2025/6/6

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【海外公演レポート】ロッテルダム・フィル現地公演レポート(5/25)

来日迫るラハフ・シャニ指揮ロッテルダム・フィル!5/25現地公演レポートが届きました。力強いエネルギーに満ちた現地公演のレポートをぜひご覧ください。日本公演への益々期待が高まります。

ロッテルダム・フィルとラハフ・シャニ マーラーの大曲で聴衆を熱狂の渦へ巻き込む

若い街ロッテルダムに愛されるオーケストラ

オランダ・ロッテルダムは活気があり、若者に愛される都市のひとつだ。ヨーロッパ最大の国際港を背に現代建築が立ち並び、週末には多くの人で賑わう。
中央駅至近のホール『デ・ドーレン』は、1918年創立のオーケストラであるロッテルダム・フィルの本拠地だ。1966年以来、大小のホールや音楽院を擁し、国内有数のカルチャースポットとして知られている。石や木を要所にあしらったホールには、近代的な美しさと開放感があり、訪れた人がゆっくり談笑できるカフェなどの空間も確保されている。

ロッテルダム・フィルは、オランダにおいてクラシック音楽の伝統を引き継ぎながら、進取の精神を忘れず、時代への感度の高いロッテルダムの街に育まれてきたオーケストラである。その首席指揮者の座を2018年に史上最年少で勝ちとったラハフ・シャニの存在は大きい。筆者がその噂を耳にしたのは、ある弦楽器工房でのことだった。「シャニは本当にすごい。ロッテルダムに彼がいるのは幸運なことだと思う」……偶然知り合ったロッテルダム・フィルの中堅奏者がそう熱っぽく呟いたとき、これほどオーケストラ団員の心を掴む魅力とは何だろうと興味を持った。

5月25日日曜のマチネには老若男女が集まり、盛況を見せた。『ロッテルダム・フィル友の会』創立90周年を記念して、90歳以上を無料招待するというユニークな企画も行われていたため、付き添い人とともに来場するお年寄りの姿があった。かと思えば、未就学児を連れた親子連れもいて、年齢層は幅広い。
この日のプログラムは、グスタフ・マーラーの交響曲第9番一本という硬派なもの。9番はマーラーが完成させた最後の交響曲で、難曲としても知られている。同月中旬にはアムステルダムで国際的なマーラーフェスティバルが開催されており、偶然にもロッテルダム・フィルがオランダにおけるマーラー月間を締めくくった形になる。


ホール至近のビル壁面に大きく描かれたシャニとロッテルダム・フィル ※

爆発的なエネルギーと深い精神性

準備の整ったオーケストラの舞台中央に、シャニが喝采と共に迎えられるとすぐ、聴き手をそっと招き入れるかのように、ごくなめらかに演奏が始まった。シャニの指揮にはまったく力みがないが、オーケストラから底知れぬ深い音がたやすく引き出されていくことにまず驚いた。旋律がはっとするほど美しく奏でられる。弦セクションから最初のフォルティッシモが切れ味鋭く出てくるのと同時に、ハーモニー全体が大胆に模られていく。コントラバスを中心とする低音パートがのびのびと奏でられ、分厚い響きをつくる流れからも、過去5年以上かけてシャニとロッテルダム・フィルの間に築かれてきた信頼関係が確かに感じられた。
シャニは、爆発的なパワーでオーケストラを鳴らす一方で、優れたソリストたちとともにマーラーの心の深淵をじっくりと描いていく。若くエネルギーに満ちた情熱的な表現と精神性を兼ね備え、ひとつのオーケストラからいくつもの顔を引き出す能力に優れているのだ。曲調がさまざまに変化するマーラーの交響曲で、シャニは場面を鮮やかに切り替えていく。第三楽章の終わりでは、コンサートホールでしか体験できない種の輝きに満ちた残響に圧倒された。

シャニとロッテルダム・フィルの演奏が心を掴む理由のひとつは、発見や驚きという言葉で表せるだろう。何度も聞いてきた馴染み深い曲でも、ロッテルダム・フィルとシャニの手にかかれば、意外性を持って新鮮に響いてくるのだ。ロッテルダム・フィルメンバーの一人は、同団の魅力を『一緒にリスクを冒せる』、つまり共に挑戦できる仲間がいることだと語っている。

演奏の聞きごたえは素晴らしく、生きた強いエネルギーを浴びたような実感があった。シャニとロッテルダム・フィルの相乗効果のなせる技のひとつだろう。5分は続いたカーテンコールの後、舞台にも客席にも、多くの笑顔が残ったのが確かな証拠だった。


喝采を浴びるシャニとロッテルダム・フィル ※


ホール外観 明るくポップなデザインで打ち出す『クラシック』※


ホール入口 上部に「ロッテルダム・フィルのホーム」の文字が書かれている ※


ロビー 公演前後にドリンク片手に談笑を楽しめる空間がある ※

安田真子(在オランダ音楽ジャーナリスト)
※写真:筆者提供


≪公演情報≫
世界を席巻する若き巨匠シャニ、熱狂を再び!
ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
2025年6月23日(月) 19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月26日(木) 19:00 サントリーホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月27日(金) 19:00 サントリーホール [庄司紗矢香 (ヴァイオリン) 出演]
2025年6月28日(土) 14:00 横浜みなとみらいホール [庄司紗矢香 (ヴァイオリン) 出演]
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2124/

[その他全国日程]
2025年6月21日(土)ザ・シンフォニーホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月22日(日)愛知県芸術劇場コンサートホール [庄司紗矢香 (ヴァイオリン) 出演]
2025年6月25日(水)福井県立音楽堂 ハーモニーホール福井 [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]
2025年6月29日(日)所沢ミューズ アークホール [ブルース・リウ (ピアノ) 出演]


⇒ ラハフ・シャニのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/lahavshani/
⇒ ブルース・リウのアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/bruceliu/
⇒ 庄司紗矢香のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/sayakashoji/
⇒ ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のアーティストページはこちらから
https://www.japanarts.co.jp/artist/rotterdamphilharmonicorchestra/

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