2013/8/23

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樫本大進 インタビュー[ベルリン・フィル八重奏団]

樫本大進

Q:ベルリン・フィルにある室内楽グループの中で、最も古く80年以上の歴史を持つベルリン・フィル八重奏団ですが、現メンバーでの最初のコンサートは今年3月27日でした。最初のコンサートの感想をお聞かせいただけますか?
現メンバーでの最初のコンサートの日は、僕の誕生日だったのです。ベルリン・フィルがバーデン・バーデンでフェスティバルを行うのも初めてでしたし、とても新鮮な気持ちだったことを覚えています。もちろんフェスティバル中は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートもあったので、リハーサル、本番の繰り返しの日々で、音楽に浸っているという感覚と、良い意味での緊張感がありました。
メンバーは、いつもベルリン・フィルで演奏している仲間たちなので、音楽の方向性や、どのような音楽を目指したいと思っているかということは、判りあっています。ひとつの音楽に向かっているという一体感が愉しいですね。
シューベルトの八重奏曲を演奏したのですが、リハーサル中に「立って演奏しよう!」ということになったのには、ちょっとびっくりしましたね。

Q:日本公演でも立って演奏するのですか?
A:それはまだ決めていません。長い曲なので疲れてしまう(笑)・・・という意見もあって、これからみんなと相談します。

Q:過去のメンバーの演奏を聴いたことはありますか?
A:大昔の演奏をCDで聴いたことはあります。「さすが!」と思いますが、僕たち新しいメンバーのフレッシュなところも、きっと楽しんで聴いていただけると思います。

Q:「八重奏」という編成は、演奏なさっていてどのように感じていらっしゃいますか?
A:弦楽器奏者5名、管楽器奏者3名という編成なので、シューベルトの八重奏曲のように全員で演奏する作品もあれば、普段演奏できないような編成の作品に取り組むことができる、編成の選択肢が広いというのが魅力ですね。

Q:現メンバーは、ベルリン・フィルの各パートを代表するような奏者がそろっていますね?
A:そうですね!そういう意味で「ベルリン・フィル八重奏団は、小さなオーケストラ」です。オーケストラでは弦楽器奏者約50名が、管楽器奏者約20名と一緒に演奏しますが、八重奏団は5対3なので、僕たち弦楽器奏者ががんばらなくてはいけませんが!(笑)・・・。

Q:樫本大進さんから、メンバーをそれぞれご紹介いただけますか?では、まず先日「音楽の友」誌でも対談したホルンのシュテファン・ドールさんから・・・。

A:シュテファンは“ベルリン・フィルの顔”です。前シーズンまで楽員代表を務めていて、プログラミングのことなど楽団のためにしっかりやってくれました。でもプライベートでは家族と一緒に過ごすことが好きで、人生をエンジョイしています。最近は、お子さんと湖でウィンドサーフィンをして楽しんでいるそうです。

Q:次は、クラリネットのヴェンツェル・フックスさんについて教えてください。

A:よく一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだりして、プライベートでも仲良くしています。素晴らしいクラリネット奏者ですし、コミュニケーションもとりやすい、彼がいると安心しますね。それでいて、いつも一緒の演奏はしない、一緒に演奏しているといつもサプライズがあって、良い意味で刺激になります。

Q:ファゴット奏者のモル・ビロンさんは、どのような方ですか?

A:若い時にベルリン・フィルに入団して、ずっと活躍している演奏家です。僕よりも少し年下ですが、いつも僕が悔しくなるほど落ち着いて余裕を持って演奏しているところなど、凄いなぁと思っています。

Q:それでは同じヴァイオリンのロマーノ・マシーニさんは?

