2021/1/6

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キリル・ゲルシュタイン ~樫本大進とのデュオ・リサイタルについて語る~

ヴァイオリニスト樫本大進とのデュオ・リサイタルツアー、自身のソロ・リサイタルの為に来日中のピアニスト キリル・ゲルシュタインにスぺシャルインタビューを行いました!
2週間の隔離を経て、東広島芸術文化ホールくららにて初日を迎えました。
樫本との出会い、友人として音楽家として、2年半ぶりの共演となる今回のツアーはどのような公演になるのか!?公演の魅力に迫ります。

キリル・ゲルシュタイン

大進さんとは20代の頃からの友人同士だそうですね。
 はい、知り合ったのは17年くらい前でしょうか。私は当時ドイツのフライベルクに住んでいて、大進はそこで勉強していました。初めて共演したのは、知り合ってわりとすぐの頃だったと思いますが、それよりも、たくさん一緒に寿司を食べたことをよく覚えています。大進の友人に優れた寿司職人がいて、何度も一緒に食べに行きました。すばらしい寿司でしたね…。

出会った頃のことは、寿司と一緒に思い出すのですね。
 そう、寿司の思い出が大きい(笑)。
 あの頃から友人としてお互いの成長を見ながら、音楽祭などで共演を重ねられたことはとてもよかったです。まとまったツアーで共演したのは、2年前の日本が初めてです。

二人の音楽家としての関係に変化を感じますか?
 もちろんです。人はみな変わるものですから。大進は好奇心旺盛でオープンな人なので、常に変化していて、音楽からそれを聴きとることができます。ザハール・ブロン、ライナー・クスマウルと、異なる個性の師のもと学び、さらに、さまざまなスタイルや考えを持つ音楽家とオーケストラで交流していることは、彼の音楽を豊かにし、地平を広げています。私も同じように変化しているといいのですが、それは彼に聞いてみないと(笑)。
 古き良き友人とは、毎日一緒に演奏していなくても、次の共演の時にまた成長しているだろうという信頼感があります。そんな演奏仲間がいるのは、何ものにもかえがたい、本当にすばらしいことです。

大進さんの音楽の魅力は?
 誰かの音楽を言葉で説明することは、ほとんど哲学的な問いのようで難しいですね…。たとえばベートーヴェンのソナタがどんな作品か、もし言葉で説明できるならば、聴く必要はなくなってしまいます。とにかく聴いてみて!と言いたいかな。

樫本大進、キリル・ゲルシュタイン

では、今回のプログラムを演奏するにあたって楽しみにしていることはありますか
 作品の魅力を伝えるのに言葉はいりませんが、プログラムの並びについてはぜひお話ししたいと思います(笑)。みなさんの耳に誠実であることを念頭に、作品ごとのコントラストを重視して選曲しました。ディナーのコースのような感覚でしょうか。
 それぞれの作品にドラマとノスタルジーが感じられますが、全体に一貫して流れているのは、喜ばしいムードです。私が特に気に入っているのは、後半の武満「妖精の距離」からベートーヴェン「クロイツェル」への流れですね。タイトルを見てもそこに関係性は感じられないかもしれませんが、実際に音楽を続けて聴くと、音のなかに潜む何かによって両作品のコントラストが明らかになり、とてもおもしろいんです。
 その意味で、前半も同じ作りになっています。プロコフィエフ「5つのメロディ」は、どこか武満の作品に語りかけているようなところがある。そして、「クロイツェル」と同じイ長調で書かれたフランクのヴァイオリン・ソナタへと続き、プロコフィエフとのコントラストが感じられるはずです。
 今回、日本のみなさんの前で武満を演奏できることにも、大きな意義を感じています。これは1951年、武満初期の作品です。もう70年も前に書かれたものというのも、興味深いですね。

