2022/10/19

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【インタビュー】漆原啓子デビュー40周年記念リサイタルシリーズ、第2回はドイツ音楽

漆原啓子
漆原啓子デビュー40周年記念リサイタルシリーズ、第2回はドイツ音楽

取材・執筆=池田卓夫

ヴァイオリニストの漆原啓子がポーランドのヴィエニャフスキ国際コンクールで日本人初の優勝を遂げて40年の節目。「本当に行き当たりばったりで」と本人は謙遜するが、表現したい世界がたくさんあるのだろう。記念リサイタルはロシア系、ドイツ系、フランス系の3回シリーズに膨らみ、それぞれ異なるピアニストとの共演に挑む。

2022年3月13日、東京文化会館小ホールの第1回はモスクワ音楽院に留学した秋場敬浩を指名した。自家薬籠中のシュニトケ、プロコフィエフ、チャイコフスキーに加え、秋場が傾倒するアルメニアの音楽からババジャニアンのソナタを選び、火花散る音楽を奏でた。「作曲家名も日本人には面白く響きますし、何より自分の大好きな曲となったので練習から楽しみ、お客様の印象にも残ったようです」と、漆原は手応えを語る。

11月9日、Hakujuホールの第2回はドイツ語圏のヴァイオリン・ソナタ特集。すでにモーツァルトの全集CDを一緒に録音した長年のコラボレーター、ドイツのヤコブ・ロイシュナーをピアノに迎える。「恩師の堀正文先生の留学先、フライブルク音楽大学の教授で、同じくピアノのお父様が堀先生の学友です。ヤコブは素晴らしく綺麗な音の持ち主。一緒に弾いていて気持ちがいい上、奥様が日本人で日常会話も日本語なので、リハーサルも楽です(笑)」

そのモーツァルトからは「第23番ニ長調K.306」のソナタ。「もっと軽い作品でも良かったのですが、オペラのような曲想が大好きでもあり、この際あまり聴けない少し変わったソナタでリサイタルの幕を開けようと思いました」。後半のベートーヴェン、「第9番イ長調作品47《クロイツェル》」が名曲中の名曲なので、好対照をみせる。

両者の間に置かれたのは、さらに滅多に演奏されないブゾーニの「第2番ホ短調作品36a」。フェルッチョ・ブゾーニ(1866―1924)は1894年から亡くなるまでベルリンを本拠とし、バッハをはじめとするドイツ音楽に深く傾倒した。「ここにブラームスを置くより、他人(ひと)が弾かない何かをちょっと弾きたくなりました。ロイシュナーさんから10年ほど前に勧められた作品でしたが、ヴァイオリンのパートだけだと良くわからない。ピアノ・パートも自分で弾いてみると、素晴らしい曲ではありませんか! せっかくだから、隠れた名曲を聴いていただくことにしました」。啓子さんのこうした「行き当たりばったり」、実は好奇心旺盛という姿勢は聴き手にとっても大歓迎だ。

音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎
https://www.iketakuhonpo.com/


漆原啓子
《公演情報》
漆原啓子&ヤコブ・ロイシュナー デュオ・リサイタル
日程:2022年11月9日(水) 19:00
会場:Hakuju Hall
https://www.japanarts.co.jp/concert/p979/


◆漆原啓子のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/keikourushihara/

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