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ユンディ・リ 「人民ネット」でのインタビュー①

欧州、北米ツアーでオール・ショパン・プログラムを成功させたユンディ・リが、いよいよ6月に来日します。
今回、中国のインターネット放送局「人民ネット」でのインタビューを2回に分けてご紹介します。現在の活動、音楽教育の展望や趣味のお話しまで、素顔のユンディを垣間見ることができます。

ユンディ・リさんは、ツアーからお帰りになったばかりなのですね?
はい。2ヶ月にわたるヨーロッパ、北米ツアーを終えたばかりです。

とても評判が高かったと聞いています。何か大きな収穫はありましたか?
その土地によって音楽に対する理解や感覚に違いがあるので毎回がとても重要でした。どこへ行ってもたくさんのファンが集まってくれたことも嬉しかったです。特に今年は「ショパン伝奇」と題したショパン特集なので、大きく盛り上がり嬉しかったです。

手を怪我されたと聞きましたが?
ヨーロッパの気候は時々すごく乾燥して、練習で力が入り過ぎると爪と皮膚の間の部分が切れてしまうのです。公演が続くのでゆっくり治している暇もなく、ハードヘアジェルでとりあえず傷口を塞いで応急処置していました。プロのピアニストは運動選手と同じで怪我が割とおおいです。指とか手首とか、手の部分の運動が激しく、でも怪我しても舞台には立たないといけませんからね。

その時は辛いですか?
傷を塞いでおけば集中していますからあまり気にはならないです。傷があると演奏に影響を及ぼすのは確かですからなるべき気にしないように心がけています。

傷のできた後はどうやってケアするのですか?
すぐに治さなければなりません。冬などは乾燥しているところへ練習で強い力がかかるとすぐ切れてしまいますし。

今回はアンコールに中国曲を弾かれていましたね?
何年か前に中国曲のCDも出しています。ショパンもポーランドの民族音楽のマズルカやポロネーズをたくさん作っています。中国にも優れた民族音楽があって、たとえば「彩雲追月」も広東省の代表的な素晴らしい曲です。

中国人留学生や在外華人などにとても受けたようですが?
海外で自国の人たちに会えるととても励みになります。彼らに会うと故郷へ帰ったような気がして、その海外で祖国の民謡を弾くことを、とても幸せに感じます。

世界中どこでも中国、というアイコンは効力があるのですね?
今中国は経済大国になり、世界中どこでも中国人がいてくれます。とても誇りに思っています。

今後の活動はどのような予定ですか?
来月からアジアツアーが始まり、5月末から日本ツアーを9都市で行います。その後7月から中国北京、上海、深圳、南京など6都市でショパンを演奏します。

バラードのCDがリリースされましたね。2年前はベートーヴェンでしたが、また今年ショパンなのはどうしてですか?
ショパンは膨大な数の作品を残しています。10年20年かけてやっと演奏できるくらいです。プレリュード、エチュード、ポロネーズ、マズルカ、バラード、ソナタ、円舞曲、スケルツォなどそれぞれがシリーズで沢山の曲数があります。たとえばコンクールでは、ポロネーズの一曲だけを演奏しますが、それ以外にもたくさんあります。今回はプレリュードとバラードを録音しました。これはショパンの重要な部分だと思います。ですので、ショパンを演奏するというのは長い時間をかけてやるものなので、途中でベートーヴェンを演奏し、またショパンを取上げるということになります。

「24のプレリュード」は、大きく分けて明るい曲と暗い曲になると思いますが、聴き所がたくさんありますね。
難度も高いです。ショパンはピアノの技術だけでなく芸術性でも高いものを要求します。ショパンも生涯をピアノにかけたのですからね。長く研究しなければなりません。

時間がかかる研究なのですね。ご自身の16年間の変化はどのようなものですか?
同じ曲でも違う年代では違うものになります。作品への理解、速度それぞれが時期による違いがあります。しかもショパンの異なる作品も演奏してきました。ショパンの作品は膨大なので2、3年経ったら別のショパンを演奏すると思います。そしてまた元の曲に戻ってみる。または演奏したことのない曲に挑戦する。これが私の進化の過程です。

学生から演奏家、そして審査員。それぞれの違いは?
クラシック音楽の良い所は、どの時代の作品であっても、良い演奏を聴くことができることです。その曲への理解や感覚、期待などがそれぞれの時代の作品を素晴らしくしているのです。ショパンの曲は200年以上前の曲ですが、少し前のルービンスタイン、ホロビッツ、現在のアルゲリッチ、ポリーニの演奏を聴くとそれぞれ違いがありますし、20年後の未来の音楽家たちもまた別の演奏をすると思います。私たちは、古典音楽を今の時代の影響を受けながら、次の世代へ伝承していく必要があると思います。

中国では北京や上海以外の地方都市でも演奏されています。
クラシック音楽は、まず理解してから聞かなければいけないジャンルだと思います。大衆文化ではありません。古文のようなもので、見てすぐわかるというものではないです。シェイクスピアだってそうでしょう。つまり準備の段階があって・・・。それも楽しみのひとつです。地方都市を回るツアーは2年前も行いましたが、確かに大都市との違いがあります。大きい都市の方が音楽通の人が多く、小さい都市は若者や子供が多いです。でも中国にもこんなにたくさんクラシックを理解したいというお客さんがいることに感激しました。

デビューしてから今まで、中国の観客に変化は感じられましたか?
2000年から16年間の変化は大きいです。都市の変化も同じでしょう、このビルも新しくなったでしょう。文化も人類も絶えず進化しています。特に中国では音楽文化が発達して、30以上の都市に一流のホールができ、お客さんが生まれました。ヨーロッパには基本的にとても良いお客さんがいます。でも中国に今5000万人のピアノ学習児童がいることを考えると、それは全ヨーロッパ合わせてもそれほどの数にはならない。中国の人々の音楽文化への憧れは強く、未来展望は明るいと思うのです。

クラシック音楽は聞かないけれど、ユンディ・リのファンだからユンディのクラシックは聞くという人が多いですが。
分析したことはないです。でもどんなお客さんにも自分の音楽を聴いてもらいたいし、音楽を通じて自分の持ちを伝えたいと思いながら演奏しています。

大衆メディアの中では、時にはアイドルのように扱われ、バラエティ番組に出演されることもあります。
バラエティに出る目的は、番組を通して音楽を知ってもらうことです。
音楽は元々大衆的なものです。クラシックも200年前には流行音楽でした。当時の娯楽は、オペラを観たり音楽会を聴くことしかありませんでした。現代ではいろいろな娯楽があります。娯楽が氾濫する現代に生きる音楽家として、時代に合わせるのは必要と思います。時代の要素の中で、古典の良さを生かしていくのが必要です。
モノクロ写真とモノラル音しかなかった時代でさえ、記録ができたことにより、今でも昔の音を聴くことができる。もしショパンの時代に録音が出来たならホントに聴いてみたいです。ベートーヴェンやモーツァルトはどんなふうに演奏していたのかってね。我々の時代は80年代にCDができデジタル化された。時代の要素を自分に取り入れて、皆が理解できる言語で文化を伝承して行くことは、現代に生きる私の責任だと思います。

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ユンディ・リ オール・ショパン・リサイタル
2016年6月7日(火) 19:00 東京芸術劇場コンサートホール
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