2016/4/12

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ユンディ・リ カーネギーホールの定期演奏会レポート

ヨーロッパ・ツアーを前に、カーネギーホールの定期演奏会に登場したユンディ。
総立ちの客席からは、割れんばかりの拍手が贈られた。
 カーネギー・ホールの定期演奏会には、近頃、特定の演奏家に焦点を当てた「パースペクティヴ」という特集が組まれている。今シーズンは、エフゲニー・キーシンが選ばれ、リサイタル、室内楽、協奏曲、対談など、多彩なイヴェントが行われた。 
 そんな中、嵐が去った後の静けさのようなステージに姿を現したユンディ。2015~16年のシーズン紹介パンフレットの写真は、洒落たTシャツに深紅のジャケットを纏い、カメラ目線で構えた印象的なものが使われている。
 初春の木の芽が膨らみ始めた3月23日、カーネギー・ホールの大ホール(アイザック・スターン・オーディトリウム)に足を運んだ。
 ここでのリサイタルは2003年以来の登場だが、約2,800の客席はほぼ満員となり、ユンディはニューヨーカーからも絶大な人気を得ている。当日のプログラムはオール・ショパンで、「バラード」全4曲、休憩を挟み「24のプレリュード」という魅力的なセレクション。

 20時の開演時間を10分ほど過ぎてステージに姿を現したユンディ。静まり返った会場に、厳かに低音のドの音から高音へと昇っていく独特なイントロで始まる「バラード第1番」。目を閉じると羽生結弦選手の姿が思わず浮かんでしまうほど、日本で度々流れた彼のショート・プログラムのテーマ曲だ。
 ユンディは、「ショパンは大好きな作曲家で、感動的、センシティヴそして愛に満ち溢れているのが最も重要な点。私は世界中にショパンの音楽を発信することが喜びです」と話している通り、正にショパンの伝道師と思わせる演奏。過剰な個性や大げさな表現を避け、ショパンの詩的な音楽を、高度なテクニックと繊細なタッチ、ドラマッティクな表現で、「バラード」を次々と積み上げていく。「バラード第4番」では、クライマックスの途中で拍手が沸き起こってしまうほど、会場は大きく盛り上がった。
 プログラムの後半は、「24のプレリュード」。短い詩をピアノを通して語っていくように、喜び、悲しみの物語を静かに、そして時に激情を交えて聴衆の心に届けた。
 演奏を終え、ユンディはスタンディング・オヴェーションでの大喝采と声援を浴び、ファンの待つサイン会の会場へと向かって行った。

(NY在住 針ヶ谷郁)

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ユンディ・リ オール・ショパン・リサイタル
2016年6月7日(火) 19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

公演詳細はこちらから

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