2012/12/20

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エヴァルト・ダネル芸術監督 インタビュー[スロヴァキア室内オーケストラ]

エヴァルト・ダネル

Q.今回、ヴィヴァルディとピアソラの2つの「四季」を演奏されますが、とても珍しい曲順で演奏されますね。聴きどころやポイントを教えてください。
A.この曲順は、ギドン・クレーメル氏のアイディアです。非常におもしろい組み合わせだと思いますし、魅力が詰まったプログラムだと思っています。私たちスロヴァキア室内オーケストラも、スロヴァキアで3年前に初演しました。その時は、聴衆からの評判はとても高く、このアイディアを日本の皆さんにも聴いていただきたいと思い、提案しました。
  恐らく日本ではヴィヴァルディの四季は非常に有名だと思いますが、ピアソラと交互に演奏することで、リズムの違い、それぞれの美しいメロディ、ところどころに現れるタンゴの要素を楽しんでいただけると思います。「変化」が一番のポイントですね。
  それから、日本ツアーをこれまで幾度も行ってきましたが、私たちは、新しいものを日本で演奏することを希望しています。今回のツアーでは、そのことを実現できてとても嬉しく思っています。

Q.ちなみに…四季(季節)の中で、いつが一番お好きですか?
A.私は、暑いのは苦手です。(笑)寒いところで育ってきましたから、雪の季節が一番好きですね!そして、雪の時期にはいなかへ行って、雪の季節を充分に楽しむことをおすすめします。ここスロヴァキアは、春はとても短いのです。暖かく過ごしやすい季節は、すぐに終わってしまいますね…。秋は、「聖マルティヌスの日」という祭日が11月にあります。聖マルティヌスは白い馬に乗って現れるのですが、それは、雪を運んでくるとも言われているのですよ!寒い季節のはじまりを告げる日でもあるのです。
 実は…、ずっと昔に「放牧」の仕事をしたことがあります。500頭の羊を、犬と一緒に追いかけていました。4~6週間くらい、牧場で過ごしました。広いところで過ごすのも、とても気持ちが良いものです。

Q.おっしゃる通り、いなかでの生活は、景色を楽しんだり、ゆったりとした時間を味わえたり、とても気持ちが良さそうですね。
 さて、もう一方のプログラムでは、ウィンナ・ワルツを演奏いただきます。スロヴァキアでもワルツを踊ったり聴いたりする習慣はありますか?
A.ウィーンと、ここブラチスラヴァ(スロヴァキアの首都)は一時間ほどで行き来ができるところで、とても近いです。ですので、もちろんワルツを聴いたり踊ったり習慣があります。新年には、スロヴァキア・フィルハーモニーのホールでも、舞踏会も開かれますよ!
 昔は、ウィーンとブラチスラヴァを結ぶ電車があって、人々はウィーンまで出かけて行ってお茶を飲んだり、買い物をしたり、という習慣もありました。
 そうそう、マリア・テレジアは戴冠式をどこで行ったと思いますか?実は、ウィーンではなくて、ブラチスラヴァにある「聖マルティヌス教会」で戴冠式をしたのです!そのくらい、ウィーンとブラチスラヴァは近いということです。

Q.ブラチスラヴァとウィーンとは、とても近く、深いつながりがありますね?
A.モーツァルトやハイドンはスロヴァキアに滞在したことがたくさんあったようですし、バルトークはスロヴァキアで音楽の勉強をしていました。他にも、たくさんの作曲家がこのあたりで過ごした経験があります。
 言語も近いですね。ドイツやハンガリーなども非常に近い言葉を話します。
チェコとスロヴァキアがひとつの国だったときには、人々は、もちろん両方の言葉を話していました。今はスロヴァキアでは、スロヴァキア語と英語を話します。若い人たちは英語を話すことが多いかな?

Q.さて、今回も共演する錦織健さんとは、これまで幾多にもわたり、同じステージで演奏されてきました。錦織さんとの思い出など、お聞かせください。
A.錦織さんとは、とても自然に音楽を作ることができます。プローベ(直前のリハーサル)をしなくても良いくらい!(笑)音楽性が近く、問題がまったくない状態で音楽を作れることは、非常にありがたいことです。

Q.では、とても良い状態で来月のツアーができそうですね!
A.そうですね。私たちもとても楽しみにしています。

Q.スロヴァキア室内オーケストラは、創設から50年以上が過ぎました。メンバーの世代交代も、きっとあったと思いますが、みなさんはどのように伝統を引き継いでいらっしゃるのでしょうか?また、創設時にいらした奏者で、現役の方もいらっしゃるのでしょうか?
A.さすがに現役メンバーはいません。(笑)今のメンバーは、ブラチスラヴァやプラハで勉強をした奏者たちが中心です。よって、このスロヴァキアの伝統を自然と受け継いでいます。
 前任のヴァルハル芸術監督は、創設から40年にわたってこの室内オーケストラとともに過ごしてきました。彼が守ってきたスロヴァキア室内オーケストラの伝統は素晴らしいものです。
 しかし、彼が芸術監督を引退されるとき、言い遺した言葉があります。それは「このオーケストラに新しい風を吹き込んで、そして、続けていって欲しい」ということでした。その言葉の通り、私は、新しいレパートリーを取り入れ変化を受け入れて、伝統を守っていきたいと考えています。
 最近では、老人ホームや教会コンサートなども増えてきました。障害を持った人々のためのコンサートも行っています。これまでにはなかったことです。前述した11月の聖マルティヌスの日にも、コンサートを行いましたよ。これらの活動は、音楽家の人生にとって大事なことと考えています。不自由なことがあっても、素晴らしい人生を送れるということを知ることができるのです。(音楽家は、)「音楽だけ」をやっていてはいけません。世の中には様々な人たちがいて、どのような人生を送っているかを知るべきです。

Q.伝統を守るだけでなく、新しいことにチャレンジして、より素晴らしいオーケストラに「進化」していくのですね!本当に、日本でのツアーが楽しみです。

Q.それでは、最後に日本のファンへ、メッセージをお願いします。
A.毎回、日本で演奏することをとても嬉しく思っています。これまでの日本ツアーも、とても良い思い出として記憶に残っています。
来月、みなさんにお会いできることを楽しみにしています。


“四季”ヴィヴァルディ×ピアソラ / 初春の歓びを錦織健の歌声とともに
スロヴァキア室内オーケストラ&錦織 健
2013年01月12日(土) 14時開演 東京オペラシティコンサートホール
詳細はこちらから

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