2013/11/16

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台湾公演記者会見レポート【ネルソンス&バーミンガム市交響楽団】

11月14日台湾で行われた記者会見の様子をレポートをお送りします。

アンドリス・ネルソンス

アンドリス・ネルソンス(以下、AN):台湾は2度目の訪問となります。最初はラトビア国立歌劇場管弦楽団のトランペット奏者としてでしたから、10年以上も前のことになりますね。
今回のプログラム(11月18日東京オペラシティ公演と同じもの)は、私にとっていろいろな意味で“スペシャル”な内容です。ワーグナーは、私は5歳のときに初めてこの作曲家の代表的な作品である「タンホイザー」を聴いてから、いっぺんに虜になりました。その後、オーケストラのトランペット奏者として、そして指揮者として彼の作品を手がける機会を得るにつれ、その偉大さを感じ続けています。その後、バイロイト音楽祭でも指揮したことも大きな経験になっています。
シベリウスのヴァイオリン協奏曲は名作のひとつですが、感情溢れる作品です。今回初共演となるヒラリーさんとの共演をとてもに楽しみにしています。
そして、ドヴォルザークの「新世界」は、バーミンガム市交響楽団(以下、CBSO)初めて指揮した曲なのです。この指揮をした4日後に、私とオーケストラがまさに“結婚”を決めた、運命の曲といえます。作品はとても魅力的です。ラトヴィア出身の私にとっては、スラヴ的情熱が感じられる刺激的な曲です。

ヒラリー・ハーン(以下、HH):私が初めて訪れたアジアの国が台湾でした。ずいぶん前になりますね、16歳か17歳のときだったと思います。全てが初めてで、新鮮でした。お客さまが音楽に熱心で、食べ物もそれまで見たこともないものばかりで、大変興味深かったのを覚えています。
このツアーで演奏するシベリウスは、共演者の組み合わせによって全く違う演奏になりますので、とても楽しみです。これまでに何回も演奏していますが、演奏する度に新しい発見をするのです。シベリウス自身もヴァイオリニストだっただけに、この作品はヴァイオリンの部分がとても美しく書かれていますが、もっと言えば、オーケストラとともに演奏しているヴァイオリンがいかに美しくなるかということを追求している作品であるとも思います。台湾の方々は芸術に対して大きな関心がある多くの聴衆がいるということはすばらしいことです。手を抜けないというプレッシャーはありますが(笑)。

スティーブン・マドック(CBSO事務局長):私からはバーミンガムという街について少々ご紹介をさせてください。バーミンガムはイギリスで2番目に大きい都市です。歴史的には産業革命の発祥地であり、現在でも自動車製造では世界的にも有名です。高級車を製造するジャガーも我々の活動を支援してくださっている重要なスポンサーのひとつです。人口100万のバーミンガムは、産業都市であるだけでなく、数々の名門大学のある大学都市であり、バーミンガム・バレエをはじめ、多くの世界的なレベルの芸術団体が拠点を置く文化都市としても名を誇っています。また、ロード・オブ・ザ・リングの作者トールキン、シェークスピア、エルガーなども近郊に居を構えていました。ですから、バーミンガムはイギリスにおける芸術の中心でもあるともいえます。
私たちバーミンガム市立交響楽団ついてもご紹介をいたしましょう。バーミンガム市立交響楽団は1920年に創設されました。現在は市から全体予算の30%の助成金を受けています。残りの70%はツアーや券売、協賛などでまかなわれています。
この30年間で、3人の首席指揮者を迎えました。現在ベルリン・フィルの首席指揮者を務めるサイモン・ラトル、フィンランドを代表するサカリ・オラモ、そして現在は若手指揮者として最も活躍を広げるアンドリス・ネルソンスと、どのマエストロも大変優秀なだけでなく、それぞれの個性をもって、オーケストラに大きな功績を残し、現在も進行形です。私たちCBSOは、2002年にサカリ・オラモと台湾に来たことがあります。その際もシベリウスのヴァイオリン協奏曲でした。ソリストは諏訪内晶子さん。なにかご縁があるのでしょうか(笑)。

その後、質疑応答が行われました。
Q:マエストロ、あなたとCBSOの活動についてお聞かせください。
AN:ひとことで言えば、私はとてもラッキーだったと思います。音楽作りだけでなく、音響がすばらしく、世界的にも有名なバーミンガムのシンフォニーホールで活動できるという、とても恵まれた環境にあります。そして、なによりもCBSOはラトルやサカリのときもそうですが、指揮者と共に成長していこうという姿勢があります。若い指揮者にとって、とてもありがたいことです。音楽とは、想像の世界を繰り広げていくということですから、私のイメージ、ファンタジーに対して、非常にオープンに反応してくれるのです。毎回新鮮な音楽づくりができています。

Q:同じ母国出身の名指揮者ヤンソンスの影響とは?

AN:彼は同じ国の出身でもある、私にとって最大のメンターです。尊敬すべき存在で多くの影響を与えてくれました。しかし、そういった偉大な人物をコピーはできないし、そうするべきでもないと思っています。

Q:バイロイト音楽祭を最初に指揮した印象は?
AN:今年で5回目になりました。バイロイト音楽祭は誰にとっても特別なところですので、何回も指揮できるのは大変光栄なことです。同時にとてもチャレンジングなことでもあります。ホールの構造上音響的にバランスを取るのがとても難しいのです。指揮台からでは実際にどのようなバランスで音楽が客席に届いているのかが判らないので、想像するしかないのです。ですから自分の感覚に加えて、オーケストラや歌手を含む全てを信頼することが必要ですね。この音楽祭の常連であるティーレマン氏にも多くのアドヴァイスをいただきましたが、彼は、バイロイトとの関係は理屈ではなく相性がいいか、全く受け付けられないかのどちらかだ、と言っていましたね。

Q:楽器奏者としてのキャリアはどのように指揮者のキャリアに影響していますか?
AN:オーケストラの一員であることを実際に体験したことは、指揮者になった今、相手の立場に立って、より理解を深める上でとても役に立っています。当時私も指揮者をジャッジする立場でしたから(笑)!オーケストラの一員がどういう立場にいて、普段どんなことを考えているのか、また、団員の普段の生活自体も含めて、その境遇にたって考えることが大事だと思います。指揮者とは、音楽の表現の伝達方法を知っているだけでは十分ではないということです。

その後、台湾公演についての質疑応答が行われました。
Twitterなどでも素晴らしかった台湾公演の様子が伝えられています!

ネルソンス&バーミンガム市交響楽団
写真は、公演終了後はにサインを求めて並ぶ200人以上のファンの皆さんの様子です。
同じプログラムが披露される11月18日東京オペラシティコンサートホールでの公演に、どうぞご期待ください!

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世界中から熱い視線!光り輝く俊英&イギリスの名門!!
アンドリス・ネルソンス指揮 バーミンガム市交響楽団

2013年11月18日(月) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」~第1幕への前奏曲
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47 (ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン)
ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界」

2013年11月19日(火) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
ベートーヴェン:バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15 (ピアノ:エレーヌ・グリモー)
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

公演の詳細はこちらから

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