2014/1/8

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ジュリー・ケント インタビュー<2>[アメリカン・バレエ・シアター ABT]

・・・ジュリー・ケント インタビュー<1>はこちらから

アメリカン・バレエ・シアター

―何回もリハーサルを重ねながら、「この動きはこういう意味」「このステップではこんな感情や性格が示される」など、その都度理解が深まっていくものですか? 例えば、音楽家が楽譜の音符を追いながら練習をして、それぞれの音がなぜこう書かれているのかを発見する、と同じようなことがダンスにもありますか?
JK : そうですね、楽器を演奏される方々とは、少し違うプロセスになるかと思います。私の場合は、本番に先立つリハーサルは「準備」の意味合いが強いです。なぜなら、ダンサーは稽古場でめったに「全曲を通して」練習しないからです。ではなにをするかと言いますと、ステップとステップのパッセージがスムーズに行くように、何回もやってみるわけです。いわゆる「フロー」(=流れ)を掴むためにね。ぎこちなくなったり転んだりしないためです(笑)。
ですから、「あ、役の性格がつかめた!」という発見が起こるのは、私の場合は本番の舞台上です。音楽家の方たちのことはわかりませんので想像で申し上げますが、おそらくもっと自分で全体の練習ができるのではないでしょうか?でもダンサーにとってのリハーサルは、振付や場面ごとに細かく区切って進行しますから、全体像をつかむ、というのは全曲を通して踊る本番まで待たないとなかなかできませんね。もちろんその前に、いろいろなイメージはできあがっています。でも、それが明確化し、場面ごとにこういう関連性があったのか!という実感が湧くのは、本番です。自分の動きについても、「だいたいこんな感じ・・・」と思って練習していたことにピタッと意味が生まれて、「そうよ、この場面はこうやるべきだったんだわ!」って、驚きと共に、とても嬉しい発見をすることがあります。舞台の上でそれが起こっているのです。

―そうでしたか!観客である私たちは、素晴らしい舞台を見て、きっと前日までのリハーサルが完璧だったのだろう、と思っていましたが、それだけではないのですね?
JK : それだけではないのです。しかも、おなじ演目の数回の舞台で、どんどん深まって起こってくる場合もあるのです。「前回とはまたちょっと違うな」、とか、「そうか、もっと強い意味があったのね」など。リハーサルと本番の舞台とは、ダンサーにとってまったく異なる「学び」の場です。本番がもたらす発見は非常に大きなものです。私が、生の舞台を見ていただきたい理由もそこにあります。舞台上の踊り手と、観客であるみなさんは、同じ発見を同じ時に味わっているのです。ダンサーが本番の最中に、もっとも大きな発見に遭遇しているということを、舞台を見ながら、みなさんにも感じてほしいわ。エキサイティングな奇跡が起こっている、それがライブの舞台というもの。みなさんと一緒に作るものなのです。

―バレエが好きで、足繁く劇場に通う方々は、すでにその醍醐味を感じているようですね。今のケントさんのお話で、それが確信になりました。
JK : 嬉しいわ。

―さて次に、今回の相手役、ロベルト・ボッレ氏について聞かせてください。彼とのパートナーシップはいかがですか?
JK : 彼との仕事は「喜び」以外のなにものでもありません。貴重な体験、長いキャリアを経ても、めったに起こらない素晴らしいことです。彼がABTで度々踊るようになってから、何度もコンビを組みましたが、なんてすばらしい人!あんなに努力し続ける人を知りません。いつもしっかり目的を見据えて、そこに魂を捧げているかのようです。よく節制もしておられます。ご存知のように、彼自身ももう長いキャリアを築いています。押しも押されもせぬビッグ・スターなのに、いつもいつも研鑽し、学び、もっと先へ、もっと先へと考えています。輝かしいスターの彼のそばで仕事をする、しかもその人が本当に謙虚な人物、この影響は計り知れません。彼は、どんな細部も「もっと美しくなる余地があるはずだ」という目線で見ています。大変な努力家ね。ですから、何時間一緒にリハーサルしていても飽きないのです。偉大なパートナーですし、その彼と組んで踊れることは、まさしく私の最大の幸運のひとつですし、ここ4~5年コンビを組んだ相手のなかで、まぎれもなく最高のダンサーです。

―今のケントさんの声にとても力がこもっていたことからも、ボッレ氏の素晴らしさが伺えます。ですが、そのすべての褒め言葉は、ケントさんご自身にも当てはまると思います。
JK : 光栄です。ありがとうございます。

