2014/8/26

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エリック・ル・サージュのインタビュー[樫本大進&ル・サージュ デュオ]

フランス料理のフルコースのような満足感、樫本大進&エリック・ル・サージュのデュオ・リサイタルの充実したプログラム

 2015年1月、いまやベルリン・フィルのコンサートマスターとして、ソリストとして、さらに室内楽でも大活躍を続けているヴァイオリニストの樫本大進が、長年の友人であり、仕事仲間であり、互いの呼吸を呑み込んでいるフランスのピアニスト、エリック・ル・サージュとデュオ・リサイタルを開く。

エリック・ルサージュ

 日本では初のデュオ共演となるふたりだが、すでに海外では何度も演奏し、人間的にも尊敬し合い、いまや盟友ともいえる。そんなふたりの音楽について、エリック・ル・サージュが語ってくれた。ル・サージュといえば、世界最強の管楽アンサンブルといわれるレ・ヴァン・フランセの創設メンバーとして、室内楽奏者としても高い評価を得ている。もちろんソリストとしても定評があり、デュオも多く行っている。今回の樫本大進とのデュオは、ル・サージュがもっとも得意とするフォーレ、プーランク、フランクなどのフランス作品が組まれている。
 彼は毎夏、南フランスで開催されているサロン・ド・プロヴァンス国際室内音楽祭の主宰者のひとりでもあり、この音楽祭は1993年にレ・ヴァン・フランセの仲間、クラリネットのポール・メイエ、フルートのエマニュエル・バユと創設した。樫本大進との出会いは、この音楽祭に彼を招いたことによるという。その話からスタートすると…。

初めて樫本大進と会ったときの印象はいかがでしたか。
ル・サージュ(以下LS):大進はとても若かったですね、20歳でした。この音楽祭には世界各地からさまざまな奏者が参加しますが、大進は初参加のときから輝いていました。才能豊かで性格もすばらしく、すぐに私たちと打ち解けました。以来、毎年のように参加してくれ、そのつど一気に階段を駆け上がっていくような成長と進化を見せてくれます。

ベルリン・フィルのコンサートマスターに就任してからどんな変化が見られますか。
LS:信じがたいほどの輝きを感じます。性格は昔とまったく変らず、明るく元気なナイスガイですが、落ち着きと責任感と頼りがいのある面が増したように思われます。

オーケストラで演奏していると他の楽器の音に耳を開き、その音を注意深く聴く耳が育つといいますが、この点ではいかがですか。
その点はすでに若いころから出来上がっていたと思います。もちろんベルリン・フィルで日々培われることは多いでしょうが、これまでの面によりプラスされたということではないでしょうか。いまや、本当に彼の演奏は信じがたいレヴェルに達しているのです。

エリック・ル・サージュ

今回のデュオ・リサイタルでは、フランス作品が選ばれていますが、この選曲はふたりの要望によるものですか。
LS:そうです。実は、2年前に大進とフォーレの「ヴァイオリンとピアノのための作品全集」をレコーディングし、今回の日本公演ではそのなかからヴァイオリン・ソナタ第1番を演奏します。つい先ごろ、イスタンブールでも共演し、そのときはヴァイオリン・ソナタ第2番で共演しました。

録音のときの様子はいかがでしたか。
LS:可能な限りリハーサルの時間を取り、綿密な練習を繰り返しました。私はこのCDの完成により、フォーレに関しては室内楽作品のすべてを録音したことになります。大進との録音は集中力と緊張感が伴うものでしたが、とても楽しい時間を過ごすことができました。彼と一緒に演奏すると、いつもとても楽しいんです。大進はソリストとして偉大なのですが、こういう人は室内楽でもすばらしい力を発揮する。それに性格がすごくいい、これに尽きますね(笑)。

ル・サージュさんは、演奏会や録音のプログラムを決めるとき、もっとも留意するのはどういう点ですか。
LS:プログラムに対する考えは非常にシンプルです。いま一番演奏したい作品ばかりで構成するからです。私はこれを食事のフルコースにたとえています。まず、アントレ(オードブル)が必要ですよね。今回の大進とのデュオでは、いま話に出たフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番がそれに当たります。ひとつめのメインにはプーランクのヴァイオリン・ソナタを選びました。休憩をはさみ、2皿目のメインの登場です。フォーレのロマンスですね。作品の重さや大きさは関係なく、ふたりの思いが込められたという意味です。デザートはフランクのヴァイオリン・ソナタ。これがデザート?と、驚かれるかも知れませんが、たっぷりとおなかがいっぱいになるスイーツもいいのでは(笑)。私たちは、おいしい食事をたくさん味わっていただきたいし、満足感を得てほしいと思っていますから。そして何より、私たちはフランス作品が内包する豊かな色彩感、ユーモアやウイット、エスプリなどを表現したいと思っています。

フランス料理のフルコース、楽しみです。

伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

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優美に香り高く紡ぎだされる、上質のフレンチ・プログラム
樫本大進(ヴァイオリン)&エリック・ル・サージュ(ピアノ)
2015年1月15日(木) 19時開演 サントリーホール

<プログラム>
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 Op.13
プーランク:ヴァイオリン・ソナタ Op.119
フォーレ:ロマンス 変ロ長調 Op.28
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調

樫本大進

公演の詳細はこちらから

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