2024/7/2
ニュース
【インタビュー】アラン・アルティノグル(1)
2024年10月、フランクフルト放送交響楽団を率いてアラン・アルティノグルが来日します。初来日となるMo.アルティノグルのインタビューを2回に分けてお届けします。
訊き手・文 那須田務(音楽評論家)
6月23日フランクフルト放送交響楽団のヴィースバーデンのクアハウスにおけるコンサート当日の午後、公演の前にアラン・アルティノグルに話を訊くことができた。フランクフルト放送交響楽団 (以下hr) の芸術監督に就任して3 年目になるが、今振り返ってどんな思いを抱いているかと問うと、人懐こい黒い瞳を輝かせて語り出した。
アルティノグル (以下A) ―就任したばかりの頃はまさに新型コロナ禍という特殊な状況でした。コンサートの数も少ないし、楽員も距離を置いて座っていたので大変でしたが、一年前から徐々に通常の状態になりました。もともとレヴェルの高いオーケストラですから、少しずつ私自身の響きを加えていきたいと思っています。
―これまでに様々なオーケストラを振ってこられました。あなたにとってhrはどのようなオーケストラですか?
A―やはりドイツ・オーストリア系のレパートリーが得意ですが、柔軟性があるのでフランスやロシア、古典から現代音楽までどんな音楽もこなせます。とくに木管楽器の水準が高く、ドイツのみならず世界的にも素晴らしいオーケストラだと思っています。
―音楽監督のポストは2027年まで延長されます。今後どのような変化を望みますか?
A―放送局のオーケストラならではの優れたYouTubeチャンネルやフェイスタイムなどを通して世界中のクラシックファンが私たちの演奏を聴いています。10月の日本ツアーのように様々なところへ演奏旅行に行きたい。次のステップとしては優れた著名な指揮者をもっと招きたい。たとえばシャイーやエッサ・ペッカ・サロネンのような人たちが出てくれたら嬉しい。
アルティノグル (以下A) ―就任したばかりの頃はまさに新型コロナ禍という特殊な状況でした。コンサートの数も少ないし、楽員も距離を置いて座っていたので大変でしたが、一年前から徐々に通常の状態になりました。もともとレヴェルの高いオーケストラですから、少しずつ私自身の響きを加えていきたいと思っています。
―これまでに様々なオーケストラを振ってこられました。あなたにとってhrはどのようなオーケストラですか?
A―やはりドイツ・オーストリア系のレパートリーが得意ですが、柔軟性があるのでフランスやロシア、古典から現代音楽までどんな音楽もこなせます。とくに木管楽器の水準が高く、ドイツのみならず世界的にも素晴らしいオーケストラだと思っています。
―今度の日本公演のプログラムについて伺います。マーラーの交響曲第5番が予定されています。インバルがhrを指揮したブルックナーやマーラーのCDは日本でも人気が高い。あなた自身のマーラーの特色はどんなところにありますか?
A―マーラーはオペラを書いていませんが、彼自身優れたオペラの指揮者でした。彼の交響曲は常に歌と結びついていて、オーケストラに歌手のような柔軟性をもとめます。また数多くのコントラストやアゴーギク、テンポ・ルバートに特徴があります。でもどんな?ルバートといってもいろいろありますからね。ドイツやフランス、ロシアの音楽で違う。私見ですが、ルバートは言語と密接な関係があると思っています。マーラーにも独自のアゴーギクがあります。ユダヤの民族音楽やボヘミアの伝統的な音楽とも結びついています。私のオーケストラは創立以来、数多くマーラーを弾いてきました。第5番もおそらく150 回以上は演奏しているでしょう。ですから私自身の解釈が必要です。私はこれまでたくさんオペラを指揮してきました。こうした経験から言うとマーラーには特別なサウンドが必要です。たとえば、彼はウィーンの歌劇場やウィーン・フィルを指揮していますが、総譜を見ていると、「これはウィーン・フィルの弦のフィンガリングだな」などとよく思います。とても興味深いことです。
―今回、ラヴェル編曲の《展覧会の絵》を演奏されますが、日本のお客さんは色彩感豊かな演奏を期待しています。
A―大切なことです。20世紀初頭の重要なオーケストラの作曲家にラヴェルとストラヴィンスキーがいますが、彼らはとても親しく、ストラヴィンスキーはムソルグスキーの歌劇《ホヴァーンシチナ》をオーケストレーションする際にラヴェルに協力を求めました。その結果、フランスの色彩を纏うことになった。私はフランス人ですし、hrはドイツのオーケストラです。ドイツ・オーストリア系のマーラーやベートーヴェンとともに、フランスの色彩に染まったロシア音楽を聴いていただけたらとこの曲を選びました。
―共演者のブルース・リウと庄司紗矢香についてのご感想を。
A―二人ともまだ実際に共演したことがないので何も言えませんが、リウは一昨日のリハーサルでたいへん素晴らしいピアニストだと思いました。まだ20歳台の若さで音楽的に優れていますし、美しい音をもっている。庄司はコンサートを聴いたことがありますが、とてもすばらしかった。楽しみです。
(取材協力:マリア・ドイツ)
(⇒【インタビュー】アラン・アルティノグル (2) はこちら)
◆フランクフルト放送交響楽団のアーティストページはこちら
⇒https://www.japanarts.co.jp/artist/hr/