2026/1/22
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庄司紗矢香に聞く!ジャンルカ・カシオーリと巡る “霧に包まれたような 遠い昔を振り返る” プログラム
2月26日の大阪公演を皮切りに、札幌、埼玉、八ヶ岳、東京、水戸と全国6公演のデュオ・ツアーを予定する庄司紗矢香。共演相手のジャンルカ・カシオーリとは、15年来の音楽のパートナーです。
鮮烈で繊細、芸術の深遠に迫る神がかり的な名演で、世界各地で音楽ファンから熱烈に愛され続ける庄司紗矢香に、今回のツアーについてインタビューを行いました!
取材・執筆:山田治生(音楽評論家)
ヴァイオリニストの庄司紗矢香とピアニストのジャンルカ・カシオーリとのデュオが、4年振りに日本公演を行う。二人は、2009年に初共演して以来、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集の録音を完成させ、現在はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集の録音に取り組む(既に2枚リリースしている)など、コラボレーションを続けている。
前回(2022年)の日本ツアーで、二人は、ガット弦を張ったヴァイオリンとフォルテピアノによるモーツァルトやベートーヴェン、C.P.E.バッハなどの古典派プログラムで、親密な対話のような演奏を披露した。今回は、通常のモダン仕様のヴァイオリンとピアノで、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ ヘ長調K.376、ブラームス、ディートリッヒ、シューマンの3人の共作である「F.A.E.ソナタ」、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」、そして、20世紀イタリアの作曲家ダラピッコラ(1904~1975)の「タルティニアーニ」第2番という幅広い時代の作品を演奏する。
「ジャンルカとはモーツァルトのソナタをフォルテピアノとヴァイオリンのデュオで取り組んできましたが、今回は他の曲に合わせて普通のピアノで弾きます。
前回の時もガット弦&フォルテピアノという表面的な設定が必ずしも我々のアプローチにおいて一番重要なポイントではない、ということをお伝えしているのですが、それを再びコンファームする形となります」
何かに留まることなく、進化を続ける庄司紗矢香は、2月のリサイタルのプログラムについてこう語る。
「いつもリサイタルでは、その時に取り組みたい曲を中心に組みます。そこから超現実主義者の様に、隠れた無意識下の意味をアナライズするのも面白いです。
今回はブラームスの第1番『雨の歌』の詩の様に霧に包まれたような、何かの香りを頼りに思い起こす遠い昔を振り返るようなプログラムになっています。これはシエナで室内楽を勉強した90年代に、ダラピッコラの楽譜を手に入れ、ずっと公に弾く機会を待っていた事も、私の子供時代の思い出として繋がります。
ダラピッコラは、『タルティニアーニ』第2番(注:イタリア・バロック時代の作曲家、タルティーニの主題をもとにしている)でバッハが使った様々なカノンを使用しており、作曲法の観点からも興味深い作品だと思います。
『F.A.E.ソナタ』ではライン川へ向かう直前にいるシューマンとシューマンに出会ったばかりの若きブラームス、そしてギゼラ(注:作家のベッティーナ・フォン・アルニムの娘ギゼラ・フォン・アルニム)への複雑な関係に悩む22歳のヨーゼフ・ヨアヒム(注:ブラームス、ディートリヒ、シューマンの共通の友人であり、F.A.E.ソナタの献呈を受けた名ヴァイオリニスト)、しかもそこにはギゼラ自身と、ベートーヴェンやゲーテのミューズでもあったベッティーナも居合わせる。若さと年を経てからの想いが交差する、矢印が交わる様な… レミニセンスという美しい言葉が思い起こされます」
つまり、20世紀のダッラピッコラは200年前のタルティーニに遡り、ブラームスは、友人ヨアヒムを通して、シューマンどころかベートーヴェンまでつながる。そういう、時間を越えた想いや物語こそが今回のリサイタルのコンセプトなのであろう。
昨年、庄司は、日本では、6月にラハフ・シャニ指揮ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾き、9月に香川県直島での「ナオシマ・シネステジア・フェスティバル」の芸術監督を務め、11月には広島交響楽団や東京都交響楽団とシューマンのヴァイオリン協奏曲を共演したが、彼女にとっての2025年はどのような年であったのだろうか?
©今井卓/ナオシマ・シネステジア・フェスティバルにて
「2025年はある種の節目であった様に思います。ウィーン楽友協会での演奏会(注:ガブリエル・ベベシェレア指揮トーンキュンストラー管弦楽団とのブラームスの協奏曲)に始まり、様々な素晴らしい共演者とシューマンやブラームス、ベートーヴェンを中心に取り組む機会を得ました。また熟考を重ねた上でのモーツァルトの協奏曲(注:3月のシュトゥットガルト室内管弦楽団、4月のKBS交響楽団、プラハ・フィル、8月のイタリアのボルツァーノ弦楽アカデミーとの共演)も刺激的な経験でした。
2026年からは、新たなレパートリーの準備期間に入ります。準備し、舞台を踏み、煮込み、寝かす、起こすという緩やかな螺旋階段の様なプロセスを、この25年間繰り返しています」
好奇心と探求心に富む彼女に、最近の関心事についてきいてみた。
「読書と自然でしょうか。ガストン・バシュラール(注:フランスの哲学者、1884~1962)の夢想の詩学は今回のプログラムについての考えにも影響していると思います。今週はアルセニー・タルコフスキー(注:ウクライナの詩人、映画監督アンドレイ・タルコフスキーの父、1907~1989)の詩に没頭しています。あとは土いじりや森の散歩、植物の世話をするのが好きです」
《公演情報》
類稀なる才能、深い信頼で結ばれた二人が紡ぐ至高の音楽
庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ デュオ・リサイタル
日程:2026年3月6日(金) 19:00開演
会場:サントリーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2196/
◆庄司紗矢香のアーティストページはこちらから
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/sayakashoji/











