2012/11/8

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白夜祭レポート(6)サンクトペテルブルグ マリインスキー劇場

マリインスキー・バレエの公演は来週からですが、今日からマリインスキー歌劇場管弦楽団の日本ツアーが始まります!バレエの魅力を語る時に欠かせないのは“音楽”の素晴らしさ。特に、今回日本初演となる「アンナ・カレーニナ」(ラトマンスキー版)は、マリインスキー劇場の総合力!が堪能できる作品。
そこで今日は、注目の「アンナ・カレーニナ」に出演するコンスタンチン・ズヴェレフ(ヴロンスキー役)、イスロム・バイムラードフ(カレーニン役)のインタビューをお送りします。

マリインスキー・バレエ

≪コンスタンチン・ズヴェレフのインタビュー≫

コンスタンチン・ズヴェレフ

Q:ヴィシニョーワさんとは、ヴロンスキー役で初めて共演したのですか?
A:そうです。僕にとってこれは本当にショッキングな出来事でした。モスクワでの公演が終わり、移動の準備をしていた時、スタッフの方から「明日からラトマンスキーの指導が始まるから劇場に来るように・・・」と言われたんです。若い将校たちの役を踊るんだろう…ということは想像していましたが、劇場に行ってみたら「ヴロンスキー役」と言われ、さらにヴィシニョーワと踊ると知らされ…倒れそうになりました。

Q:ヴィシニョーワさんは、あなたにとってどのような存在ですか?
A:僕にとっても皆さんにとってもスターですよね?

Q:では最初のリハーサルなど緊張したでしょう。
A:最初はもちろん光栄な気持と、緊張とでガチガチでした。でも踊り始めると、そんなこと関係ないんです。彼女はアンナで、僕はヴロンスキーになりますから。ヴィシニョーワ、ズヴェレフではなくなるんです。

Q:リハーサルではどのようなことをするのでしょうか?
A:具体的に踊る、ということですね。役について話す…ということはほとんどありません。それぞれの中である程度の役がイメージされていて、踊っていくことで、どんどん変わっていくイメージが具体化していくという感じです。特に「アンナ・カレーニナ」は、踊りの中に感情や、人間の関係性が組み込まれていると思います。

Q:このように激しい役を踊ると、次の日はどのような感じなのでしょうか?
A:役に没頭してしまって、なかなか現実に戻ることができませんね。心がそっちに行ってしまう…というか。自分のものではないようになってしまいます。

コンスタンチン・ズヴェレフ

≪イスロム・バイムラードフのインタビュー≫

イスロム・バイムラードフ

Q:カレーニン役はすでに何回も踊りこんでいらっしゃいますが、その中でも難しいところはどのようなところでしょうか?
A:そうですね。この作品はロパートキナ、ヴィシニョーワ、コンダウーロワ、テリョーシキナなど、ほとんどすべてのアンナと踊ってきました。僕の大切なレパートリーですね。これだけ踊りこんできて慣れてきたと同時に、難しさも感じています。特にこの役はカレーニンという人物のイメージをどうとらえ、どう伝えるかという点に心を砕いています。カレーニンというと威張っている、怒っている、というイメージですが、彼自身の表に出さない心の苦悩、葛藤を表現するためには、踊るだけではない表現力が求められますから。
それに、次から次へとシーンが展開していきますので、舞台袖では走っているか、着替えているか…とても慌ただしいんですよ!着替えは焦れば焦るほどうまくいかないんですよ~(と叫び、袖を通そうとして焦っているジェスチャー!もちろん、一同大爆笑!!!本当におもしろいバイムラードフです!)

Q:普段の(楽しい)あなたを見ていると、カレーニンを踊るなんて想像できませんけれども…。
A:ははははははは!僕だって想像できないよ~。でも、メイクをして髭をつけると…変わるんだな~これが!そんな時は僕に話しかけちゃいけませんよ。

Q:カレーニンは、どのような男性だと理解していますか?
A:カレーニンは悪い人だとよく言われますが、そんなことはないと思います。彼はただ、上流社会に属する人間なんです。仕事人間で、彼にとって家庭は二の次。当時、彼のような階級の男性にとって、妻は美しくなければならず、しかし夫が妻のことを理解しているかどうかは重要ではない時代でした。カレーニンは常に、周囲からどう見られるかということを気にしていました。周りが他人であればしかるべく振る舞うけれど、そこにいるのが妻であればどうでもいい、というような感じです。そして本人たちはそれを悪いとは思っていなかった。そういう時代だったのです。

