2024/12/6
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《レポート》藤田真央 フィルハーモニー・ド・パリにデビュー!(11/8)
世界中を飛び回り、檜舞台での活躍を広げ続けるピアニスト藤田真央。
11月8日に自身のフィルハーモニー・ド・パリ デビューを飾った「エリム・チャン指揮マーラー室内管」公演の様子、そしてパリの批評家や聴衆の熱狂的な反応を、現地在住の音楽ジャーナリスト・三光洋さんによるレポートでご紹介します。
藤田真央は11月8日に香港出身のエリム・チャンが指揮するマーラー室内管弦楽団とベートーベンの「協奏曲第4番ト長調」を弾いて、フィルハーモニー・ド・パリにデビューした。
当初予定されていたのはマリア・ジョアン・ピレシュだったが、ソリストの変更が公式サイトで発表されると、空席が次々に予約され、2400席の大ホールが9割以上うまった。
平土間で熱狂的な拍手を送っていたクラシック専門誌「アナクラーズ」のベルトラン・ボロネジ編集長は「26歳の誕生日を数日後に控えた藤田真央は(第1楽章)「アレグロ・モデラート」の冒頭から厳粛な中にも優しさの感じられる内省的な演奏がシューベルトを思わせる穏やかさで聴き手の心をグッとつかんだ。その後も、どのアタックも無理な力が入ることはなく、ビロードのように柔らかに響いた。次第にピアノから自然な歌が広がっていった。強いアーティキュレーションもつねに心地よい優美さをもって弾かれた。第2楽章「アンダンテ・コン・モート」では内面的なピアノと雄弁な弦楽器の強烈な対比から、ソリストの絶対的な孤独が浮かび上がってきた。第3楽章「ロンドー」は静かな出だしの後に、ベートーヴェンらしい闊達さがあふれたが、最後にはいわく言いがたい戦慄と明澄さに包まれた。」と批評した。
エネルギッシュであるとともに、精密に曲を作っていく秀逸なエリム・チャンの指揮とも呼吸がピッタリと合っていて、協奏曲を聴く喜びが誰にも感じられる演奏が生まれた。
アンコールで取り上げられた、グラズーノフ(1865・1936)「エチュードホ短調」(作品31の1)も流麗そのもので、観客の期待に応えた。
藤田真央はすでに6年前に、クララ・ハスキルコンクール優勝直後の2018年10月12日にブーローニュの森のルイ・ヴィトン財団ホールでリサイタルを行ってパリデビューを果たしている。
しなやかな、滑るような指使いと感受性豊かなさわやかな演奏に観客はスタンディングで喝采を送った。
演奏後楽屋を訪れた「ディアパゾン」誌のベテラン記者レミ・ルイからも「彼は間違いなく本物のアーティストです。やりたいことをするためのコントロールが完全にできています。手が小さいにも関わらず音が驚くほど力強く、アリシア・デ・ラローチャを思い出しました。」とこの時点でも太鼓判を押されていた。
2021年と2024年夏に参加したスイスのヴェルビエ音楽祭での演奏はクラシック音楽専門テレビ局「メディチTV」(Medici TV)が放映している。
その解説には「生来、自然な感性を持つ藤田真央はモーツアルト、ロマン派のいずれでも自在に演奏できる稀な才能の一人であることは間違いない。」と記されている。
2022年にSonyレーベルが録音した「モーツアルト・ピアノソナタ全集」はフランスを代表する音楽月刊誌「クラシカ」(Classica)とピアノ専門誌「ピアニスト」からそろって特選に選ばれた。
そして、「クラシカ」はこの5枚のCDを新規年間購読者にプレゼントするキャンペーンを現在展開中だ。
レコードを特選に推薦したピアノ批評を長年行ってきたアラン・ロンペッシュ記者は「ハルモニア・ムンディ録音のクリスチャン・ベザイデンホウトの持っていた知識、感性と敢然さ、これにソニー録音のリリー・クラウスのファンタジー、遊び心、不敵さ、Vox録音のブラド・ペルルミュテールの形式面の完成度とオーケストラのように響く音、といった特徴がそろい、作品の持つ湧き出るような創造性とドラマが完璧に表現されている。アーティキュレーションは多彩を極め、総譜の持つ全ての側面を生き生きと音にしている点ではドイツ・グラモフォン録音のホロヴィッツをも想起させる。」(「ピアニスト」(2022年9・10月号)と手放しで激賞した。
2022年にキリル・ゲルシュタインの指導を受けるためにベルリンに居を移した藤田真央はフランスをはじめとする欧州において、わずかな歳月で多くのピアノファンが待望する演奏家に成長した。
(執筆:三光洋)
◆藤田真央のアーティストページはこちらから
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/maofujita/