2021/1/8

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キリル・ゲルシュタイン ~ピアノ・リサイタルについて語る~

“音楽は楽譜だけでなく、もっとどこか別のところからやってくるもの。”
ピアニスト キリル・ゲルシュタインのインタビュー第2弾は、 1/16(土)東京、1/17(日)所沢にて行われるピアノ・リサイタルのプログラムについて語りました。
前半はフランス、後半はドイツ・オーストリアの楽曲・・・ピアノの音色の楽しみ方とは!?
また、後進の指導において昨秋からベルリンに留学した藤田真央とのレッスンについても語っています!

キリル・ゲルシュタイン

続いて、ソロリサイタルについて伺います。こちらは全体にファンタジーの雰囲気がある、おもしろいプログラムですね。
 ドビュッシーのエチュードは、長らく演奏したいと思っていました。結果的に2020年の“ロックダウン・プロジェクト”のようになりましたが、おかげでしばらくこの作品と共に暮らし、集中して勉強できました。後半のドイツ・オーストリア系の作品とは別の種類の、フランス的なファンタジーが感じられると思います。
 ドビュッシーがこのエチュードを書いたのは、第一次世界大戦の最中です。コロナウイルスのパンデミックとは比べられないかもしれませんが、恐れやロックダウンによる孤独感は似ているのではないかと思います。
 しかしこのドビュッシーの作品からは、孤独や暗さと同時に、とてもビビッドでカラフルな世界も感じられます。困難な状況で、これほどの生きる喜びを内包した作品が書かれたというのは、興味深いことです。

一方、後半のシューベルト「さすらい人」幻想曲は、今の孤独に寄り添ってくれる音楽なのかなと思います。
 ゆっくりの楽章には、特にその要素がありますね。ソナタの構造を持ちつつ、ファンタジーにあふれる作品です。タイトルは、シューベルトが旋律を引用した歌曲に由来していますが、同時に、彼が冒険心旺盛で、さまざまな地点をめぐった人だったことにも関係していると思います。この曲からは、そんなシューベルトの挑戦を思わずにいられません。
 ドビュッシーとシューベルトの作品からは、異なる文化における考え方の違いを知ることができると思います。今はこのような状況ですから、音楽を通じて、心の中で世界を旅していただけたらと思いますね。

前半はフランスもの、後半はドイツ・オーストリアものということで、ピアノの音色について心がけることの違いはありますか?
 ベートーヴェンやシューベルトは、論理的に思考し、構造に配慮しながら音を並べていきました。それに対して、ドビュッシーは音を楽しみながら、とにかくソノリティを大切に音を決めていった。その違いは興味深く、演奏するうえでも意識する必要があります。
 現代ピアノのおもしろいところは、とてもフレキシブルな点。バッハからシューベルト、ドビュッシーまで、異なる音の世界を持つ作品をなんでも弾くことができます。

キリルさんは14歳からバークリー音楽院でジャズピアノを勉強し、再びクラシックの活動に戻るという異色の経歴をお持ちです。ジャズを学んだことは、クラシック作品の演奏に影響を与えていますか?
 そうですね。音楽は、ページに書かれたものから生まれるとは限らないという考え方が根本にあることは、何らかの形で影響し、私の音楽の地平を広げていると思います。
 音楽は楽譜だけでなく、もっとどこか別のところからやってくるもの。イマジネーションと呼ばれる、その宙を飛んでいるものを追う感覚を経験したことは大きかったと思います。そのおかげで、楽譜に書かれた音楽を演奏するにあたって、たとえ構造がしっかり組み立てられた作品でも、もともと即興的な感性から生まれたものであることを忘れずにいられるのです。

藤田真央

ところで、昨秋からベルリンのハンスアイスラー音楽大学に留学した藤田真央さんは、キリルさんに師事しているそうですね。
 そうなんです! この状況ですからずっとリモートレッスンだったのですが、このまえ真央がベルリンに来たときに会うことができました。彼は本当にすばらしい才能の持ち主で、大好きなピアニストです。何か信じられないような音楽を自然と引き寄せることができる人です。真央と話していると、おそらく彼の中にはすでに多くのものがあるけれど、それが育ってもっと引き出されたら、よりたくさんのことを広範に兼ね備えたバージョンの真央が生まれるのではないかと感じます。彼と一緒に勉強ができて、とても嬉しいです。

個性的な音楽性の持ち主であるキリルさんが先生ということは、藤田さんのような自由なピアニストは、ますますユニークな面を伸ばしていきそうですね。
 そうかもしれませんね、真央は本当にユニークなピアニストです。もちろん、誰にでもユニークさはありますし、一方でエキセントリックになりすぎてもいけないわけですが、そこで重要になるのは、音楽に対して真摯な信念と理解があるということです。音楽を聴くことの本当のおもしろさは、うまい演奏を聴くことではなく、パーソナリティを聴くところにあります。
 真央はとても豊かなパーソナリティの持ち主です。そこをさらに発展させようと、彼はベルリンで勉強することにしたのでしょう。

キリル・ゲルシュタイン

それでは、最後に日本の聴衆にメッセージをお願いします。
 今回このような状況の中で日本に来られたことを、とても嬉しく思っています。日本の聴衆は、積極的で反応がすばらしいので、演奏する喜びを大いに感じます。
 世界中でライブの音楽が減っている今、ホールに集まって生の音楽を聴けることは、とても恵まれたことです。その気持ちと、すばらしい作曲家の音楽を会場で共に分かち合えることを、楽しみにしています。

執筆:高坂はる香(音楽ライター)

■インタビュー第1弾
キリル・ゲルシュタイン ~樫本大進とのデュオ・リサイタルについて語る~
https://www.japanarts.co.jp/news/p5687/


樫本大進&キリル・ゲルシュタイン デュオ・リサイタル
2021/1/5(火) 東広島芸術文化ホールくらら 大ホール 詳細はこちら
(問)東広島芸術文化ホールくらら チケットセンター 082-426-5990
2021/1/6(水) 三島市民文化会館 大ホール 詳細はこちら
(問)三島市民文化会館 055-976-4455
2021/1/7(木) ミューザ川崎シンフォニーホール 詳細はこちら
(問)神奈川芸術協会 045-453-5080
2021/1/9(土) 小金井 宮地楽器ホール 大ホール 詳細はこちら
(問)小金井 宮地楽器ホールチケットデスク 042-380-8099(10:00~19:00/休館日第2・3火曜日を除く)
2021/1/10(日) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール 詳細はこちら
(問)ミューズチケットカウンター 04-2998-7777 (10:00〜18:00)
2021/1/12(火) サントリーホール 詳細はこちら
(問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
2021/1/13(水) 住友生命いずみホール 詳細はこちら
(問)住友生命いずみホール チケットセンター 06-6944-1188
2021/1/15(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール 詳細はこちら
(問)東海テレビチケットセンター 052-951-9104 (平日10:00~18:00)

キリル・ゲルシュタイン ピアノ・リサイタル
2021/1/16(土) 紀尾井ホール 詳細はこちら
(問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
2021/1/17(日) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール 詳細はこちら
(問)ミューズチケットカウンター 04-2998-7777 (10:00〜18:00)

⇒ 樫本大進アーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/daishinkashimoto/

⇒ キリル・ゲルシュタインアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/kirilgerstein/

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