2022/1/28

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デビュー25周年! 仲道祐子ロングインタビュー

仲道祐子

音楽ジャーナリストの伊熊よし子さんによる充実のインタビューをどうぞご覧ください。

前編
[ドイツ語の語感を生かしたプログラムで原点回帰]

 仲道祐子がデビュー25周年を迎え、「原点回帰」と題したリサイタルを行う。プログラムはメンデルスゾーン、リスト、田中カレン、ベートーヴェンの作品が組まれているが、これらは本格的にピアノと対峙し始めた中学時代から留学時代を経て現在に至るまで、彼女がピアニストとしての歩みを進めるなかで出会った大切かつ思い出深い作品ばかり。
「ドイツ音楽が好きでドイツに留学し、ドイツ語の語彙と音楽のフレーズの密接な関係を知り、作曲家ゆかりの地などを巡り、より深く作品に近づくことができました。いまはコロナ禍で困難な時期ですので、少しでも明るい気持ちになってほしいと願い、メンデルスゾーンから開始します。私にとっては、リストも節回しや個々の作品がドイツ的だと感じています。田中カレンの作品には高校生のときに初めて出会ったのですが(今回の作品は2017年作)、音楽を専門的に勉強したいと考えていた時期ですので、記念碑的に選曲しました。ベートーヴェンの《ワルトシュタイン》はドイツに行ってからベートーヴェンに対する思いが大きな変化をもたらし、偉大で近寄りがたく思い、こう弾かなければならないという概念にとらわれていたのが、より自由に弾くことができるようになったため、選びました。私はベートーヴェンのハ長調の曲が大好きなのです。前向きで頑張るぞという気概が込められている感じがしますので」
 恩師のクラウス・シルデは、「基本的な大原則を守れば、あとは自由に弾いてよい」という考えの持ち主。仲道祐子はとりわけベートーヴェンにおいてその教えを守り、作曲家が何をいいたかったのか、楽譜に書かなかったことまで考えを巡らし、音に昇華させていく。
「留学中、神のように思っていたベートーヴェンが同じ人間なんだと思えるようになりました。楽譜の読み方も深くなり、アクセントひとつでもそこに込められた思いを熟慮します」
 25年の歩みを音楽に込め、各々の作品と真摯に向き合う。その神髄を受け取りたい。

後編
[歌舞伎、読書などの世界で人間性を磨き、それを音楽の豊かさにつなげていく]

 アーティストは音楽を離れるとさまざまな趣味の世界に身を置く。その嗜好が広がれば広がるほど人間性が豊かになり、演奏にすべてが反映され、芳醇な音楽が生まれる。仲道祐子は7年ほど前から歌舞伎に魅了され、月に1度歌舞伎座に通うようになった。
「いまはコロナ禍で行くのが困難になってしまいましたが、歌舞伎は奥が深く、同時解説イヤホンガイドを聴きながら、舞台の進行に合わせて出演俳優の紹介・あらすじ・衣裳・道具・音楽・時代背景・歌舞伎独特の約束事など、多くのことを学んでいます。片岡仁左衛門、坂東玉三郎の舞台を最前列で双眼鏡片手に見ています(笑)。歌舞伎座のあの独特の空気感も一度味わうと癖になってしまいますね。歌舞伎の本などもいろいろ読み、それが高じていまは日本の文化や芸術に幅広く触れることが楽しみになりました」
 書籍では日本の着物やかんざしなどの小物、蒔絵などにも興味が広がり、博物館などにも足を運ぶ。さらに建築にも興味があると語る。
「門井慶喜の《家康、江戸を建てる》という本はとても興味深いんですよ。日本橋など、江戸の風情が残っているところを散策することも、新たな発見につながりますね」
 こうしたさまざまな分野に目を向け、自身の感性を磨くことが、演奏を肉厚なものにしている。そしてデビュー25周年を経た先には、また新たな地平が拡がっている。
「ブラームスの晩年の小品集、作品116から119までを演奏したいと考えています。フランス作品ではラヴェルも弾いていきたい。室内楽もすばらしい共演者と一緒に演奏すると、本当に自分が成長し、引き上げられる感じがしますし、何よりリハーサルから本番に向けて演奏が変容していく過程がとても勉強になって楽しい。管楽器や声楽家との共演では、ブレスの大切さが実際に理解できます」
 幅広い世界のことを吸収し、人間として成長したいという彼女の思いが演奏会で花開く。


仲道祐子 ピアノ・リサイタル
日時:2022年3月25日(金) 19:00開演
会場:Hakuju Hall
公演の詳細はこちらから


⇒ 仲道祐子のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/yukonakamichi/

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