2026/2/4

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ブルース・リウ インタビュー!待望の6月リサイタルにむけて

ショパン・コンクール優勝を経て、独自の深化を続けるブルース・リウ。6月のリサイタル・ツアーは、マグリットの絵画に着想を得たという、少し不思議で美しいプログラムです。ぜひご覧ください。

インタヴュー・文:青澤隆明(音楽評論家)

 ショパン国際ピアノ・コンクールの話題で賑わった2025年、前回の優勝者として脚光を浴びたブルース・リウは、多彩なレパートリーへの挑戦を進めていた。
 昨年3月の来日リサイタルではロシア音楽に新境地を聴かせたが、次なるシーズン、2026年6月の来日で私たちに届けられるのは、さらに多彩な驚きに満ちたプログラムだ。
 リゲティのエチュード「ファンファーレ」で始まり、ベートーヴェンの「月光ソナタ」嬰ハ短調 Op.27-2から、ショパンの「2つのノクターン」Op.27(嬰ハ短調と変ニ長調)に繋いで、ラヴェルの「道化師の朝の歌」にいたる。
 後半のプログラムは、リストの「スペイン狂詩曲」で結ばれる。2025年6月にこのインタヴューを行った後、その前段9曲目が変更されて、ドビュッシーの「夢」、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン・ソナタ」ハ長調Op.53、そしてモンポウの2作が含まれることになった。
 フランス民謡「月の光」にもとづく、モンポウのグロッサとファンタジアは、生前には未出版だった美しい小品で、これらが選ばれたのは私にとってはうれしい驚きであり喜びだ。ベートーヴェンの異なる時期の名作ソナタが前後半ともに中盤に据えられたのは、来たる2027年の作曲家没後200周年を見越してのブルース・リウのチャレンジかもしれない。

ちょっと不可思議な、しかし美しいプログラムですね。さまざまな色彩とリズムがきこえてきそうですが、選曲のコンセプトとしてはどんなことを考えられたのでしょう?

ルネ・マグリットの絵画をみて、影響を受けました。シュールレアリスティックで、暗い夢に満ちていて、昼と夜がおなじ絵のなかにある感じです。

月の光にふさわしく、#と♭の多い曲も続きますね。

ええ。でも、実のところ、それほど多くのものが複雑に詰め込まれているようにはみえませんよね。とても夢みがちで、月のようなコンセプトです。

いっぽうダンスの要素も色濃くて、スペイン舞踊の趣はもちろん、リゲティの「ファンファーレ」は古代トルコのリズムでしょう。いっぽう、ショパンのノクターンではベルカントも聞こえる。そうしたすべてを包み込むような、とてもユニークなプログラムになりますね。

まず月の光というコンセプトがあって、それからスペイン的な面にいたります。
プログラムの始まり、リゲティのこの曲は、不条理にも月へ行くような趣があります。ちょっと意味をなさないように思えるけれど、考えてみれば、意味をもっているということがわかる。月は結局のところ、私たちが思っていた美しいものではなくて、非常に奇妙で無秩序なものです。月の映像をみれば、とてもミステリアスで、とても暗く、とても寒いでしょう。
この種の不条理さがリゲティから出てきて、ベートーヴェンの《月光ソナタ》に転じて行くのは、とても素敵だなと考えました。ショパンのノクターンではその続篇のようにして、《月光ソナタ》を基本的に同じ調性で追っていく。それから、ラヴェルの〈道化師の朝の歌〉では、スペイン舞踊というテーマへと向かう方向性をみせます。

そして、リストの〈スペイン狂詩曲〉でプログラム全体を結ぶのですね。あなたがルビンシュタイン国際コンクールで演奏された曲でもありますが、やはりつよい愛着があるのでしょう?

ええ、馴染みの曲です。あれ以来、コンサートでは弾いていないけれど。でも、僕の“ティーンエイジャー・ピース”なのです(笑)。

スペイン音楽への興味についてはどうですか?

スペイン音楽が全般としてどうかはさておき、僕はスペイン音楽の西洋と東洋の結合を楽しんでいます。その両方が混ざり合ったもので、そこが非常に興味深い要素だと思います。

このプログラムのなかで、あなたにとって新しいレパートリーとなる作品はありますか?

たくさんありますよ。ノクターンは新しいし、《月光ソナタ》も新しい。だから、半分新しくて、半分古い感じかな。

いろいろな作曲家がいますが、月のように遠くではなく、近くにその存在を感じるのですね?

たしかに、他よりの人よりも近くに感じる作曲家はいるし、そうではない作曲家もいます。でも、僕が大事だと思うのは、自分の友達のように作曲家と接することです。彼らとおしゃべりをして、飲みに行って、冗談を言ったりするようにね。
つまり、楽譜の背後にあるものを引き出すのが大切だということです。楽譜に記されたことだけではなくて。作品の意図というのは、楽譜に書き入れることのできないものだから。

それにしても、さまざまな光彩と陰翳、かたち、色彩とリズムに満ちたプログラムです。はたして、私たちはこのコンサートを聴いて、月に行けるのでしょうか?

それはわかりません(笑)、人はそれぞれ、違う精神をもちますから。人によっては、月のことなど考えもしないかも。

マグリットの絵画との関連について、もう少しだけおききしたいです。

最初はとても直観的に、ヴィジュアルに、このプログラムのコンセプトとなりましたが、もちろん結局はそこから跳び出していった感じですから、これらの曲が彼の絵とどう関係するというようなことは言えません。それはある種、抽象的な思考の範疇ですからね。
ただ、なにか非常に不条理なものと、非常にオーガナイズされたものの間にある。そして、イリュージョンのなかでは、ときに自分がどこにいるのかわからない。――そのような趣きのプログラムです。もちろん、光をもってこれを演奏するのは、僕の大きな目標ですけれど。


≪公演情報≫
艶やかに、多彩に―深化するピアニストの瞬間(いま)を聴く
ブルース・リウ ピアノ・リサイタル
2026年6月5日(金) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
2026年6月7日(日) 16:00 高崎芸術劇場 大劇場
2026年6月8日(月) 19:00 すみだトリフォニーホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2205/


⇒ブルース・リウのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/bruceliu/

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