギラギラしたものを感じます

 さらに特別ゲストとして、同じく坂本をリスペクトする箏アーティスト、LEOを迎え、「M.A.Y in the backyardと「戦場のメリークリスマスをトリオで披露。ほかにも「The Sheltering Skyや「ラストエンペラーといったおなじみのメロディから、二胡奏者のために作曲された「Flower is not a flower、ウクライナのヴァイオリニストとコラボした最新の「Peace for Illiaまで、坂本の初期から晩年にわたる多彩なプログラムとなっている。

成田:中野くんのソロでの“戦メリ”ではじまって、トリオでの“戦メリ”で終わるプログラム。坂本さんのどの曲も大好きなので、選曲にはすごく時間がかかりました

中野:コンサートの企画は坂本さんの生前から決まっていたのですが、プログラムを決定してから坂本さんにお伝えして、いろいろとアドバイスをいただければと思っていたところだっただけに……お別れとなってしまい残念です。“戦メリ”に関しては以前、リサイタルのアンコールで弾くことになったとき、坂本さんに『なにかアドバイスをいただけますか?』とメールをしたことがありました。そうしたら、『僕もいろいろ今までもっと新鮮な弾き方はないものかと試行錯誤してきたが、自分だけではそこに収まってしまって今の形に定着してしまった。その先に行くことはできない。だから、中野くんの“戦メリ”でいいんじゃないですか。新鮮な“戦メリ”が聴きたいです』とお返事をいただいて。それからは吹っ切れて、自分なりの解釈で弾いています

後編へ続く

全曲発表ニュースはこちら
https://www.japanarts.co.jp/news/p8005/


≪公演情報≫
アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2023-2024
若き俊英たちによる “戦場のメリークリスマス”
日時:2023年8月29日(火) 13:30
会場:東京オペラシティ コンサートホール
出演:中野翔太(ピアノ)、成田達輝(ヴァイオリン)、LEO (箏) 【特別出演】
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2035/


◆中野翔太のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/shotanakano/
◆成田達輝のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/tatsukinarita/

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