2013/10/15

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シュテファン・ドール(ホルン)に聞く。(ベルリン・フィル八重奏団)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席ホルン奏者であると同時に、現在望みうる最高のホルン奏者 シュテファン・ドール氏。来年1月【ベルリン・フィル八重奏団】の一員として来日するドール氏に、電話インタビューを行いました。

ベルリン・フィル八重奏団

Q: 2011年ベルリン・フィル、2012年大阪フィル、2013年NHK交響楽団と、日本でもソリストとして協奏曲を演奏されておられます。
その演奏を聴かせていただいた中で、変貌自在な音色を持っていらっしゃることに驚きました。ドール氏は「(音色を変えるために)たくさんの唇を持っているのではないか?」と思ってしまうほどですが、この多彩な音色をどのように体得されたのでしょうか?
シュテファン・ドール氏(以後、D):ええ、いろいろな口紅(ドイツ語でLippenstiftといいます)をたくさん持っています(笑い)!それは冗談ですが、私としてはさまざまなことを表現したいと思っているだけです。さまざまな音色と言われますが、音楽を多彩に雄弁に、より音楽的に表現しようとしているに過ぎません。多彩な音色は表現のアイディアのひとつなのです。さまざまな音色なしに、私は演奏できません。そしてこのような姿勢は、これまでの演奏家経験から生まれたものです。

Q:ダイナミック・レンジ(強弱)も大きいですが、特に、あなたのピアニッシモに感動しました。演奏時におけるコントロールは「神業」との呼び声が高いです。これはどのように意識なさっていますか?
D:もちろん意識していますが、特にベルリン・フィル八重奏団で演奏するときは、仲間に影響、というよりむしろ強制されて(!)ピアニッシモを演奏している、コントロールしているとも言えるでしょう。ヴェンツェル・フックスが、本当に美しいピアニッシモでクラリネットを演奏しますから、私もそれにあわせて、演奏しなければなりません。樫本大進は、長いフレーズをやはり美しいピアニッシモで弾いているのに、私が大きな音のまま演奏を続けるわけには行きませんからね。仲間の音を意識してコントロールしていますよ。

Q:あなたのあまりにも自然な演奏、音楽の流れは、まるで息継ぎ(ブレス)をしていないかのようです。あなたがブレスとフレージングにおいて気をつけておられる点はどのようなところですか?
D:フレージングはとても大切ですね。それは、メロディーを歌うことですから。
歌詞がついている場合は、人がそれを歌うと、自然にフレージングができて、自然にブレスしますね。それは楽器で演奏しても同じようにすべきことだと思っています。しかし、どうしたら自然に、ナチュラルに響くように演奏できるか・・・、これは簡単なようでいて、とても難しいことです。私にとっても、いまだに難しいことですが、ひとつだけ言うとすれば「いつもメロディーを歌うように心がけている」ということです。

Q:ところで、あなたの「無尽蔵」にも思えるスタミナはいったいどこで(いつから)体得されたのですか?
D:いえいえ!「無尽蔵」ということなど、全くありません。よく疲れますよ。今朝は元気になりましたが、コンサートのあとは疲れますよ。今回は初めて娘を日本に連れてきましたので、これから少し一緒に出かけますが、夜はコンサートがあるので、午後には休むつもりです。休息を十分にとること、これがスタミナの秘訣ですね。

Q:演奏活動を続けられる上でその演奏レベルの維持、向上のために日々気をつけていることを教えてください。
D:仕事のし過ぎにならないように気をつけなければなりません。仕事のオファーをたくさん頂くのは嬉しいことですが、しかし、やりすぎる危険があります。自分の限界を知るべきです。いつ休むか、またどれくらい休むべきかを判断できる。プロとして演奏活動を続けていくには、自分自身を知らなければいけないと思います。

Q:ウォーミング・アップには時間をかけられるタイプでしょうか?
D:これは、コンサートがどれくらい続くかにもよりますが、かなりタイトなスケジュールのときは、ウォーミング・アップを少なめにすることもあります。通常はコンサート前の1時間をウォーミング・アップにあてています。

Q:現在吹いておられる楽器を教えてください。
D:もうずい分前からドイツのGebrüder Alexander社のホルンです。もう250年以上続いているドイツの老舗です。様々な音色が出せて、どのような要求にも応えてくれる楽器です。

Q:あなたの音楽との出会いは、いつ、どのようなものだったのでしょうか?
D:私が生まれたときからですね。といいますのは、私の母はピアノ教師でピアニストでもありましたから。小さいころから、音楽の道は私の目の前に開かれていたのです。まず6歳でビオラを習い始めました。

ベルリン・フィル八重奏団

Q:ではあなたのホルンとの出会いは?
D:私がまだ小さかったとき、小さな狩猟用角笛(Jagthorn)をもらい、とても気に入っていました。私はドイツのエッセンに住んでいましたが、その近くに著名なホルン奏者のヘルマン・バウマン氏が住んでいて、10歳の時、彼のホルンを聴いたのです。そしてビオラより音が素敵で気に入ってしまいました。それからしばらくはビオラとホルンと両方を習い続けており、15歳のときに、ホルンを選ぶ決心をしたのです。

Q:モーツァルトのホルン五重奏曲を最初に演奏されたのはいつのことですか?その時の思い出を教えていただけますでしょうか?
D:まだ音楽大学で学び始める前で、確か15歳のときに、まず緩楽章だけを演奏しました。とても、とても難しく、演奏したとはいえない状況でしたが・・・。その後、音楽大学で勉強し始めて18歳で初めて全部を通して演奏しました。大変に苦労したのを覚えています。

Q:最後に日本のお客さまへのメッセージを頂けますでしょうか。
A:日本各地で演奏できることを今から楽しみにしています。ツアーそのものはハードですが、日本のお客さまは、音楽への敬意にあふれ、いつも静かに集中して聴いてくださいます。ツアーのオーガナイズも心地良いので、きっとよいコンサート・ツアーになると思います。
それに私は和食が大好きなので、日本の各地での名物(料理)も、とても楽しみにしています。

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樫本大進がベルリン・フィル八重奏団のメンバーについて語る

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選ばれし8人、世界最強のソリスト集団!
ベルリン・フィル八重奏団
2014年1月27日(月) 19時開演 東京オペラシティ コンサートホール
[曲目]
R.シュトラウス(ハーゼンエール編):もう一人のティル・オイレンシュピーゲル
モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407 (ホルン:シュテファン・ドール)
シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 D.803
公演の詳細情報はこちらから

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