ミヒャエル・ザンデルリンク（首席指揮者） ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団

　震災の影響で2011年日本ツアーが延期となったドレスデン・フィルが、満を持して日本に帰ってくる。しかも世界が注目する飛びっきりの俊英、ミヒャエル・ザンデルリンクを指揮台に迎えて。
　ミヒャエルは名匠クルト・ザンデルリンクの息子で、チェリストとして活躍した後に、２人の兄、トーマス、シュテファンと同じく指揮者を志した。そして2012年秋に名門ドレスデン・フィルの首席指揮者のポストに着任、その注目度はいまドイツからヨーロッパ全域に急速に高まっている。
　彼の指揮には聴き手を煽動するような派手な仕掛けがあるわけではない。スコアを丁寧に読み込んで音楽を整えていく正攻法のスタイルで、テンポやダイナミクスも極端な味付けや誇張をすることもなく、各パートの最大公約数を丁寧にまとめあげていく。
　2012年春にドレスデンで演奏されたこのコンビでのブルックナーの第５交響曲は、４楽章のエンディングに壮麗なクライマックスを築き上げ、聴衆だけでなく楽員すらも「気がついたら最後に感動していた」という印象の、後味の良いブルックナーで、その演奏は爽やかですらあった。
　こうしたミヒャエルの音楽を端的に表せば“natural” という言葉がふさわしい。職人肌の仕事を着実にこなす彼の誠実さが、今のドレスデン・フィルの充実を生んでいる。元来ドイツ＝オーストリア系の古典的な作品で抜群に安定した演奏を披露してきたドレスデン・フィルだが、そこにさらに新たな魅力が加わったかたちだ。前述のコンサートでは、ミヒャエルがステージに登場するだけで楽員が彼に拍手を贈っていた。それほどの音楽的蜜月関係を我々も自身の目と耳で確かめることができるだろう。
　2015年には本拠地に新ホールが完成するというドレスデン・フィル。
上原彩子と川久保賜紀という日本が誇るトップソリストとの共演が加わるコンサートも大きな楽しみだ。上昇気流の彼らが奏でるクラシックな名曲をじっくり楽しもう。