2014/5/21

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心に響く…マレイ・ペライア「アカデミー室内管弦楽団について語る」(2)

その(1)はこちらから

ペライア

Q:弾きながら指揮をする・・・舞台上で、二役ですね。そのような活動をされることは、早くからお考えにあったのでしょうか?
MP : はい、イギリス室内管弦楽団などとは、ときどき、そういうチャンスがあるときには交響曲の弾き振りをしております。そもそも、マネス音楽大学時代に指揮法の勉強をしたのです。オーケストラを指揮したこともありました、回数はそれほどでもないですけれど。いまでも、指揮が中心、という活動ではありませんが、シンフォニーの弾き振りはだいぶそれらしくなりましたね。

Q : なるほど、どんなご気分で指揮なさってきたのか、よりよくわかりました。アカデミー室内管弦楽団との最初の共演は2000年、すでに14年の月日が流れたのですね。
MP : そうです、14年。その期間に日本にも行きましたよ。よく覚えております。

Q : その間に、彼らとの仕事や関係、たくさんの変化があったでしょうか?
MP : いくぶんか、変化した点もありますが、大きくは変わっていません。関係はいつもあたたかく、長年のよいつきあいが続いています。長く勤務しているメンバーが多く、合唱団のかたたちも変わらぬ顔ぶれです。セクションリーダーは14年間同じ人たちですね。

Q : ペライアさんは、合唱団のご指導にも参加されるのですか?
MP : いいえ、合唱の指導はいたしません、オーケストラの指導だけです。楽器奏者は、一部、新しい顔ぶれが加わってはいますが、ほとんど変わっていませんね。年齢が高い、という意味よりも、長年の経験でしっかりした奏法を身につけた方たち、と言えます。演奏がぶれないんですね。メンバー間のつながりも強い。できるだけ人間を入れ替えない、という方針なのです。

Q : 私たちは、アカデミーは世界のオーケストラの中でも最高のもののひとつ、と認識していますが・・・
MP : ええ、おっしゃるとおりです。

Q : あえて「こういう特徴のオケです。」と言うとしたら?
MP : 私がいちばん好きなのは、彼らのもつ活気です。とても元気がいいんです。あれだけの活動をしながら、ルーティーンに陥ることがない。音も、つねになにかを創り出そうとしています。けっして「前回の繰り返し」では、ない。そしてメンバーがみんな、よく働きますよ。たとえば私は、コンサートのまえに必ず1時間半のリハーサルをする方針です。全曲通して総リハをするわけですが、それをよろこんでやりましょう、というオーケストラは、じつはあまりないんです。彼らはすすんでやるのです。よく働き、各人が責任を果たそうとし、ルーティーン・・・みずみずしい心を持たずにただ表面の仕事をこなすことを、私はルーティーン、と呼びますが、アカデミーの団員はそこに甘んじることがないのです。

Q : 先ほど、ツアーのお話に触れましたが、楽団と一緒にツアーをするという経験は、なにをもたらしてくれるのでしょう? 本拠地で演奏するお仕事の場合と、得られるものは違いますか?
MP : コンサートを行うことによって得られるもの、それはまず、聴衆のみなさんに聴いていただくことで、「そうか、これはこういう音楽だったのだな。」ということを理解することができますね。これは、すでにとても大きな体験です。そしてさらに、私の基本理念は「決して同じパフォーマンスを2回繰り返してはいけない。」ということです。演奏はそのつど、新鮮で違ったものであるべきなんです。ツアーに出ますとね、スケジュールがほぼ毎日、毎晩、演奏するように組まれておりますでしょう、2週間とか3週間に渡って、同じ曲目を演奏するわけです。そうした経験をしますと、曲のことがほんとうによくわかるようになります。どうやって新鮮さを出そうか、変化をつけようか、という工夫を余儀なくされるからです。これは、ツアーに出てみませんと、体験できないことですね。ホームとなっているホールで演奏を繰り返す場合と、違ったものを学びますよ。

Q:一緒に移動することで、オーケストラとの繋がりも強まるのですか?
MP : ええ、強まります。友として、より絆が深くなります。

Q : きたる日本でのコンサートの演目についてお尋ねします。まず、お弾きになる2曲、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番、バッハのチェンバロ協奏曲第7番ですが・・・
MP : モーツァルトの21番は、たいへん優れた楽曲で、27番などと並んで、偉大な協奏曲ですね。彼の後期の協奏曲は、それ以前の作品に比して、編成を大きくしたオーケストラを配しての、オペラ的要素が濃い仕上がりになっています。そして、この演奏のためにも私自身がカデンツァを書きましたので、ぜひ聴いていただきたいと思います。バッハの協奏曲は、私がすでにバッハの協奏曲全曲集を録音しておりますが、今回は、1番や2番ほど大きくない構成のものを選んでみました。このハープシコード協奏曲は、同じバッハのヴァイオリン協奏曲第一番イ短調BWV1041が原曲になっています。もともとヴァイオリンのために書いた曲を、ピアノ、つまり当時はハープシコードのために、アレンジしたわけですね。アカデミーでは、まずその原曲のヴァイオリン協奏曲の演奏経験が豊富ですし、ピアノ協奏曲も含め、他の協奏曲もとても得意としています。楽団の歴史にとても馴染んでいる演目、私たちが愛している曲です。

Q : そして弾き振りをしていただくハイドンの交響曲第94番です。
MP : いい曲ですよねえ。ハイドンの数ある交響曲においても、もっとも優れた曲のひとつでしょう。90番台以降のハイドン・シンフォニーは、どれも素晴らしいですね。理由は、つよい想像力が感じられるからです。楽曲というのは、ある「型」に収まっているものと、そこからあふれ出すようなイマジネーションの力をもつものとがあります。ハイドンの後期の交響曲群は、その点において、どれもみな違ったイマジネーションの産物で、あ、どこかが、他のあの曲に似ている・・・という箇所がないんです。ハイドンはこれらの曲をイギリス滞在中に書きました。「ザロモン交響曲」と呼ばれる作品群をこの時期に書き上げています。コンサート・シリーズなどでもよく取り上げられる人気曲集です。日本の皆さまにも、ぜひ興味をもって聴いていただきたいですね。

Q : ペライアさん、本日はたくさんのたのしいお話をありがとうございました。
MP : どういたしまして。みなさん、11月にお会いいたしましょう。

取材・通訳:高橋美佐

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12年振り!巨匠ペライアが聴かせる奇跡の指揮&ピアノ
マレイ・ペライア(指揮&ピアノ)&アカデミー室内管弦楽団

2014年11月13日(木) 19:00 サントリーホール
<曲目>
メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第7番 ニ短調
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467
J.S. バッハ:ピアノ協奏曲 第7番 ト短調 BWV 1058
ハイドン:交響曲 第94番 ト長調 Hob.I-94「驚愕」

公演の詳細はこちらから

ペライア

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