いわゆる“現代音楽”とはいえ、書かれたのはもうそんなに昔のことなのですよね。
 そうですね、“モダン”とは何かというのは、興味深い議論です。例えばベートーヴェンの作品は、武満と比較して、音の選び方、アイデア的な“モダンさ”の面で、まったく遜色ありません。19世紀のドレスを着ているけれど、今見てもとてもエキセントリックな印象を与える、という感じ。
 音楽作品を美術館に並べるとしたら、普通のキュレーターは、同時代のハイドンとベートーヴェンを一つの部屋に置くでしょう。でも例えば、20世紀のピカソと17世紀のレンブラントを並べたら、コントラストがあらわれ、同時に普遍的な共通項も見えて、より興味深い発見があるかもしれない。それと同じように、プロフィエフとフランク、武満とベートーヴェンを並べることで、作品同士が互いについて語り、現代作品の古風な魅力、逆に古い作品の新しさを発見できるのではないかと思います。

キリルさんは、現代のミュージシャンに積極的に作品を委嘱されています。そうすると、時代で作品を区分する気持ちはなくなってくるのでしょうか?
 違いが自然と聞こえることはあると思いますが、私自身が境界を引こうとは思いませんね。優れた作品であれば、2020年に書かれようが、1820年に書かれようが、関係ありません。
 作曲家でピアニストだったブゾーニは、すべての音楽はもともとこの宇宙の中に存在していて、それを誰かが降ろしてきているにすぎないと言っています。その意味では、全ての作品は、同時代に宇宙のどこかに存在していたことになる。それを宙から作曲家が“ダウンロード”し、レシピにしたものを、私たちが料理するわけです。

キリル・ゲルシュタイン

ソリストとしても活躍されるなか、室内楽のどこに魅力を感じますか
 室内楽にこそ最高のレパートリーがあると言われますが、本当にそうだと思います。そして、音楽を通じた親密なコミュニケーションを要する、とても人間的な音楽だという点も魅力です。最近はソーシャルディスタンスの話ばかりですから、よりシンボリックな演奏形態ではないでしょうか。
 そして、室内楽における音楽的な会話の栄養素となっているのは、聴衆のみなさんの存在です。それぞれの感情を抱いた人間が、一つの会場に集い、空気の振動…音と呼ばれるものを感じ、分かちあう。これは魔法のような出来事です。だからこそ、このような状況でも、会場で音楽を届ける努力が続けられているのです。そのことを、いつも忘れずにいたいですね。

執筆:高坂はる香(音楽ライター)

ゲルシュタインの言葉から、様々なイメージが膨らみます。
1/16(土)東京、1/17(日)所沢で行われるピアノ・リサイタルについて語ったインタビュー、第2弾も公開中です。
キリル・ゲルシュタイン ~ピアノ・リサイタルについて語る~
https://www.japanarts.co.jp/news/p5689/


樫本大進&キリル・ゲルシュタイン デュオ・リサイタル
2021/1/5(火) 東広島芸術文化ホールくらら 大ホール 詳細はこちら
(問)東広島芸術文化ホールくらら チケットセンター 082-426-5990
2021/1/6(水) 三島市民文化会館 大ホール 詳細はこちら
(問)三島市民文化会館 055-976-4455
2021/1/7(木) ミューザ川崎シンフォニーホール 詳細はこちら
(問)神奈川芸術協会 045-453-5080
2021/1/9(土) 小金井 宮地楽器ホール 大ホール 詳細はこちら
(問)小金井 宮地楽器ホールチケットデスク 042-380-8099(10:00~19:00/休館日第2・3火曜日を除く)
2021/1/10(日) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール 詳細はこちら
(問)ミューズチケットカウンター 04-2998-7777 (10:00〜18:00)
2021/1/12(火) サントリーホール 詳細はこちら
(問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
2021/1/13(水) 住友生命いずみホール 詳細はこちら
(問)住友生命いずみホール チケットセンター 06-6944-1188
2021/1/15(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール 詳細はこちら
(問)東海テレビチケットセンター 052-951-9104 (平日10:00~18:00)

キリル・ゲルシュタイン ピアノ・リサイタル
2021/1/16(土) 紀尾井ホール 詳細はこちら
(問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
2021/1/17(日) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール 詳細はこちら
(問)ミューズチケットカウンター 04-2998-7777 (10:00〜18:00)

⇒ 樫本大進アーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/daishinkashimoto/

⇒ キリル・ゲルシュタインアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/kirilgerstein/

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