2015/10/29

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クリスチャン・ツィメルマン 公演レポート ~ ルクセンブルグにて、オール・シューベルト・プログラムを演奏~

2015年10月26日 20時 ルクセンブルグ・フィルハーモニー(コンサートホール)

ルクセンブルグ市内のKirchbergという高台に、10年前に建てられた現代的なコンサートホールは、パイプオルガンを備えた1,450席の大ホールと、卵のような丸いシェイプが独特な350席の小ホールから成ります。今シーズンより、グルターボ・ヒメノを音楽監督に迎えたルクセンブルグ・フィルの本拠地であり、アーティスト・イン・レジデンスには、アンドリス・ネルソンスやマグダレーナ・コジェナーを擁し、世界の著名アーティストが続々と登場するヨーロッパの新たな拠点として注目されています。

今回、ツィメルマンはこのホールに初登場。ステージににこやかに登場すると、静かに1曲目のシューベルトの「7つの軽快な変奏曲」を弾きはじめます。何という美しい音でしょう・・・。他の誰とも違う、本当に清らかな響き。 曲はまるで「キラキラ星変奏曲」のような可愛らしさを備え、このわずか数分で、聴衆も微笑みを禁じ得ないといった雰囲気が漂います。

客席に幸福感が広がったところで、ツィメルマンはそのまま続けて、「ソナタ第20番」に進めていきます。それはまるで、人間の多様な感情を揺り起こしていくかのよう。ざわめき、ときめき、安らぎ、潤い、不安、懐かしさ、満ち足りた気持ち・・・。ツィメルマンが紡ぎだす音色は、ありとあらゆる感情を私たちに思い出されてくれます。第4楽章のロンドでは、ハッとするくらいパウゼを大きくとったかと思うと、また思い出を懐かしむような味わい深い瞬間が現れてきます。なんて贅沢な、心の奥底から気づきに満ちた時間でしょう。

後半の「ソナタ第21番」は、46分にもおよぶ長大なソナタです。とりわけ第1楽章は、作曲家シューベルトが思い描いていた以上に繊細な演奏なのでは?と思えるほど、ツィメルマンは丁寧に弾きます。第2楽章は、宝箱のふたをそっと開けて見せてくれるかのような、慈愛に満ちた優しい音楽。もちろんその中には、ツィメルマンが創りだした愛おしい時間が凝縮されています。

ツィメルマンのシューベルト。聴衆はみな、ツィメルマンが導いてくれる世界に身をゆだね、あらゆる情景をまぶたに思い浮かべています。なんという幸福なリサイタル!この美しい音色、尊いシューベルトを、日本で分かち合える日が待ち遠しいです。

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クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
2016年01月13日(水) 19時開演 サントリーホール
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