Q:奥さんに裏切られるという悲しい部分も持った人で、そういうところも表現されているのでしょうか?
A:そうですね。小説は小説にすぎないかもしれませんが、感情は実際の生活での感情を、インスピレーションとともに膨らませてみることが大切だと思います。

Q:前回の来日公演で踊られた「眠りの森の美女」のカラボス役がとても印象に残っています。
A:“小さい役”は存在しない、いるのは“悪い役者”だけ、とロシア人がよく言うのをご存知でしょうか。観客の印象に残るには、“小さい役”であればあるほど鮮やかに演じなければいけません。カレーニンも、目立たないように演じることもできるでしょう。しかし本来は、観客の記憶に残るように演じるべきではないでしょうか。

Q:印象に残るカレーニンを踊りたいということですね?
A:そうです。ジュネーブでの本番出演後、私が食事をしていると、ある人が寄ってきて妻のカーチャ(エカテリーナ・コンダウーロワ)に「カーチャ、君は素晴らしかったよ。でもあの恐ろしい夫、あなたを苦しめて、ひどかったね!」と言ったのです。その人は、僕がその役を踊ったことを知らなかったのでしょう。でも、その時に印象深い演技ができたんだとガッツポーズをしました!
言わずにはいられなかったのだと思います。その時、私が伝えたかったイメージは伝えることができたし、観客はそれを理解してくれたと思いました。

イスロム・バイムラードフ

Q:印象に残るために重要視しているところは?技で見せるのか、感情をこめるのか…
A:まずは自分の周りをよく観察することが必要だと思います。私は普通の家庭に育ちましたが、祖父が貴族の末裔という人と親交があり、そのおじいさんの動作やふるまい、人への接し方などをしょっちゅう観察していました。接し方も話し方も一般人とは違うんです。カレーニン役を準備する時、まず振付を覚えた後に、私の記憶にあるその貴族のおじいさんの姿をベースにして役作りをしました。
感受性が豊かでないとそういうことはできませんよね。僕は人間観察が好きで、バレエを始める前からやっていました。周りの人がどういう風に私に接するのか、椅子の座り方、何かを持ち上げる仕草、どんな風に見て、どう振り向くのか。こういう人間観察が役作りに役だっていると思います。
小さな事ですがひとつ例を挙げると、年をとられた方は絶対にこういうふうにパッと振り向いたりしません。高齢者は体全体で振り向くんです。体の自由がきかなくなっていることをどうにかして伝えたい。観察して、考えていると、どう伝えるべきかが見えてきます。
私は普段から、人間の行動心理学に興味があります。人がこういう動作をする時はどういう意味があるのか…。話さなくてもその人の性格を読んだり、話し始める前にその人がだいたいどんな性格なのか見当をつけたりできますね。無意識のレベルではみんなそれを理解しているはずなんですが、そこを考える人は少ない。でもその部分を掘り下げていくことはとても有益で、人と会うこと、そしてお互いを理解することがより面白くなると思います。

Q:コンダウーロワさんとは家の中でもバレエのことで話をしたりしますか?
A:その時によりますね。できれば家に帰ったら仕事の話はしないようにしています。でも新しく役作りをしている時や、その作品の公演が終わったあとは、細かいところまで話し合いますね。
常にバレエ漬けだったら、頭がおかしくなってしまうでしょうが…。
僕たちはそうでなくてもおかしな人たちなんです(と、またここで一同爆笑!)。

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マリインスキー・バレエ 2012年来日公演

 [公演日程]
 《ラ・バヤデール》
 □11月15日(木) 18:45 文京シビックホール
  11月24日(土) 18:00 東京文化会館
  11月25日(日) 14:00 東京文化会館
  11月26日(月) 18:45 東京文化会館 

 《アンナ・カレニーナ》
 □11月22日(木) 19:00 東京文化会館
 □11月23日(金・祝) 14:00 東京文化会館

 《白鳥の湖》
 □11月17日(土) 18:00 文京シビックホール
 □11月20日(火) 18:45 府中の森芸術劇場
 □11月27日(火) 18:45 東京文化会館
 □11月29日(木) 13:00 東京文化会館
 □11月29日(木) 18:45 東京文化会館 

 《オールスター・ガラ》
 □12月2日(日) 18:00 東京文化会館

2012年来日公演特設ページ

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