2014/6/3

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ザ・フィルハーモニクス 公演レポート(ウィーン)

“音楽界の根底を揺るがす斬新なアンサンブル”- ザ・フィルハーモニクス

 2014年5月20日、ザ・フィルハルモーニクスの演奏会がウィーンのコンツェルトハウス大ホールで行なわれた。この楽団が結成されたのは2007年、クラシックの王道を行くウィーン・フィル・メンバーがクラシックの枠からはみ出して、クレズマー、タンゴ、ジプシー、バルカン、ボサ・ノヴァ、ジャズを弾こうと意気投合。本人たちの冒険心と意志の固さから、音楽界の根底を揺るがす斬新なアンサンブルとして独自のキャリアを積み始めた。クロスオーバーならぬ何でものありのプログラムにトークを交えたライブ感覚の演奏会は、これまでにない新鮮さで話題を呼んでいる。
 この日は「Fastination Cinema ―ハリウッドからボリウッドまで―」という映画音楽を中心に据えたプログラムで、客席はほぼ満席。弦楽五重奏によるA.ヒッチコックの名作《サイコ》から有名なシャワーシーンの音楽で始まり、続いてクラリネットとピアノが加わってS.ポラックの《愛と悲しみの果て》に使われたモーツァルトのクラリネット協奏曲第2楽章が演奏された。ここですでに明らかになったのは、クラシックの響きや感覚を基点に他のジャンルへアプローチしていくという彼らの姿勢だ。どんなに音楽のスタイルが変わってもウィーン・フィル的な響きの世界から離れることはない。描かれる絵は別の音楽ジャンルから発したものだが、彼らの使う絵筆はクラシックによるものであり、その絵の芸術性は驚異的に高い。多くの人がこのアンサンブルにある種の高級感を見いだすのはこのためだろう。
 もうひとつの魅力は肩の凝らない気さくなトーク。曲の合間にリーダーのコヴァーチが立って話をするのだが、演奏とは打って変わったトークが炸裂、会場が笑いの渦に巻き込まれる。メンバーが思いっきり弾ける演奏会、程よく酔わせてくれるハイクオリティな一晩だった。

文:山田亜希子(音楽評論家/在ウィーン)

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ウィーン・フィル公認の“7人のヴィルトゥオーゾたち”
ザ・フィルハーモニクス
2014年06月20日(金) 19時開演 東京芸術劇場 コンサートホール

ザ・フィルハーモニクス

公演の詳細はこちらから
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