2013/6/28

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トリノ王立歌劇場:舞台制作総責任者が語る、オペラの必見ポイント

 トリノ王立歌劇場の舞台制作総責任者、技術監督サントリクイド氏が、初夏の東京を訪れました。技術スタッフ、劇場助監督、技術監督へと足掛け30年間劇場に務め、オペラの裏方メンバー全員を統率しています。

トリノ王立歌劇場

「トリノのスタッフは、他の劇場から見ても、とても良く働く人達ですよ」とサントリクイド氏。本番前のドレス・リハーサルまでは、いつも時間との戦いだと言います。舞台を最大限美しく見せるために、常に安全性を確保しながら、各部門における人々の役割を頭に入れ、問題点を見極め、解決策を見出す。オペラにおける極めて重要な役割を果たしています。
 プライベートでは、時間の合間を縫って料理の腕前を披露することが大好き。《仮面舞踏会》のウルリカ役で来日するマリアンネ・コルネッティとは仲良しで、彼女がトリノに来るときは、サントリクイド家に滞在するそうです。このたび早速、日本公演の見所を聞いてみました。

1.「仮面舞踏会」のセットは、各幕で象徴的なものがありますね。 第3幕の舞踏会の場面で、カーテンが上がり大きなシャンデリアの下で合唱が歌い始まる瞬間は、ワッと驚くほど眼を奪われます。その効果をもたらす仕掛けを、お聞かせくださりますか?
 演出家のロレンツォ・マリアーノは、色彩要素を巧みに取り入れています。前半の舞台は色彩をやや押さえ気味にし、黒と白、グレーなどを多く使っていますが、フィナーレでは、鮮やかな色が爆発するかのごとくパッと明るくなる色彩デザインです。
また、この舞台は、人為的な悲劇で幕を閉じます。オープニングでは、最後を想像させる、リアルな事件を暗示させる演出をお見せします。

2.今回の日本公演の演目「仮面舞踏会」「トスカ」で、技術的な観点からぜひお客さまに着目して欲しいポイントをお聞かせください
 「仮面舞踏会」では、人間を非論理的で不自然な空間に置き、人間が創りだす限界を超えた抵抗できない世界を映し出しています。例えば、ソプラノがベッドで横たわる場面では、ベッドがまるでひとつの大きな空間となり、人間がまるで小さな子どもの様に見えたりします。舞台を舞う紙吹雪も大きめにすることで人間を小さく見せるなど、こだわりを見せています。
 もうひとつ、「仮面舞踏会」は、シンプルですが早い場面転換が魅せどころです。ドラマとともにくるくると替る場面を楽しんでいただきたいですね。

 「トスカ」は、ごちゃごちゃしていないシンプルな装置ですが、パッと見れば、どの場面かが判るよう出来ています。教会、宮殿、サンタンジェロ城へと移るシーンの流れに忠実に装置が置かれています。舞台は、主人公トスカのフラッシュ・バックで始まり、最後の場面は、今までの他の演出で観たことのない新しい工夫が凝らされています。こちらは、公演本番でのお楽しみですね!

3.技術監督という立場から、最も嬉しかった思い出をお聞かせ下さい。
 ルッカ・ロンコーニ演出の「サムソンとデリラ」の舞台に、私が考えたアイデアで思い出深いものがあります。幕が開けると、そこは南米の鉱山。100人もの人達が、泥だらけで必死になって、ダイアモンドを掘り当てる。そして、大きな山がグラグラと動きだす。その瞬間、今まで聴いた事が無いほどの大きな拍手が舞台裏まで聞こえました。それまで、どんなテノールの高音で感動したときの拍手より大きかった。今も誇らしい思い出ですね。

 私達の仕事は、お客様に現実でない夢をお見せすることです。オペラの舞台はひとつとして同じものは存在しない。でも、時として皆の仕事がひとつにまとまる瞬間がある。私達が巧く行った!と思うとき、お客様の拍手もとても大きいのです。きっと伝わるのでしょうね。
 日本公演でも最高の舞台をお見せしたいですね。ぜひ公演にお越しください!

≪トリノ王立歌劇場 2013年日本公演≫

トリノ王立歌劇場
<「仮面舞踏会」より>

https://www.japanarts.co.jp/special/torino_2013/
 [公演日程] 会場:東京文化会館
 《仮面舞踏会》
 □12月1日(日) 15:00
 □12月4日(水) 18:30
 □12月7日(土) 15:00

 《トスカ》
 □11月29日(金) 18:30
 □12月2日(月) 15:00
 □12月5日(木) 18:30
 □12月8日(日) 15:00

 《特別コンサート“レクイエム”》
 □11月30日(土) 14:00 サントリーホール

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