2025/12/25
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国際音楽祭NIPPON2026初参加 注目ピアニスト ソン・ミンス 来日直前インタビュー!
今年1月に初来日し鮮烈な印象を残したピアニスト、ソン・ミンス、人気ピアニスト、イム・ユンチャンの師としても有名です。諏訪内晶子との待望の共演について、ヤナーチェク《草陰の小径にて》への深い洞察、そして次世代へ託す音楽観を語っています。ぜひご覧ください。
2025年1月に初来日し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を披露されました。日本での演奏会はいかがでしたか?また、前回のインタビューで、日本では禅庭を訪れ、静寂を体験したいとお話しされていましたが、実現しましたでしょうか。
残念ながら、前回の滞在中に禅庭を訪れる機会はありませんでした。それは次回ぜひ体験したいと強く願っていることのひとつです。とはいえ、日本でのデビューは私にとって非常に忘れがたいものとなりました。東京フィルハーモニー交響楽団と、豊かな響きをもつサントリーホールで共演できたことは、深く心を打つ体験でした。あのホールは、まるで音楽とともに呼吸しているかのように感じられます。内省と人間性に満ちたベートーヴェンの第4番の協奏曲を、日本の聴衆と分かち合えたことは、とりわけ意義深いものでした。聴衆の皆さまの集中力と温かさは、私の心に深く刻まれており、今も大切な記憶として残っています。
今回、諏訪内晶子さんとは初共演ですね。どんなことを楽しみにされていますか?
はい、諏訪内晶子さんとは今回が初めての共演となります。これまで何度も彼女の芸術に触れる機会があり、その演奏を長年にわたって敬愛してきました。洗練と内なる強さを併せ持った、気品ある存在感は、彼女が奏でるすべての音楽に表れています。今回、彼女をはじめ、音楽祭に参加する素晴らしい音楽家の皆さんとともに音楽を創り上げられることを、心から楽しみにしています。
国際音楽祭NIPPON 2026への参加で、楽しみにしていることをお聞かせください。久慈や石巻など東北地方も訪れますね。
この旅を、私は「発見の機会」だと捉えています。各地を巡りながら、風景の美しさを全身で受け取り、それらを心の奥深くに刻みたいと思っています。久慈や石巻といった土地を訪れることには、特別な響きがあります。そこには、困難を乗り越えてきた記憶や、静かな強さが息づいています。その地の音楽愛好家や聴衆の皆さんと心を通わせ、親密で誠実な雰囲気の中で、室内楽の珠玉のレパートリーを素晴らしい音楽家たちと分かち合えることを楽しみにしています。
室内楽プロジェクトでは、ヤナーチェク《草陰の小径にて》から抜粋をソロで演奏されます。この作品に魅力を感じている部分を教えてください。
この作品は、ヤナーチェクの音楽の中でも、とりわけ親密な感情の道筋をたどるもののように感じられます。ほとんど個人的な回想録のようです。幼少期の記憶や、我が子を失った深い悲しみと密接につながっており、短い小品の中に、愛と優しさ、恐れと予感、別れ、静けさ、そして穏やかな受容が込められています。この音楽は驚くほど率直で、人間の心の奥底に触れてきます。私たちが皆抱えている、儚さや記憶、言葉にならない感情を思い起こさせてくれるのです。
チェコの作曲家マルティヌーのピアノ五重奏曲第2番も演奏されます。日本ではあまり演奏されない作曲家ですが、現代作曲家の作品に焦点を当てた<MODERN>のような演奏会についてどういった考えをお持ちですか?
音楽家として、私たちは同時代の音楽だけでなく、忘れられたり見過ごされてきた宝石のような作品を探し続ける使命があります。マルティヌーは、まさに再評価されるべき作曲家のひとりです。ヤナーチェクの影響を受けつつも、最終的にはまったく独自の音楽世界を築き上げました。彼の音楽には、憧憬、動揺、郷愁が強く宿っており、故郷を離れた経験や帰郷への想いが色濃く反映されています。今なお生き、進化し続けている音楽だと感じています。
フォーレの室内楽全曲マラソン・コンサートにも参加されます。ユニークな企画だと思いますが、最初にこの企画の話を聞いたときの印象はいかがでしたか?
その構想の深さと大胆さに、すぐに心を打たれました。19世紀後半からその先へと広がる作曲家の世界を、これほど包括的に室内楽で探る試みに参加するのは、私にとって初めての経験です。フォーレの室内楽は、その内省的な詩情と神秘的な和声感覚によって、長くピアニストに愛されてきました。特にピアノの表現可能性を拡張する彼の繊細な実験は、まったく新しい音の世界を切り開いたと言えるでしょう。2024年が没後100年であったことを思うと、この「静かな革命家」を讃えるこのような祝祭は、まさにふさわしいと感じます。
国際音楽NIPPONは、若い世代を育てることも大切にしています。音楽教育についての考えをお聞かせください。
音楽は私たちの魂を形づくり、内面を映し出すものです。スピードと成果が重視される現代において、音楽は人間性の避難所であり続けなければなりません。すべての子どもは、美しい歌を内に秘めています。そのかけがえのない糸を失わせないことが、私たちの責任です。旋律と和声を通して、想像力、共感、深みが育まれます。音楽教育とは、単に音楽家を育てることではなく、繊細で思慮深い人間を育てることなのです。
国際音楽祭NIPPONへの参加を通して、伝えたいメッセージや芸術的ビジョンはどのようなものですか?
音楽とは、共に聴く行為である、ということを伝えたいと思います。そこには、心と心が出会い、記憶が呼び覚まされ、時間が一瞬止まるような静かな空間があります。
今後取り組まれるプロジェクトや録音の予定があれば教えてください。
日本では、2027年初頭に向けて、ベートーヴェン没後200年を記念した重要作品を中心とする複数の公演企画が進行しています。2026年は、演奏・録音の両面でバッハの作品に多く取り組む年になる予定です。また、ヴェルビエ音楽祭、国際音楽祭NIPPON、香港芸術祭など、いくつかの国際音楽祭にも参加します。ソロ活動としては、ウィーン交響楽団、アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズとの共演なども予定されています。
ソン・ミンスが室内楽プロジェクトで演奏するヤナーチェク「草陰の小径にて」の詳細が決まりました。
「ヤナーチェクの音楽の中でも、とりわけ親密な感情の道筋をたどるもの、儚さや記憶、言葉にならない感情を思い起こさせてくれるの」とソン・ミンスが語る作品に、ぜひじっくりと耳を傾けてみてください。(2/25東海市芸術劇場(SELECTION) 2/28横浜みなとみらいホール(CLASSIC))
ヤナーチェク:「草陰の小径にて」第1集より
第1曲 われらの夕べ
第10曲 ふくろうは飛び去らなかった
第7曲 おやすみ











