2025/6/14
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山田和樹ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団デビュー!
2025年6月12日、山田和樹がベルリン‧フィルハーモ二-管弦楽団を指揮して鮮やかにデビューを飾りました。雨海秀和氏による臨場感あふれる公演レポートをお届けいたします。
指揮者の山田和樹がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に出演した。先日ベルリン・ドイツ交響楽団の芸術監督に就任することが伝えられていて、ベルリン・フィルの本拠地のフィルハーモニーにはこのオーケストラを指揮して2回出演しているものの、ベルリン・フィルに対して期待が膨らむ一方で大変な重圧があったことは想像に難くない。彼がどのようにこの名オーケストラを導くのか耳にするためベルリンを訪れた。
プログラムはレスピーギ「ローマの噴水」、武満徹「ウォーター・ドリーミング」、後半にサン=サーンス『交響曲第3番「オルガン付き」』の3作品。ベルリン・フィルのメンバーはノア・ベンディックス=バングリーがコンサートマスターを務め、木管はベテランのケリー(オーボエ)、シュヴァイゲルト(ファゴット)、そしてパユ(フルート)の姿。パユは武満作品のソリストを務めながらレスピーギとサン=サーンスではトップパートを吹く八面六臂の活躍ぶり。
サン=サーンスはベルリン・フィルでは前回の演奏は10年前とのこと。CD録音でもカラヤン・レヴァイン(共にドイツ・グラモフォン)、メータ(テルデック、現在ワーナー)の録音が出て以来約30年の空白がある。レスピーギも定期演奏会では長いこと演奏していないのではないか。カラヤンの名盤は1970年代のものであり半世紀前だ。このように山田和樹にとっては、実力が世界一ながら作品には慣れていないオーケストラと一緒に、モンテカルロ・フィル、バーミンガム市交響楽団などと演奏経験が多く自信ある音楽を創り上げることとなった。
「ローマの噴水」は繊細な表現が難しい作品。ヴァイオリンの柔らかな響きとハープ・木管のかけあいがくっきり浮かび、美しく瑞々しい音楽で聴き手を魅了した。続く「ウォーター・ドリーミング」は、オーケストラの繊細な音創りの中、パユが和楽器の尺八や琵琶のような音の揺れや荒々しさといったフルート演奏のリスクを恐れず大胆に表現し飛翔した、作品像を一新する名演奏。休憩を挟んで、サン=サーンス。オルガンが鳴り響く後半ばかり耳目が向かうが、第2楽章のコラール風の主題が第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがかけあい広がる静かで美しいアダージョにおいて山田は柔らかな空気を醸し出した。行いたい強弱表現や弦の弓遣いをオーケストラ側の強力なサポートを得て浸透させられており、第2部開始直後のヴァイオリンの旋律とピアノが静かに響くあたりは、山田の幸せそうな表情が印象的だった。
演奏終了後はプレイヤーは笑顔に包まれ、現地の聴衆がスタンディングオベーションしていた。満席のオーケストラの後ろのポディウム席側にもオーケストラを振り向かせて観客に応えた山田和樹とプレイヤーたちの良い表情も心に残った。
執筆・雨海秀和
〈RMF&山田和樹 グローバルプロジェクト〉
山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団
6月30日(月) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール(チェロ:シェク・カネー=メイソン)
7月1日(火) 19:00 サントリーホール(ピアノ:河村尚子)
7月2日(水) 19:00 サントリーホール(ピアノ:イム・ユンチャン)
7月5日(土) 15:00 ロームシアター京都 メインホール(チェロ:シェク・カネー=メイソン)
山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団
7月4日(金) 19:00 アクロス福岡シンフォニーホール(ピアノ:イム・ユンチャン)
山田和樹指揮 バーミンガム現代音楽グループ
6月30日(月)18:00 東京オペラシティ リサイタルホール
<山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団来日公演 その他の日程>
6月28日(土) 15:00 愛知県芸術劇場コンサートホール
6月29日(日) 14:00 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO
7月6日(日) 14:00 横浜みなとみらいホール(ピアノ:イム・ユンチャン)