―ところで、ケントさんは日本の子どもたちにレッスンされた経験がおありですね? 彼らの印象はいかがでしたか?
JK : 日本の子どもたち!私が教師として見てきた大勢の子どもたちと、同じように素晴らしいです。そして彼らの長所は、練習にあたって「やるべきこと」をきちんと心得ていることです。練習がとても好きで、熱心です。とても真剣に、私の言わんとしていることを理解しようとします。全般的にとても覚えが良いです。教師にとって、熱心な生徒を教えることはとても嬉しいことです。みなさんは素晴らしいわ。

―彼らがプロのダンサーになりたい、と望むとき、ケントさんからの最大のアドバイスはなんでしょうか?
JK : どうお答えしようか、かなり悩みます。というのは、全員に共通して同じアドバイスをするべきかどうか、という問題がありますし。けれどもあえて、私自身が自戒の念もこめて思っていることをお話しましょう。
バレエであれ音楽であれ、クラシック芸術を自分の道とするならば、決定的な原則は「ひとつひとつのことを、いまよりももっとよくできるようになる」ために、全力で取り組むことです。プロになるか、ならないか、ということと関係なく、その心がけがすべての子どもたちの人生の役に立つでしょう。「エクセレントな」(=卓越した)ものになろうと自分を磨くこと。あらゆる勉強がそうあるべきで、そのことがみなさんを助けます。生き方そのものに役立ちます。1日の終わりに、「今日そうやってちゃんと過ごした」と思えるかどうかが、プロのアーティストになる、ならない、ということより、ずっと重要です。価値あるものを作り出せたかどうか、ということです。私にも二人の子どもも、音楽やダンスに興味を持っているので、習わせています。でも、主人も同様に言っているのですが、彼らが学びの過程で重ねている努力こそが大事なのであって、他のことが最重要ではありません。子どもたちが、今この日々を充実して過ごしているかに関心を注いでいます。

アメリカン・バレエ・シアター

―ありがとうございます。ところで話は変わりますが、ケントという名字は芸名だそうですね? あのミハイル・バリシニコフ氏が思いついて提案した名字と聞きましたが、本当ですか?
JK : ええ、そうです。

― なぜ「ケント」になったのですか?
JK : 勧められただけで、理由まではわかりません(笑)。ずいぶん昔の話で、私もあまり深く考えていなかったように思います。

―本名ではなく芸名で舞台に立とう、と最初から考えていらっしゃったのですか?
JK : はい。ですからまず、自分の両親に聞いてみました。そうしたら父は「ジュリー・アダムス」はどうか?って言ったのです。ADAMS なら、アルファベット順で多分いつも最初に名前が載るぞ、って(笑)。でも私は響きが好きじゃなかったので、アダムスは却下しました(笑)。でも、若かったですし、なんとなく本名じゃなくて別の名前を使ってみたかったのね。なにぶん30年も前のことですし、よく覚えていないのですが、それですんなり他の人からのアドバイスに従ったのだと思います。

―そうでしたか。ありがとうございます。では最後に、日本のファンのみなさんに一言メッセージをいただけますか?
JK : 2014年の日本ツアー、心待ちにしています。日本は私の第二の故郷です。キャリアをスタートした30年前は、自分がこんなに回数多く日本の土を踏むことになるとは思っていませんでした。今では日本に大勢の友人たちがいます。私だけでなく主人も、子どもたちも日本が大好きです。息子はもう4回、娘は2回、私と一緒に日本を経験しました。家に帰るような気持ちで日本に行きます。日本ツアーでは、自分が大好きな二つの役を踊ります。『マノン』と、そして『オネーギン』のパ・ド・ドゥです。とても楽しみにしています。

―「お帰りなさい」、という言葉でお出迎えします。元気にいらしてください。
JK : ありがとう、それではみなさん、2月にお会いしましょう!


アメリカン・バレエ・シアター2014年来日公演
詳しい情報はこちらから
≪くるみ割り人形≫
 2月20日(木) 19:00
 2月21日(金) 13:00
 2月21日(金) 19:00
 2月22日(土) 13:00
≪オール・スター・ガラ≫
 Aプロ 2月25日(火)18:30
 Bプロ 2月26日(水)18:30
≪マノン≫
 2月27日(木) 18:30
 2月28日(金) 13:00
 2月28日(金) 18:30
 3月1日(土) 13:00

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