2015/11/11

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成田達輝インタビュー プラハ交響楽団ニューイヤー・コンサートに向けて

2016年1月プラハ交響楽団と共演する成田達輝のインタビューです。

──2014年からグァルネリ・デル・ジェスの楽器をお使いになっているそうですが、この楽器はどんなキャラクターを持っていますか。
「一言でいうと、静か、なんですよね。楽器を見た雰囲気から静かなんですが、実際に音を鳴らしてみても、ガンガン鳴るような感じではありません。どんなに強い音を出しても、すごく品があるように感じます。この楽器を使いはじめてから、明らかに自分の見えている世界が変わりました。今までよりベートーヴェンやブラームスといった作品に魅かれるようになりました。おそらく、作品の本質に迫る楽器と楽曲だからなんでしょうね」

──今回の公演ではメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏されますが、この作品の魅力はどんなところにあると思いますか。
「第1楽章から第3楽章まで続けて弾かなければいけないので、ヴァイオリニストにとってはとても大変な曲です。弦を調弦する時間がまったくありません。この曲には『詩情豊かな』という言葉だけでは言い表せないような、客観性を兼ね備えながらも、美へ肉薄していくような、したたかな心が見えるような気がします。第1楽章の第2主題なんて本当に美しいじゃないですか。あのすごく長いメロディを、途中で止まってはいけないし、かといって急いでもいけないし、その時間をできるだけ充実させながら、深みのある音楽を作っていかなければならない。それをできるかどうか。生きている限り、永遠の課題なんでしょうね」

──インキネンとプラハ交響楽団とはこれまでに共演したことはありますか。
「今回が初共演です。僕はサッカーの監督のように事前に相手の分析をしたりはしないのですが(笑)、お互いの間にどんな化学反応が起きるのか、ハプニングなども含めて、すべてを楽しみたいと思っています。演奏とは常に一度きりのものです。僕が好きな指揮者のエマヌエル・クリヴィヌの言葉に『演奏するということは死を見つめていることだ』という一言があります。僕はこれを聞いてウッと来たんですね。楽曲に向き合うときに、自分の持ちうる生命の限りを尽くすということだと思います。」

──最近、音楽とは別に、なにか凝っているものはありますか。
「僕の場合はなにをやっても音楽と結びついてしまうのですが……そうですねえ、今はまっているのは、座禅を組むことです。滞在していたホテルに通販で座蒲を送ってもらって、部屋で座禅を組んだのですが、心が落ち着きます。いい気分転換になります」

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ピエタリ・インキネン指揮 プラハ交響楽団 ニューイヤー・コンサート
2016年01月18日(月) 19時開演 サントリーホール
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