2013/1/18

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レイフ・オヴェ・アンスネス 来日直前インタビュー

レイフ・オヴェ・アンスネス

Q:今回共演するフィルハーモニア管弦楽団は、英国だけでなく世界においても伝統ある一流のオーケストラですが、これまであなたが彼らと共演されてきての印象をお聞かせくださいますか。
アンスネス(以下A):言うまでもなく、このオーケストラは非常に実力のあるオーケストラです。長い間様々な指揮者と培った伝統ともいえますが、強い総合性があります。これはロンドンのオーケストラ全般に共通する点ですが、特にこのオーケストラは多くのツアーやコンサートをこなしていく中で、これだけ高い水準を保てる驚異的なスタミナを保てることは、ほんとうにすごいことだと思います。

Q:次に指揮者のエサ=ペッカ・サロネン氏についての印象をお聞かせください。サロネン氏とは20年来のお付き合いと聞いています。
A: はい、そのとおりです。しかし、サロネン氏とは今回のツアーで久々の共演となります。実を言うと、彼が指揮をするフィルハーモニア管との組み合わせとの共演は、昨年9月のロンドン公演が初めてでした。ロンドンではロンドン交響楽団やそれ以外のオーケストラとの共演が多いんです。ですので、この日本ツアーはとても楽しみにしているのです。それにしても時の経つのは早いですね(笑)。

Q: サロネン氏は、20数年前、あなたとの初共演のときのことを語ってくださいましたが、リハーサルであなたの演奏を聴いて、誰でも知っているグリーグの協奏曲を、あなたはまるで新しい音楽のように弾いた。とても新鮮で、また完璧。この若い青年がとてつもない素質を持って、これからどんどん成長していくだろう、と確信した、と話していました。
音楽家として活動を始めてから20年数年経った今、ご自身でも以前と変わったと感じますか?
A: もちろんです。まるで違う人間のように感じますよ(笑)。もちろん核は変わりません。
 しかし、この間多くのツアーや演奏会を通じて、たくさんの経験を積んできました。ですから、サロネン氏と初めてグリーグを共演したときの自分と今の自分は比較にはなりません。当時私は20歳そこそこで、何もかもが新しく、エキサイティングでした。でも何も知らない未熟者でした。とにかくこのフィンランド出身の若き優れた指揮者と演奏できることが嬉しくてたまらなかったのです。この共演の前、サロネン氏の指揮でニールセンの交響曲第3番を聴いたことがありますが、そのダイナミックな演奏に衝撃を受けました。
 また、サロネン氏は私の音楽活動を大きくサポートをしてくださいました。ストックホルムでの共演後まもなく、彼はロサンゼルス・フィルの音楽監督に就任したのですが、そこで名誉あるDorothy B. Chandler Perfroming Arts 賞に私を選んでくれたのです。この賞は選考委員となる指揮者が優れた楽器奏者を一人選考するもので、当時演奏家として駆け出したばかりの私にとっては、ほんとうに意味深く、また光栄なことでした。
  その後、彼は私をロサンゼルス・フィルの現地公演に、そして1994年に行われた日本ツアーのソリストに抜擢してくれました。このときのレパートリーはプロコフィエフ第3番とモーツァルトのニ短調の2曲だったと思います。このツアーは私にとって2度目の来日でしたが、日本の多くの街を訪れる機会に恵まれたことは、若い私にとっては非常に重要な出来事でした。
 彼のサポートのおかげで、ロサンゼルス・フィルは、私がアメリカにおける活動の中で最も共演を重ねるオーケストラとなりました。

Q: 録音として、今後ベートーヴェンに取り組まれる”Beethoven Journey”第一弾のCD(協奏曲第1番&第3番)がリリースされました。ライナーノートに、あなたはこう語っていますね。「これまで、ベートーヴェンの録音は、まだ自分の力がおよんでいないので、一度も手がけなかった。しかし十分な経験を積んだ今、録音するときがきたと感じ、このプロジェクトを立ち上げた。」と。このプロジェクトに対して、アンスネスさんはどういう意気込みでいらっしゃいますか。またこのプロジェクトはあなたにとってどういう意味を持っているのでしょうか。
A: 音楽家として数年間ひとつのことに集中することは非常に有意義だと感じています。特にピアニストはとてもレパートリーが多いので、常に何をいつ弾くかということを考えます。ベートーヴェンが何であるかというアイディアを得た今、とにかくこの数年この偉大なる作曲家の作品に集中しようと決めました。ですから、日本では前回の来日(2011年9月)でラフマニノフの協奏曲第3番を弾いたのが、今後数年間でベートーヴェン以外の協奏曲を弾いた最後の機会となったわけです(笑)。

Q: それを知らずにあなたのラフマニノフを聴いた私たちは、ある意味ラッキーだったということですね?(笑)
A:はははっ。そうかもしれません。これからは泣いても笑ってもベートーヴェン漬けですよ。(笑)
 それでもソロや室内楽ではベートーヴェン以外も弾きますよ。でもやはり多くのベートーヴェンの作品を手がけます。とにかく2012年からの数年間はベートーヴェンに集中する時間に当てることにしました。たいへん豊富な音楽言語(ボキャブラリー)があり、多くの意味を秘めたベートーヴェンの音楽に向かい合い、共存し、理解するにはとても時間がかかります。ですので、自分自身が決断したことには今のところとても幸せに感じています。

Q: このプロジェクトでは、室内オーケストラの弾き振りで演奏会や録音を行っていっしゃいますが、同時に指揮者を伴うフルオーケストラとの共演も多数あるようですね。ご自身でオーケストラをリードしながらの演奏と、指揮者を伴っての演奏には違いがあるでしょう。
A: もちろん違いはあります。そして、むしろ指揮者と共演する公演のほうが多いです。
 このプロジェクトのもうひとつの意味は、世界中の色々な街で、さまざまなオーケストラや指揮者の取り組みに触れることによって多くの経験を積むということにあります。言うまでもなく、経験に勝るものはありません。しかし、私は純粋にできるだけ多くの音楽家とこれらの偉大なる作品を演奏したいという願いからこの計画を始めました。
 また、違う音楽家との共演で培った私の経験や知識をマーラー室内管との音楽作りに生かしています。彼らとの音楽作りには大変満足していますが、ピアノ演奏と同時にオーケストラをリードしていかなくてはならないので、私にとってはとてもチャレンジングでもあります。

Q: 指揮することはお好きですか?
A: 「指揮をする」ということについてはどうでしょうか…今のところ、ピアノを弾きながら指揮をすることは好きです。

Q: ところで諏訪内晶子さんとは初共演となりますね。
A:諏訪内晶子さんの演奏はまだライブでは聴いたことはありませんが、これまでにCD録音やテレビなどを通じて度々聴いてきました。
その見事なテクニック、全てを可能にしてしまうほどの上品な弓使い、美しい表現力を兼ね備えてた彼女の上質な演奏に私は心から感銘を受けました。
 今回初めてとなる諏訪内晶子さんとの共演をとても楽しみにしています。

Q:この夏また共演される機会があると聞きました。
A:はい、7月にノルウェーのある島で行われる音楽祭で共演する予定です。

ありがとうございました。2月の来日を楽しみにしています。

取材:ジャパン・アーツ

≪サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 来日公演情報≫
2013年02月08日(金) 19時開演 サントリーホール
フィルハーモニア管弦楽団
曲目]
ベートーヴェン:劇付随音楽「シュテファン王」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 〔ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス〕
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マーラー:交響曲第1番「巨人」
詳しい公演情報はこちらから

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