2025/5/7
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【公演レポート】住友生命ウェルビーイングコンサート ウィーン少年合唱団2025年 Aプログラム 「僕たちの地球 そして未来へ」
50日間に及ぶ日本ツアー真っ最中のウィーン少年合唱団モーツァルト組。5月3日、東京オペラシティでAプログラム公演が行われ、会場には団員と同じぐらいの子どもたちの姿も見られました。
Aプログラムのタイトルは『僕たちの地球 そして未来へ』。私たちの暮らす地球と、その自然に目を向けることをテーマに、自然や動物をモチーフとして、クラシック、民謡、ミュージカルといったさまざまなジャンルの曲を散りばめ、歌声の美しさと、生き生きとした表現が発揮されたステージになりました。フーバー氏と団員の方々による日本語MCには親しみが湧き、ときおり交えるユーモアに会場には和やかな笑いが広がりました。
1曲目のヨルダン民謡:《海の上で》では、柔らかく澄んだ響きで会場を満たします。ピアノの響きと、美しいデクレッシェンドが印象的で、合唱団の声の魅力を十分に示してくれました。
続いて、オーレン:《夏の讃歌》、リーデル:《イーダの夏の歌》、メンデルスゾーン:オラトリオ《エリヤ》より〈目をあげよ〉、フンパーディンク:オペラ《ヘンゼルとグレーテル》より〈夕べの祈り〉まで、クラシカルな作品を続けて披露。響きの美しさに加え、細かな強弱のニュアンスをつけながら旋律を紡いでいきました。また、声色そのものがもつ音楽的な効果に、耳を奪われた瞬間も。例えば《イーダの夏の歌》では、素朴なメロディーの中に、胸がチクリとするような転調部分が表れます。合唱団の声の透明感により、その質感がより一層際立ったように感じました。
合唱団は優雅さと力強さも兼ね備えています。ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ《美しく青きドナウ》は、彼らのもつ高らかな響きとベストマッチした一曲となっていました。
日本ツアーの定番曲、岡野貞一:《ふるさと》は、情景を描写し美しいレガートで歌う1番、故郷を懐かしむように、遠くからピアノで語りかけるような2番、力強く決意を歌った3番とそれぞれ趣を変えての歌唱。来日記者会見のときに「意味を考えながら日本語の歌詞を歌いたい」と語っていた通り、一語一語から思いが伝わってきました。
フーバー氏が黒澤明監督『生きる』の挿入歌として出合い、プログラム加わった中山晋平:《ゴンドラの唄》。アコーディオンとピアノの伴奏に、合唱団の飾らない歌声が相まって、よりいっそう哀愁がにじみ出ていました。
後半は生き物を題材にしたプログラム。オーストリア民謡《ハエ狩り》は、テンポの緩急でハエとの格闘を描写したユーモラスな1曲。楽しい演出に会場も大いに湧きました。
ジルベルト:《アヒル》はボサノヴァのリズムに乗せて、アヒルの鳴き声が入るコミカルな曲。合唱団の透明感ある歌声にボサノヴァが爽やかに響き、アヒルの鳴き声の可愛らしさも際立ちました。
メンケン:ディズニー映画『美女と野獣』より〈美女と野獣〉では二人のデュオからスタート。言葉のニュアンスに乗せた繊細な表現が難しい曲ですが、見事に自然な強弱を付け、豊かな膨らみと共にトゥッティへ。デュオの繊細さはそのままに、全員でしっとりと歌い上げたハーモニーは、胸を打つものがありました。
幅広いジャンルの曲目を豊かな表現力でみせたAプログラム。合唱団の声の魅力を存分に披露したステージとなりました。
文:東ゆか(ライター/編集者)
写真:松尾淳一郎
《公演情報》
住友生命ウェルビーイングコンサート
ウィーン少年合唱団 モーツァルト組
(カペルマイスター:マヌエル・フーバー)
日時・会場:
2025年5月3日(土・祝) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
2025年5月6日(火・祝) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
2025年5月29日(木) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
2025年6月10日(火) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
2025年6月13日(金) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール ※アフタヌーン・コンサート・シリーズ2025-2026
2025年6月14日(土) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
2025年6月15日(日) 13:30 東京オペラシティ コンサートホール
他 全国公演スケジュールは特設サイトをぜひご覧ください!
https://www.japanarts.co.jp/special/wsk/
◆ウィーン少年合唱団のプロフィールは下記をご参照ください。
⇒ https://www.japanarts.co.jp/artist/wsk/