2023/12/4

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【インタビュー/フィルハーモニクス】楽しい!上手い!笑いとため息が同時にこぼれる、クラシック界の“切り札”

フィルハーモニクス

 とにかくめちゃくちゃ楽しい。
 世界最高峰の2つのオーケストラ、ウィーン・フィルとベルリン・フィルのトップ・プレーヤーたちによる最高峰のアンサンブル。というと、襟を正して正座で聴かなければならないような感じがするかもしれないけれど、「フィルハーモニクス」はその真逆。繰り返すが、とにかくめちゃくちゃ楽しい。しかも演奏のクォリティは最上。抱腹絶倒と感動が同居するステージは、「クラシックを聴きたいけれど何から聴けばいい?」というよくある質問へのファイナル・アンサー。クラシック界の“切り札”と言ってもいい。
 ノア・ベンディックス=バルグリーさん(ヴァイオリン=ベルリン・フィル)、ティロ・フェヒナーさん(ヴィオラ=ウィーン・フィル)、シュテファン・コンツさん(チェロ=ベルリン・フィル)の三人に聞いた。

 今回の来日公演の“目玉”が、「フィルハーモニクス」オリジナルの《カーニバル(謝肉祭)》だ。サン=サーンスの《動物の謝肉祭》をベースに、他のさまざまな動物たちも登場する「新版」。そして、ティロ・フェヒナー夫人でもある俳優・中谷美紀さんが朗読を務めるというのも大きな話題となっている。

ティロ 私たちのレパートリーの中には動物の曲がたくさんあるんです。それを使って私たち自身の《カーニバル》を作ったらどうなるだろうというアイディアから生まれました。クラシックはもちろん、さまざまなジャンルの音楽が登場しますが、みなさんがあまり予想しないようなものだと思いますよ。ちょうどトレーラーができたところなのでお見せしましょう!

 といって見せてくれたPCの自作デモ映像には、おなじみのウィーンのこうもりや(ヒント「ファルケ博士」)、聴けば必ず知っている60年代映画のアフリカの子象(ヒント「マンシーニ」)、あの有名な地球外生命体(ヒント「自転車」)、宇宙酒場でスウィングするエイリアン・バンド(ヒント「フォース」)等々、奇想天外、さまざまな“動物”たちがメドレー形式で登場する。
 サン=サーンスの《動物の謝肉祭》自体、他の作曲家の作品の引用やパロディをふんだんに用いているわけだから、「フィルハーモニクス」による、21世紀の新しいカーニバルと言えそうだ。

一同 そのとおり!

シュテファン 日本公演が世界初演ですよ!

ティロ これからクラシック音楽を聴いてくれる子供たちが聴くのにもいいと思いますね。

シュテファン ストーリー付きですから、それをたどりながら聴いてもらえると思います。

ティロ 私が書いたストーリーを、ミキ(中谷美紀さん)が日本語のきれいな言葉を選んでつないでくれます。日本以外の国でも興味を持ってくれているので、さまざまな言葉のバージョンを計画中です。

 ステージでは、他のメンバーが黒づくめのなかで一人、赤いジャケットを着用して目立っているティロさん。赤いヴィオラ奏者!

ティロ コンサートのたびに「どうして赤いのを着ているの?ヴィオラはそんなに大事なパートじゃないのに」と言われます(笑)。プライベートでは絶対に赤なんか着ないんですけど……。

 実際、ティロさんの控えめで奥ゆかしい人柄は、話しぶりからも十分に伝わってくる。でも、「いやいや。ティロはフィルハーモニクスのセンターだから!」と囃す他の二人。楽しそうだ。そうやって、彼ら自身がこの活動を、そしてもちろん音楽を、心の底から楽しんでいるからこそ、「フィルハーモニクス」を聴く私たちも楽しくなるのだ。

フィルハーモニクス

シュテファン ウィーン・フィルもベルリン・フィルも、いつも伝統的なシンフォニーをやっていますが、人生がそれだけだとしたら残念です。それ以外にもいい音楽はいっぱいあるから。それがやりたくて、このアンサンブルができたんです。ただ、シンフォニーと同じぐらいのクォリティでやらなければダメ。だからスピリッツとしては、オケで弾くのも、フィルハーモニクスで弾くのも同じです。

 2つの名門オケのメンバーが一緒に演奏することで起こる化学反応もあるだろう。

シュテファン 反応どころか化学的爆発だよ! ものすごいエネルギーが湧いてくる。

ノア でも誰がどちらのオケに所属しているのかなんて、考えたことがないです。私たちはお互いをよく知っていて、音楽的にも理解しあっていますから。それぞれがウィーンでやっていること、ベルリンでやっていることが「フィルハーモニクス」の歴史を作っているんですね。7人のアーティストがひとつになって、特別のものをプレゼンテーションするということです。

 この日のメンバーでちょっと面白いのは、ウィーン・フィルのティロさんはベルリン生まれ、ベルリン・フィルのシュテファンさんはウィーン生まれという逆転状態であること。ベルリン・フィル・コンサートマスターのノアさんはアメリカ出身なので、いわば中立。

ティロ ウィーンはやっぱりヨーロッパの文化の中心だと思います。今日何のオペラをやっているか、みんなが知っている。

シュテファン ウィーンの人たちは、政治より、国立歌劇場の次の総裁が誰になるかが大事。ベルリンではそれはあまり気にしてないよね。

ティロ オーストリア人の関心は、あとはニューイヤー・コンサート。そしてスキーの話かな(笑)。

ノア どちらの街もアメリカとは全然違って、歴史的な音楽会場から新しいものが生まれている。それが大事なところです。私たちが愛する音楽の新しい道を、これからも一緒に探っていきたいですね。

取材・文:宮本明


《公演情報》
「ウィーン・フィル」「ベルリン・フィル」のトッププレイヤー達が贈る最高のステージ!
中谷美紀とのコラボによるカーニバル(謝肉祭)を世界初演!

フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン with 中谷美紀
日時:2023年12月13日(水) 13:30 <アフタヌーン・コンサート・シリーズ2023-2024>
日時:2023年12月13日(水) 19:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2047/


◆フィルハーモニクス ウィーン=ベルリンのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/philharmonix/

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