2023/5/7

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【公演レポート】ウィーン少年合唱団2023 Bプログラム”オン・ステージ”

2023年5月4日(木・祝)、ウィーン少年合唱団 ハイドン組の日本ツアーが2日目もサントリーホールにて開催されました。この日は開演前にサプライズが。天皇、皇后両陛下と愛子さまが2階席に入っていらっしゃったのです。会場から自然に湧き起こった拍手に手を振ってお応えになり、ご臨席のもとコンサートが開幕しました。

“オン・ステージ”と題されたプログラムBには、オペラや映画に登場するナンバーが多くフィーチャーされています。

ウィーン少年合唱団

はじめはモーツァルトの2曲、《レジナ・チェリ(天の女王)》より〈アレルヤ〉と《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》から。《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》は昨日初披露されたアカペラ・ヴァージョンですが、今日はよりアンサンブルがまとまり、はじけるリズムにメンバー自身が楽しみながら歌っているのが伝わってきました。

パーセルの《来たれ、汝ら芸術の子らよ》より〈トランペットを鳴らせ〉では、「Sound the Trumpet」という英語のフレーズが伸びやかに繰り返され、ウィーン少年合唱団ならではの澄みきったハーモニーが心地よく響きわたります。ハイドンのオラトリオ《四季》より〈来たれ、のどかな春よ〉では、エレン君、ゲオルギ君、ローレンツ君、アルタイア君がソロを務めました。エレン君とローレンツ君は、続くメンデルスゾーンのオペラ《真夏の夜の夢》より〈ぼつぼつ模様の舌が二つのお蛇さん〉でもソロを歌って大活躍です。

ウィーン少年合唱団

映画『天使にラブソングを』より〈ヘイル・ホーリー・クイーン〉はゴスペル風の陽気な聖歌。メンバーみずから太鼓やタンバリンを鳴らし、全員で手拍子をしながら身体を左右に揺らして歌います。そこから一転して静謐な響きに満ちたビーブルの《アヴェ・マリア》へ。どちらも聖母マリアを讃える歌ですが、動と静のコントラストが鮮やかに浮かび上がりました。

ウィーン少年合唱団

そして今回のツアーのお楽しみ、当日発表の「本日のソロ曲」コーナー。この日はエレン君がシューベルトの《ます》を歌いました。透明なボーイソプラノの美しさはもちろんのこと、アヴィ君のピアノ伴奏がとても上手でびっくり。将来の夢は「ピアノが弾けるパイロット」だそうです。

ウィーン少年合唱団

ヴンシュの《今日、天使たちがウィーンにやってくる》は愉悦感あふれるウィーンらしい歌曲。5人のソリストが見事なアンサンブルを聴かせてくれました。前半最後の曲は、ヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ《皇帝円舞曲》。カペルマイスターのジミー・チャン先生がピアノで奏でるワルツに乗って、優雅に、華やかに締めくくりました。

ウィーン少年合唱団

後半は、メンバーたちがビゼーのオペラ《カルメン》より子どもたちの合唱と行進曲〈兵隊さんと一緒に〉を歌いながら入場してきました。以降もオペラからの曲が続きます。モーツァルトにオペラ《魔笛》より〈お二人とも、よく来ましたね〉は、エレン君、ノブタカ君、アルタイア君の3人によるソロのみで歌われました。ヴェルディのオペラ《マクベス》より魔女たちの合唱〈何をしたの?教えて!〉では、ノブタカ君が舞台裏から鳴らすスネアドラムが響きわたり、森の魔女たちが交わす恐ろしい会話に想像がふくらみます。たおやかなメロディが美しいオッフェンバックのオペラ《ホフマン物語》より〈舟歌〉は、1番がゲオルギ君とアルタイア君の二重唱、2番は合唱とエレン君のソロで歌われました。

ウィーン少年合唱団

ウィーン少年合唱団

プログラムBには久石譲の人気曲《となりのトトロ》が入っており、これを楽しみに来た子どものお客さんも多いことでしょう。アカペラの高音からはじまるアレンジは意外性があり、ウィーン少年合唱団のハーモニーで聴くと、おなじみの曲からも別の風景が見えてきます。ウィーン郊外にも大きな森がありますが、そこにもトトロのような不思議な生きものが住んでいるのでしょうか。

同じく日本語で歌われた岡野貞一の《ふるさと》のあとは、映画『魔法の剣 キャメロット』より〈ザ・プレイヤー(祈り)〉。アーサー王伝説をもとにした1998年公開のアニメーション映画の主題歌で、あたたかなメロディが心に響きます。

ウィーン少年合唱団

ウィーン少年合唱団

ラスト3曲はいずれもウィーンもので、軽やかな躍動感に満ちたヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・フランセーズ《上機嫌》、早口言葉のように高速で歌い上げるヨハン・シュトラウスⅡ世の《山賊のギャロップ》、同じくヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ《美しく青きドナウ》。気持ちよさそうにワルツのリズムに身体を揺らしながら歌うメンバーたちは、まさにウィーンっ子。いつかウィーンで彼らの歌を聴いてみたいと旅情をかきたてられました。

アンコールはニュージーランドの労働歌(シー・シャンティ)の《ウェラーマン》と、ヨハン・シュトラウス1世の《ラデツキー行進曲》。《ウェラーマン》ではソロを昨日とは違うメンバーたちが担当していました。

ウィーン少年合唱団

ウィーン少年合唱団

ハイドン組の公演を2日間聴いて感じたのは、メンバーそれぞれがソロで歌えるほど高い歌唱力と個性を持っていながら、ひとり欠けてもアンサンブルが成立しないほど互いに支え合っているということ。これから1ヶ月あまりかけて各地を巡るうち、彼らの歌はどんどん変化していくことでしょう。6月にふたたび東京に戻ってくる頃には、どんな進化を遂げているかも楽しみです。

文:原典子(音楽ライター/編集者)
写真:居坂浩文

◆ Aプログラム”プレミア” 公演レポート
https://www.japanarts.co.jp/news/p7869/


ウィーン少年合唱団 2023来日公演

《公演情報》
“天使の歌声”4年ぶり待望の来日公演!
ウィーン少年合唱団 (カペルマイスター:ジミー・チャン)
日時・会場:
2023年
5月20日(土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月15日(木) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月16日(金) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
6月17日(土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
6月18日(日) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
他 全国公演スケジュールは特設サイトをぜひご覧ください!
https://www.japanarts.co.jp/special/wsk/

<終了公演>
5月3日(水・祝) 14:00 サントリーホール
5月4日(木・祝) 14:00 サントリーホール


◆ウィーン少年合唱団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/wsk/

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