2017/5/10

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樫本大進 公演レポート(佐渡裕指揮 トーンキュンストラー管弦楽団)

樫本大進が5月7日にウィーン楽友協会大ホールにて、佐渡裕指揮トーンキュンストラー管弦楽団の定期演奏会に出演しました。現地から公演レポートが届きましたのでぜひご覧ください!
今年7月のアレッシオ・バックスとのデュオ・リサイタルにも期待が高まります2017年5月7日 ウィーン楽友協会大ホール
佐渡裕指揮トーンキュンストラー管弦楽団定期演奏会より

世界を翔ける日本人ヴァイオリニスト樫本大進が2017年5月7日、ウィーン楽友協会大ホール(黄金のホール)にトーンキュンストラー管弦楽団の定期演奏会のソリストとして登場した。指揮は同団音楽監督の佐渡裕である。

この日樫本が演奏したのはショスタコーヴィチの《ヴァイオリン協奏曲第1番》作品77、オーケストラとのチームワークがモノを言うこの大曲を2010年からドイツの名門ベルリン・フィルで第一コンサートマスターを務める彼がどのように料理するのか、期待は高まった。

樫本大進の一番の魅力は「音」だろう。1674年製のアンドレア・グヮルネリから奏でられるその音色はまさに無限大で、柔らかく繊細な音から強靭な轟音まで、音量に関係なくホールの隅々にまで浸透する不思議な力を秘めている。また音の立ち上がりに気品があり、そうした音の仕草にヨーロッパの香りが漂う。彼の特性は第1楽章「ノクターン」から大いに発揮される。どのフレーズもよく考え抜かれていて、求めている音色の方向性も明確であり、自ずと音楽に説得力が加わる。続く第2楽章は躍動感あふれる「スケルツォ」。ダイナミックな演奏だがアンサンブルが乱れることはなく、ショスタコーヴィチのイニシャル「D-Es-C-H」によるモチーフも端的に提示される。この日聴衆がもっとも聴き入ったのは第3楽章だ。まず「パッサカリア」では瞑想的な世界がしっとりと語られ、「カデンツァ」では第4楽章への緊張感が徐々に高められていく。深淵から爆発までの道筋がはっきりと描かれ、また技術的にも申し分なく安定感がある。第4楽章「ブルレスケ」はオーケストラを引っ張っていくパワーに溢れた演奏。どんな局面も易々と切り抜けていくので、誠に爽快だった。最後の音が鳴り終わるや否や、間を開けずにブラボーの歓声が上がって万雷の拍手となり、樫本は満面の笑みを浮かべて聴衆の喝采に応えていた。 

文:山田亜希子(ウィーン在住)

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歌う弦、きらめくピアノ あたたかく共鳴しあうデュオの真髄
樫本大進&アレッシオ・バックス
2017年7月12日(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール

<プログラム>
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K. 301
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 Op. 78「雨の歌」
シマノフスキ:神話 Op. 30
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 Op. 45
公演詳細はこちらから

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