2021/2/19

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[国際音楽祭NIPPON2020] 2021年2月15日・2月16日 室内楽プロジェクト公演レポート

諏訪内晶子が芸術監督を務める「国際音楽祭NIPPON2020」室内楽プロジェクトでは、王道かつ難曲ぞろいのクラシック、ユーモラスで躍動感に満ちたモダンの両プログラムの味わい深い対比を、お客様にお届けすることができました。
二日間にわたる公演の模様を、音楽ライター高坂はる香さんにご執筆いただきましたのでどうぞご覧ください。
同音楽祭の締めくくりは、5月10日(月)尾高忠明指揮NHK交響楽団との共演でブラームスのヴァイオリン協奏曲をお届けいたします。
どうぞご期待ください。

2021年2月15日(月) Akiko Plays CLASSIC with Friends
 一年越しでの開催となった、国際音楽祭NIPPONの室内楽プロジェクト。2日間にわたる公演で、クラシカルとモダンのプログラムを対比。それも、ソロ、ピアノ三重奏、ピアノ五重奏という同じ編成の曲目を同じメンバーで演奏するという、興味深い内容です。
 第一夜は「Akiko Plays CLASSIC with Friends」。音楽監督の諏訪内晶子さんと仲間たちにより、J.S.バッハ、ブラームス、ドォルザークという王道のソロ&室内楽レパートリーが演奏されます。コロナ禍の入国制限の影響による共演者の変更などを経て、米元響子さん(ヴァイオリン)、鈴木康浩さん(ヴィオラ)、辻本玲さん(チェロ)、阪田知樹さん(ピアノ)という、国内の優れた演奏家が、紀尾井ホールに集いました。

 幕開けに演奏されたのは、諏訪内さんの独奏による、J.S.バッハ「シャコンヌ」。あたたかくしっとりとした音が響くと、ホールの空気が落ち着き、聴衆の集中も高まっていくのがわかります。その演奏は、深い海の底を優雅に力強く泳いでいくような印象。諏訪内さんが身にまとっていた深いブルーのドレスのイメージと重なりました。

国際音楽祭NIPPON

 続いては、米元響子さん、辻本玲さん、阪田知樹さんによる、ブラームスのピアノ三重奏曲第3番Op.101。三者の音が心地よく混ざり合うドラマティックなハーモニーに始まり、ささやき合い、会話を交わすような親密な第2楽章、穏やかに包み込むような終楽章へ。それぞれの立体的な音楽が調和する、厚みのあるアンサンブルを聴かせました。

国際音楽祭NIPPON

 後半はドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2番。音楽評論家の舩木篤也さんをナビゲーターに行われた幕間のトークで、諏訪内さんは「楽しく和気藹々としたリハーサルだった」と話していましたが、舞台上の5人の雰囲気からその様子がわかります。互いの呼吸、音色を尊重しながら音を重ね、心が踊るような動きのあるアンサンブルが繰り広げられました。喜ばしさに満ちた空気とともに音楽が閉じられると、客席側の照明がつくまで、カーテンコールが繰りかえされました。
 クラシカルな作品ならではの響き、音楽の展開に安心して身を任せ、室内楽の魅力をしみじみ味わう第一夜でした。

2021年2月16日(火) Akiko Plays MODERN with Friends
 室内楽プロジェクト、第二夜は「Akiko Plays MODERN with Friends」。これまで折に触れて現代作品に取り組んできた諏訪内晶子さんですが、現代作品のみで構成された一夜のプログラムに挑むのは初めて。昨日と同じ演奏家たちに、エレクトロニクスの有馬純寿さんを加えたメンバーで、ライヒ、川上統、ダルバヴィ、オーンスタインを演奏します。

 冒頭は、ライヒの「ヴァイオリン・フェイズ」。同じ旋律が繰り返されるなか、一つの声部がわずかにずれ、さらに声部が加わって、そのずれが幻想的な音楽を生み出すというもの。

