2013/7/30

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【徹底ガイド】トスカ 5W1H (トリノ王立歌劇場)

Where?
イタリア、ローマ。ナポレオンが率いるフランス軍がヨーロッパ中を席巻していた時代。初演もローマのコンスタツィ劇場であった(1900年1月14日)。冒頭の恋人たちの微笑ましい逢引のシーンは聖アンドレア・デッラ・ヴァレ教会、そこから拷問と拘束が行われる(!)ファルネーゼ宮、残忍な警視総監の策略によってすべての命がバラのように散るサン・タンジェロ城へと舞台はめまぐるしく移り変わる。トスカの物語に魅了されて、ここに登場するローマの「名所」を訪れるオペラ・ファンも少なくない。劇中、おぞましい出来事が行われるファルネーゼ宮は、現在フランス大使館として利用されている。

When?
1800年6月17日。『トスカ』で描かれるのはイタリアの歴史的な転換点となったたった一日の出来事。当時ローマでは共和制が崩壊し、人々は王政のもとに権力が濫用される恐怖政治に苦しめられていた。ナポレオン軍の勝利によって、一日の中で「すべてが変わってしまう」ヨーロッパとイタリアの運命が、そのまま波乱万丈のストーリーと響き合っている。歴史的にもオペラ史的にも、最もエモーショナルで疾風怒濤な一日であったことは間違いない(『トスカ』の物語は架空のものだが、歴史的背景は事実)。

Who?
フローリア・トスカ=美貌の花形スター歌手(もともとは孤児)、マリオ・カヴァラドッシ=トスカの恋人で画家(革命派)、スカルピア=ローマ市の警視総監(王政派)、アンジェロッティ=カヴァラドッシの友人、政治犯で共和主義者。圧政に抵抗する共和党の若き革命家、その恋人である歌手、彼女に横恋慕する王政派のローマ市総督…というドラマティックな相関関係図は、オペラ初心者にもすぐに理解できるほど明快。

What?
『トスカ』の物語を牽引している一番大きな嵐は「嫉妬」であり「妨げられた愛」だ。トスカが歌う『歌に生き、恋に生き』は、極限状態にまで追い込まれた女性の究極の愛のアリアであるといえる。ヴェリズモ・オペラの中でも金字塔的な輝きを放ち続ける『トスカ』とは、永遠の名作なり。

Why?
そして誰もいなくなった…この悲劇の元凶とは? すべては悪役スカルピアのせいだという人もいる。プッチーニ・オペラでは「善人」と「悪役」がハッキリとしたコントラストで描かれるので、ここでも悪役スカルピアは腹黒さ満開で、聴衆の憎しみを買う。しかし、オペらの中心にいるのは、嫉妬深くて愛情深いトスカなのかも知れない。感情の起伏の激しさゆえに早合点でおっちょこちょいなところもあり、その影響はラストシーンまで尾を引く。恋人のマリオは女に優しく、圧政にはとことん抵抗する「外柔内剛」のいい男。そして、その清らかさと頑固さゆえに、このオペラは悲劇となるのである。

How
『トスカ』はどのように誕生したか…オペラ台本の「元ネタ」は、パリで上演されていたヴィクトリアン・サルドゥの戯曲。プッチーニはたちまちこの劇に魅了されたが、最初に作曲の権利を得たのはライバルのフランケッティだった。存命であったヴェルディにも作曲の話があったというが、最終的にフランケッティが「作曲不可能」と降参し、プッチーニのもとに権利が回ってくる。台本はプッチーニ・オペラの黄金コンビ、ルイージ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザが担当。しかし、そこでもすったもんだの議論や喧嘩すれすれのやりとりが行われ、3年の年月を経てオペラはようやく完成する。批評家からは渋い評価だったが、一般聴衆の熱狂はすさまじかったという。

トリノ王立歌劇場

<あらすじと聴きどころ>
第1幕:1800年のローマ。画家カヴァラドッシは礼拝堂で恋人の歌姫トスカを想い、愛の歓びを歌う(アリア<妙なる調和>)。政治犯アンジェロッティを追う警視総監スカルピアはトスカを見初め欲望に燃え上がる(テ・デウム)。
第2幕:政治犯を匿ったとカヴァラドッシは拷問を受ける。スカルピアは恋人の解放を条件にトスカの身体を求める。トスカは了承し、わが身の運命を嘆き、祈る(アリア<歌に生き、愛に生き>)。スカルピアは部下にカヴァラドッシの見せかけの処刑を命じる。二人になり、迫るスカルピアをトスカは隠し持ったナイフで刺し倒す。
第3幕:サンタンジェロ城。カヴァラドッシはトスカとの別れを嘆く(アリア<星も光ぬ>)。トスカが現れ、いきさつを話し、二人は愛を確かめる。銃刑が終わり、恋人に近づくトスカ。処刑は本物でカヴァラドッシは息を引取る。絶望したトスカは城の屋上から身を投げる。

≪トリノ王立歌劇場 2013年日本公演≫
トリノ王立歌劇場
<「仮面舞踏会」より>
https://www.japanarts.co.jp/special/torino_2013/
 [公演日程] 会場:東京文化会館
 《仮面舞踏会》
 □12月1日(日) 15:00
 □12月4日(水) 18:30
 □12月7日(土) 15:00

 《トスカ》
 □11月29日(金) 18:30
 □12月2日(月) 15:00
 □12月5日(木) 18:30
 □12月8日(日) 15:00

 《特別コンサート“レクイエム”》
 □11月30日(土) 14:00 サントリーホール

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