2021/10/17

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【現地レポート】第18回ショパン国際ピアノ・コンクール ファイナリスト12名をご紹介します!

熱演が続くショパン・コンクール。予選が終了し、ファイナルに進む12名が発表されました。
連日様々な発信で、現地ワルシャワの様子を伝えて下さる音楽ライターの高坂はる香さんに、予選のふりかえりとともに、注目のファイナリストをご紹介頂きます!

第18回ショパン国際コンクール ファイナル
写真提供:Chopin Institute

 

10月2日にポーランド、ワルシャワで開幕した、第18回ショパン国際ピアノコンクール。
1年の延期の末の開催ということで、87名のコンテスタントはみな準備万端の状態。ハイレベルな競演になるだろうといわれていましたが、まさにその予想の通り、約30分ほどの1次予選の時点からすでに、まるでリサイタルのように引き込む演奏、作曲家の心情に寄り添う美しい演奏、フレッシュな才能で耳を捉える演奏など、さまざまなショパンを聴くことができました。

1次、2次、3次、ファイナルの各ステージ、当初の予定では、80名→40名→20名→10名のところ、87名でスタートして、45名→23名→12名という展開に。この、審査員たちが毎回人数を絞りきれない感じからも、いかに実力が拮抗していたかがわかります。

ここまで、1次や2次のエチュードやノクターン、バラードやスケルツォ、ワルツやポロネーズ、そして3次のピアノ・ソナタまたはプレリュード、そしてショパンの魂といえるマズルカ他を聴くステージが展開してきました。

10月16日の夜、ファイナリストが発表されたところですが、ここまでの印象からその顔ぶれをご紹介します。

Ms Leonora Armellini, Italy
Mr J J Jun Li Bui, Canada
Mr Alexander Gadjiev , Italy/Slovenia
Mr Martin Garcia Garcia, Spain
Ms Eva Gevorgyan, Russia/Armenia
Ms Aimi Kobayashi, Japan
Mr Jakub Kuszlik, Poland
Mr Hyuk Lee, South Korea
Mr Bruce (Xiaoyu) Liu, Canada
Mr Kamil Pacholec, Poland
Mr Hao Rao, China
Mr Kyohei Sorita, Japan

まず、日本から二人がファイナルに進出!
小林愛実さんは、若くしてメジャーデビューし、長らく演奏活動を行なってきたなか、前回2015年のショパンコンクールに挑戦してファイナリストに。今回は、それはもう目をみはるほどパワーアップした状態で、再びこの舞台に立っています。ファイナルでも、前回のコンチェルトとはまた一味違った表現、そして音を聴かせてくれると思います。

すでに日本で人気ピアニストとして活躍している反田恭平さんは、4年前からポーランドに留学し、まさに今、その成果を発揮せんとばかりにショパンコンクールに挑んでいる状態。毎ステージ思い入れたっぷりの演奏を聴かせてくれていますが、特に2次予選の演奏は堂々たるものでしたので、ぜひアーカイヴでご覧ください。あの豊かな音で奏でる協奏曲、楽しみです。

過去のショパンコンクールを聴いてきた方にとっては、2010年のセミファイナリスト、レオノーラ・アルメリーニさん(イタリア)がファイナル進出を果たしたことも嬉しいでしょう。おおらかな音楽が魅力の彼女、今回はそこに艶やかに磨き上げられた完成度も加わり、ファイナルに進みます。

そして、日本の浜松国際ピアノコンクールの入賞者からは、まず2015年前々回の優勝者、アレクサンダー・ガジェヴさん(イタリア)。20歳当時の、知的な雰囲気を漂わせつつもライヴ感あふれる演奏が記憶にある方も多いかもしれませんが、あれから6年、その両方がパワーアップした状態で、独自のショパン像を描きあげます。本選ではワルシャワフィルとどんなエキサイティングなやりとりをしてくれるのか、楽しみです。

イ・ヒョクさんは、続く2018年の第3位入賞者。浜松コンクール本選で共演した指揮者の高関健さんが、天才肌と称していたことが印象に残っています。ヒョクさんはとにかく弾けるし、何を弾いていても楽しそう。その分、ショパンの影の部分を理解するのにとても苦労したと話していましたが、ポーランド語を勉強してショパンの手紙を読むなど、いろいろな努力をしたそう。

日本のコンクールでかつて入賞した顔ぶれといえば、2016年仙台国際音楽コンクール第4位のブルース・(シャオユー)・リウさん。舞曲系を演奏するときの思い切った表現、生き生きとしたリズム感覚が魅力なので、コンチェルトの終楽章など楽しみ。

たくさんいたポーランド勢の中から残ったのは、ヤクブ・クシリックさんとカミル・パホレッツさん。いずれもポーランド人審査員の弟子である彼らは、クセの強い演奏というものからは一線を画した、オーソドックスで穏やか、どこかシブさを感じる音楽性が魅力。これがショパンの心なのかもしれないと思いながら耳を傾ける時間でした。いずれもコンチェルトは1番を演奏されます。

そして個性派として地元の聴衆からも人気を集めている、スペインのマルティン・ガルシア・ガルシアさん。コンクールでこういうタイプはめずらしい!と思いましたが、この夏クリーヴランド国際ピアノコンクールで優勝したばかり。やはり聴衆とあれほど強いコネクションを作ることができるピアニストは、たとえコンクールという場でも高く評価されるのですね。コンチェルトで、指揮者、オーケストラ、そして聴衆とどんな繋がりをつくるのでしょうか。

17歳の最年少組は、若々しくみずみずしい才能でハッとさせるハオ・ラオさん(中国)、堂々とした完成度の高い演奏が年齢を忘れさせるエヴァ・ゲヴォルギヤンさん(ロシア/アルメニア)、その情緒のある味わい深い演奏で別の意味で年齢を忘れさせるJ J ジュン・リ・ブイさん(カナダ)と、3人まったく異なるキャラクター。オーケストラとの共演経験がどのようなものかわかりませんが、本選ではどんな一面を見せてくれるのか、楽しみです。

本選は10月18、19、20日の3日間。各日4人のピアニストが、アンドレイ・ボレイコ指揮、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団と共演します。

高坂はる香(音楽ライター)

コンクールの視聴はこちらから⇒ https://www.youtube.com/channel/UCSTXol20Q01Uj-U5Yp3IqFg
お聴き逃しなく!

 

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