2026/1/22
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【5月来日】話題No.1指揮者ペトル・ポペルカ、指揮者7年目にしてベルリン・フィルに圧巻のデビュー!(公演レポート)
34歳でコントラバス奏者から指揮者に転向し、わずか数年の間に世界の名だたる楽団に次々と華々しいデビューを飾るペトル・ポペルカ。欧州はもとより、日本でも過去2度の来日公演で素晴らしい能力と音楽性を披露しセンセーションを巻き起こした気鋭の指揮者です。そんなペトル・ポペルカが、5月から6月にかけ自身が首席指揮者を務めるウィーン交響楽団との日本ツアーのため来日!
ツアーに先駆け、話題を集めたベルリン・フィルへのデビュー公演(2026/1/10ベルリンにて)の様子をお届けします。
取材・執筆:中村真人(音楽ジャーナリスト/ベルリン在住)
ペトル・ポペルカがベルリンの聴衆の前で初めて指揮をしたのは、2023年1月、ベルリン放送交響楽団の定期演奏会においてだった。筆者はその公演を聴き、ポペルカの才気に驚嘆したのだが、案の定、彼はそれからほどなくウィーン交響楽団の首席指揮者に任命され、一気に欧州楽壇の階段を駆け上がった。そしてこの1月頭、ポペルカはついにベルリン・フィルハーモニー管弦楽団へのデビューを果たした。
オープニングを飾ったのは、ドヴォルザークの交響詩《野ばと》。プラハ出身のポペルカらしい選曲だ。冒頭の葬送音楽から緊張感がみなぎり、主部の婚礼の音楽でドラマティックな転換を見せると、香気がたちこめる。最初の数分を聴いただけでも、ポペルカがオーケストラから冴えた音を引き出す名人だということがよくわかる。もともとシュターツカペレ・ドレスデンのコントラバス奏者だった人らしく、「その瞬間で生まれる音楽を楽しむ」とでもいうようオペラ的な柔軟性も備えており、それが演奏をより生き生きとしたものにしている。
続くベルクのヴァイオリン協奏曲では、ベテランのギル・シャハムが独奏を務めた。シャハムののびやかでムラのない響き、フルートのエマニュエル・パユらロングトーンそのものが芸術のようなベルリン・フィルの名手たち、さらにポペルカがこの曲に寄せる共感が相まって、新ウィーン楽派の代表的なこの作品が稀に見るほどの透明感をもって鳴り響く。末尾のクラリネットのコラールは親密なあたたかさに包まれ、白眉だった。
プラハ、ウィーンと来て、締めくくりのシューマンの交響曲第1番《春》は、中部ドイツ生まれの作品。ドレスデン州立歌劇場の奏者としてキャリアを積んだポペルカにとっては、まさに「ホーム」の音楽であろう。内声部をじつによく歌わせ、ヴィオラやチェロの響きのうまみがオケ全体に豊穣さをあたえる。それでいて、重すぎず、この曲にふさわしい音楽の推進力が途切れることがない。全曲が鮮やかに終わると、フィルハーモニーは幸福感でいっぱいになった。
筆者にとっては今年最初のオーケストラ公演だったのだが、このコンサートで新年を迎えられてよかった。世界情勢はまったく楽観できない状況だが、それでも楽天性を失わないことも大切だと思わせてくれたポペルカの鮮烈なデビュー公演。地元紙『ベルリン・モルゲンポスト』は、こう評している。「ポペルカが地に足をつけながら、同時に魂のこもった音色でオケを鳴り響かせていたのは驚くべきことだ。(中略)デビュー指揮者とはとても思えず、むしろベルリン・フィルと旧知の間柄のように見えた」
≪公演情報≫
新菱冷熱 創立70周年記念
ペトル・ポペルカ 指揮 角野隼斗 ピアノ
ウィーン交響楽団
2026年5月29日(金) 19:00 サントリーホール
2026年5月30日(土) 14:00 横浜みなとみらいホール
2026年6月2日(火) 19:00 すみだトリフォニーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2208/