国際音楽祭NIPPON

 今回、3パートには昨年諏訪内さん自身の演奏を録音した音源が流され、そこに生の演奏が加わる形です。諏訪内さんの使用楽器は、昨秋からグァルネリ・デル・ジェス「チャールズ・リード」に変わったため、予期せずして、グァルネリとかつての使用楽器、ストラディヴァリウス「ドルフィン」の共演が実現しました。
 ホールに響く音源にのせて、生音で旋律が重ねられると、時間が二重で流れていくような感覚があります。エレクトロニクスと生のヴァイオリンが、新しい世界を見せてくれました。

国際音楽祭NIPPON

 続いては諏訪内晶子さん、辻本玲さん、阪田知樹さんによるピアノ三重奏で、川上統の組曲「甲殻」から、「ウミサソリ」「ミジンコ」「ガザミ」「オトヒメエビ」。なかでも「オトヒメエビ」は諏訪内さんのために書かれた作品で、世界初演です。
 プレトークでの川上さんの話によると、楽曲はいずれも「生き物のフォルムや動きをイメージして書かれている」とのこと。実際、3人が丁寧に紡ぐ音からは、生物の姿が目に浮かびます。
 「オトヒメエビ」は、赤と白の鮮やかなストライプが特徴だという外見と、竜宮城のイメージが結びつけられた作品。ひっそりと出現したオトヒメエビが、海の底でその華やいだ風姿を徐々にあらわにしてゆく様子が思い浮かぶ、みずみずしい音楽が流れました。
 そしてピアノ三重奏が米元響子さん、辻本玲さん、阪田知樹さんとなり、ダルバヴィによるピアノ三重奏曲。重く響くピアノの音に、二つの弦楽器が呼応して印象的に始まり、刻々と色と模様を変えていくさまは、まるで万華鏡を覗いているようでした。

国際音楽祭NIPPON

 後半はオーンスタインのピアノ五重奏曲。エネルギーに満ち、ワイルドかつノスタルジックな響きを持つ楽曲を、5人は見事に音色を切り替えながら奏でます。さまざまな情景が現れては消える、めくるめくオーンスタインの世界。緊張と弛緩、激しさと懐かしさが表現されます。音楽のパワーに圧倒されつつ、この曲を生演奏で聴けた喜びをかみしめました。互いに拍手で称えあう晴れやかな表情の5人には、客席からも大きな拍手が贈られました。
 「今後も、のちに古典になっていく現代曲に取り組んでいきたい」と諏訪内さん。新しい音楽との出会いを楽しみ、また未来の活動への期待も高まる演奏会となりました。

高坂はる香 (音楽ライター)


Akiko Suwanai Presents
尾高忠明 指揮/NHK交響楽団/諏訪内晶子(ヴァイオリン/芸術監督)
2021年5月10日(月)19:00 (18:00開場) サントリーホール
[出演者] 尾高忠明(指揮)、NHK交響楽団、諏訪内晶子(ヴァイオリン/芸術監督)
[プログラム]※予定
シベリウス:「ペレアスとメリザンド」組曲 Op.46
デュティユー:ヴァイオリンと管弦楽のための夜想曲「同じ和音の上で」
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 Op.77
https://www.japanarts.co.jp/news/p5977/

国際音楽祭NIPPON2020(2021年2月9日~5月10日開催)特設サイト
https://www.japanarts.co.jp/special/imfn/

ジャパン・アーツ ライブ・ビューイング Japan Arts Live Viewing
スマホ・PC・タブレットなどお好きなデバイスでコンサートを楽しめる公演同時LIVE配信サービス 『ジャパン・アーツ ライブ・ビューイング Japan Arts Live Viewing』。
ご自宅のリビングルームやお好きな場所でコンサートの鑑賞が可能です。


 国際音楽祭NIPPON Akiko Plays CLASSIC with Friends
視聴購入:1,500円
発売期間:2021年2月5日(金)10:00~2021年5月4日(火・祝)18:00まで
視聴可能期間:ご購入日より3ヶ月間

※音楽評論家の舩木篤也氏によるトークあり!

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