2013/8/22

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躍進する劇場、イタリア・オペラの希望 ~ トリノ王立歌劇場への期待

 トリノは、魅力的な町である。イタリア統一の原動力となった歴史を持ちながら、フランスに近いこともあり、知的で静謐な空気が漂う。洗練された食文化も、この町の自慢だ。
 そのトリノの中心部で、近年新たな輝きを放っている存在、それが、トリノ王立歌劇場である。
 創設は18世紀半ば。19世紀の末には、プッチーニの傑作《マノン・レスコー》と《ラ・ボエーム》を初演して、大作曲家をスターダムに押し上げた。だが1936年には火災で全焼。1973年に再開し、それなりのレベルは維持してきたものの、しばらくは不遇の時代が続いた。
 状況が激変したのは、2007年に、イタリア人マエストロ、ジャナンドレア・ノセダが音楽監督に就任してからである。トリノ出身で、劇場に長く関わってきたヴァルター・ヴェルニャーノ総裁とコンビを組んだノセダは、オペラに造詣が深く、地元からの信頼も厚いヴェルニャーノ総裁のバックアップのもと、公演内容の強化に積極的に取り組んだ。その甲斐あって、今やトリノ王立歌劇場は、イタリアの多くの歌劇場が経済難にあえいでいるなか、もっとも魅力的で多彩なプログラムを提供する劇場へと変貌した。年間のプログラムを観て驚嘆するのは、演目にふさわしい歌手や指揮者が適材適所で配されていることである。オペラハウスは世界に星の数ほどあるけれど、この点でオペラファンを納得させてくれる劇場は極めて少ない。トリノ王立歌劇場は、そのまれな存在のひとつなのだ。それは同時に、この歌劇場がアーティストたちから信頼されていることの証でもある。来日公演の演目の歌手も、これ以上は考えられないほど理想的だ。
 しばらく前、トリノ王立歌劇場のバックステージを覗かせてもらったことがある。壁の高い所に、どこかで見たような横断幕がかかっていると思ったら、大成功を収めた2010年の初来日公演の時のものだった。ヴェルニャーノ総裁は言った。あの時の素晴らしい体験は、劇場のスタッフ皆にとって忘れがたい想い出になっている、と。一丸となって最善のものを提供してくれた彼らの心意気に、日本のファンは熱狂的な喝采で応えたのだった。再びの来日も、彼らにとって、そして私たちにとって、忘れられない想い出になるに違いない。

文:加藤浩子(音楽ジャーナリスト)

≪トリノ王立歌劇場 2013年日本公演≫

トリノ王立歌劇場

<「仮面舞踏会」より>
 ⇒ 公演詳細:https://www.japanarts.co.jp/special/torino_2013/
 [公演日程] 会場:東京文化会館
 《仮面舞踏会》
 □12月1日(日) 15:00
 □12月4日(水) 18:30
 □12月7日(土) 15:00

 《トスカ》
 □11月29日(金) 18:30
 □12月2日(月) 15:00
 □12月5日(木) 18:30
 □12月8日(日) 15:00

 《特別コンサート“レクイエム”》
 □11月30日(土) 14:00 サントリーホール

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