大野和士 指揮　ウィーン交響楽団

ウィーン響を振る大野和士
山崎 睦（音楽ジャーナリスト／ウィーン在住)

　歴史と伝統を誇る“名門”ウィーン交響楽団を、わが国随一の“気鋭”、大野和士が指揮する。なんとエキサイティングな“事件”ではないか！
　ウィーンでは国立歌劇場管弦楽団として活動の主体をオペラに置くウィーン･フィルハーモニー管弦楽団に対して、コンサート･シーンを支えているのが市立のウィーン交響楽団であり、楽友協会とコンツェルトハウスの二大ホールでコンサートを開催している。来シーズンから首席指揮者に就任するジョルダン（パリ国立オペラ監督と兼任）、それにプレートル、フェドセーエフ、ジンマン、ナガノ、ルイージ、ヴァンスカ、コンロン、ホーネック、ノセダ、ネルソンス等々が登場する今シーズンもダイナミックな展開をはかっているところだ。このような新しいトレンド導入に積極的な姿勢は1900年の楽団創設以来、変わることなく、つねにこの都市の音楽文化を活性化し、ファンの視線を世界に向ける役割を果たしてきた。
　いまここに登場する大野和士は自分の音楽に対して確たるイメージと強い信念を持ち、それに向かって邁進する指揮者である。世界を舞台に、もっとも広範でアクティヴな活動を繰り広げている存在と言ってもいいだろう。
　若い二人のソリストのうち、ピアニストのインゴルフ･ヴンダーはグルダ、ブレンデルの後継者として注目されているウィーン･ピアノ界のホープ。まだ小学生のときのウィーン･デビューではじめて会った庄司紗矢香は、いまや押しも押されぬ
ヴァイオリン界のスターだ。
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　カラヤンやサヴァリッシュ、そしてジュリーニが振ってきた、いわば強大な潜在力を秘めたウィーン交響楽団から、いま大野がどのような音楽を、どこまで引き出すことができるか、そこが聴きどころであり、同時に大きな期待が寄せられるのが今回のウィーン交響楽団日本公演だ。
　大野和士は必ずや満足の行く回答を出してくれるに違いない！