A:ロマーノは、料理が上手なんです!特にパスタが素晴らしくて、何回もごちそうしてくれました。ベルリン・フィルにあるカフェテリアの内容もチェックしていて「カフェテリアのご意見番!」ですね。以前からベルリン・フィル八重奏団のメンバーとしても活躍しているので、作品についてもよく知っていて経験豊富です。

Q:ヴィオラ奏者のアミハイ・グロスさんは、赤穂・姫路国際音楽祭「ル・ポン」にもよく参加なさっていますね。

A:同い年で、以前から室内楽などで一緒に演奏してきた友だちです。僕がベルリン・フィルに入った時、アミハイもよくエキストラとしてベルリン・フィルで演奏していたので、休憩中などに「ちょっと、ここ一緒に演奏しよう!」と言って練習したり、励まし合ったりしていました。アミハイが僕が入団した次の年にベルリン・フィルに入って嬉しかったです。僕が心から信頼している演奏家ですね。

Q:チェロのクリストフ・イゲルブリンクさんはどのような方ですか

A:彼はこのチームのムードメーカーです!リハーサルでみんなが行き詰ってしまった時に、面白いことやホッとすることを言って、場を和やかにして前に進ませてくれます。ユーモア・センスも抜群だし、これは彼にしかできない、と思います。それからとてもピアノが上手です。クラシック音楽はもちろん、ジャズなんかもプロ並みだと思います。そうそう、彼とはベルリンの日本食レストランで、よく会います!日本食が好きなんですね。

Q:最後にコントラバス奏者のエスコ・ライネさんについては

A:ベルリン・フィル八重奏団のとりまとめをしてくれているボス的存在です。とてもダンディーで、カッコいいですよ!普段は、言葉少なで思慮深い性格。コントラバス奏者として低音でメンバーを支えてくれていますが、まさに八重奏団の縁の下の力持ちです。

Q: インターナショナルなアンサンブルですね?
A:そうですね。ドイツ人は3人しかない。そういった意味で、世界各国から演奏家が集まっているベルリン・フィルの『縮図』のようなアンサンブルといえるかもしれません。

Q:今回演奏してくださるシューベルトの八重奏曲についてお話いただけますか?
A:この作品を演奏するためにベルリン・フィル八重奏団が結成されたということもあり、僕たちにとって大切な作品、十八番(おはこ)の作品です。内容も濃く演奏時間も長い大曲なので、全員でもの凄く集中して良いコンサートにしたいと思います。

Q:リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は、オーケストラ曲として有名ですね。
A:もともとはオーケストラの作品ですが、僕達が演奏するのはハーゼンエールの編曲版。指揮者がいませんが、第一ヴァイオリンの譜面に「ヴァイオリンと指揮」と書かれているので責任重大です。リヒャルト・シュトラウスの作品は、各パートが緻密に組み合わされています。それらが紡がれていき音楽に結実する・・・このことを実感できる作品だと思います。今からとても楽しみです。

ベルリン・フィル八重奏団

Q:日本のファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
A:ベルリン・フィルのメンバーが作っているアンサンブルはたくさんありますが、ベルリン・フィル八重奏団は80年以上の歴史を持ち、当時から今まで活発に活動している団体です。今年からメンバーが新しくなり、古き佳きものは大切にしつつも、僕たちで作り上げていくんだ!という気概に溢れています。メンバー同士は音楽的にも人間的にも信頼しあった仲間たちですので、きっと充実した日本ツアーになると、今から楽しみにしています!ぜひ聴きにいらして頂きたいです。

Q:大進さんに憧れてヴァイオリンを始めたという子どもたち、ヴァイオリンをがんばっている子どもたちにも特別にメッセージをいただけますか?
A:僕も、心はまだ10代ですよ(笑)!子どもたちには、今やりたい!と思うことは何でも積極的に挑戦して欲しいと思います。ヴァイオリンの練習はもちろんですが、他のことも何ごとも一生懸命取り組んで欲しいですね。やってみなければわからないこともたくさんあります。好奇心を持って経験を拡げていくことは、人生の大きな糧になるはずだから。がんばってください!

取材:ジャパン・アーツ


選ばれし8人、世界最強のソリスト集団!
ベルリン・フィル八重奏団
2014年1月27日(月) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
[曲目]
R.シュトラウス(ハーゼンエール編):もう一人のティル・オイレンシュピーゲル
モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407 (ホルン:シュテファン・ドール)
シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 D.803
公演の詳細情報はこちらから

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