2022/7/26

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「ハープと二人だと美しいハーモニーをお届けできるのではないかと思います。」(森麻季)

 天上から降り注ぐような透明感あふれる美声と、それを自在に操る高い技術、舞台映えするすらりとした長身と、整った美貌…森麻季は、その全てを兼ね備えた類まれな歌手だ。日本を代表するスター・ソプラノとして圧倒的な人気を誇るのもうなずける。

 その森麻季が情熱を注ぐコンサートシリーズが、「愛と平和への祈りを込めて」。東日本大震災に見舞われた2011年の9月にスタートし、今年で12回を数える。

森麻季
森麻季

 「9.11の時にワシントンにいて大変な衝撃を受けましたし、その後3.11が起こって、音楽だけでなくメッセージを届けるコンサートをやりたいと思うようになりました。今もまた、コロナ禍にウクライナへの侵攻と思いがけないことが次々と起こって、皆さん、これからどうなるのか、これまでのような生活ができるのかと、もやもやとした不安を抱えたりしていると思うのです。そんな時代に、コンサートの間だけでも、音楽によって心が洗われる、日頃の悲しみ苦しみが浄化される体験をしていただけたらと願って始めたシリーズです。ポップス系の音楽は、元気にしてくれる効果はあると思うのですが、人に寄り添い、心に染みるハーモニーを届けられるのはクラシック系の音楽なのではないかなと感じます。私の声は、堂々として立派というより心にスッと届きやすいタイプの声だと思うので、そのような目的に向いているのではないかと思っています」。

 コロナ禍では自身、浮き沈みを経験した。

 「それまでは、コンサートで歌わせていただける日々が続くのが当然だと思っていました。けれどそれが突然断ち切られて、いつ再開するかわからない時期が何ヶ月も続いたのです。だからコンサートが再開できた時はとてもありがたかったし、お客様と一緒に素晴らしい音の世界を共有することがどれほど貴重なことか痛感しました。けれどそのおかげで、1回1回の公演に全力を尽くし、お客様に行ってよかったと思える公演にしたいという気持ちが強くなりました」。

 今回の共演者は、世界的なハーピストのグサヴィエ・ドゥ・メストレ。美しくもダイナミックな音楽と、ダンサーのような容姿を併せ持つスター奏者だ。森とはNHKの「ニューイヤーオペラコンサート」で共演して意気投合した。

 「独奏ハープとコンサートを行うのは初めてです。オーケストラの伴奏だと立派な声が必要ですが、ハープと二人だと美しいハーモニーをお届けできるのではないかと思います。NHKでの共演の時は、ハープの独特な美しさに酔いしれてしまいました。
 メストレさんはオペラも大好きで、声楽家との共演も多く、曲をハープに起こした時のイメージをはっきり持っていらっしゃるので、今回はメストレさんが厳選したプログラムになっています。ロッシーニの《オテロ》の「柳の歌」は初めて歌うのですが、これはメストレさんが、ハープと相性のいい曲で私の声に絶対に合っている、ということで選んでくださいました」。

 SNSではコンサートなどの情報に加えて、普段の生活も積極的に発信。お裁縫やお料理、ペットやお二人の息子さんとの生活など、等身大の森麻季を感じることができる。

 「家のことはやりはじめるときりがないので、なるべく楽しんでやるように心がけています。音楽をかけながらお料理したり…コンサートでは歌だけに集中しますから、家で家事をやることはいいメリハリになっているように思います。
 息子は中学2年生と小学4年生になりました。子供がいなかったら、もっと自分のことに没頭して海外でキャリアを築けたかもしれませんが、子供のおかげで別の幸せをもらえています。自分のためだと頑張れなくとも、家族のためだと頑張れる。歌を歌うにしても、その作品に込められたいろいろな思い、行間にあるもの、さまざまな「愛」の形を理解できるようになったかなと。
 つい先日、長年つれそった猫が亡くなったんですけれど、晩年はお世話が大変だったんですね。でもいざいなくなってみたら、お世話させてもらっていたことがどんなに幸せだったかと気づきました。それもまた、貴重な経験だったと思っています」。

 森麻季が贈る「愛と平和への祈りを込めて Vol.12」、今回も聴く人の気持ちを励まし癒すことだろう。

(取材・文:音楽物書き 加藤浩子)


愛と平和への祈りを込めて Vol.12
森麻季&グザヴィエ・ドゥ・メストレ デュオ・リサイタル
日時:2022年9月20日(火) 19:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール Tokyo Opera City Concert Hall
プログラム:
ベッリーニ:歌劇「ノルマ」より “清らかな女神よ”
ロッシーニ:歌劇「オテロ」より “柳の歌”
プッチーニ:歌劇「つばめ」より “美しい夢”
フォーレ:夢のあとに、月の光、リディア
山田耕筰:曼殊沙華、からたちの花
ドビュッシー:アラベスク第1番、月の光
スメタナ(H・トゥルネチェック編):連作交響詩「わが祖国」より“モルダウ”
ほか
公演情報⇒https://www.japanarts.co.jp/concert/p971/


◆森麻季のプロフィールは下記をご参照ください。
https://www.japanarts.co.jp/artist/makimori/

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