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ベートーヴェン生誕250周年記念 首都圏8館共同制作 コンスタンチン・リフシッツ ベートーヴェンへの旅 Vol.1 in 横須賀 「ワルトシュタイン」曲目解説(4/25)

コンスタンチン・リフシッツ(ピアノ) ベートーヴェンへの旅 ピアノ・ソナタ全32曲演奏会 4月25日(土)に行われるVol.1 in 横須賀 「ワルトシュタイン」の鈴木淳史さん(音楽批評)による曲目解説をご覧いただけます。コンサートの予習に是非ご覧下さい。 初めて「ワルトシュタイン」ソナタを耳にしたとき、一瞬で心を奪われた。機械的、同時に動物的ともとれるように連打される和音。その上を煌めきながら滑っていく断片的なフレーズ。転調も破天荒だけど流れもよく、なによりも異様なそのテンション。200年も前に作曲されたのに、とてつもなく新しい音楽のような気さえした。
リフシッツの「ベートーヴェンへの旅」シリーズでは、それぞれの演奏会で核になる一曲を選び、それをテーマにして選曲が行われる。本日のメインは、その「ワルトシュタイン」。この曲が突然変異で生まれたわけではなく、その創作の過程を体験できるようなプログラムが組まれている。
出発点として最初に演奏されるのは、若き作曲家が持てるものすべてを注ぎ込んだソナタ第3番。第15番「田園」と第5番は、表現したいものの焦点がより定まり、より研ぎ澄まされたスタイルへと進化した。第15番と第5番には、「ワルトシュタイン」の冒頭を思わせる持続低音も先取りされている。
そして、第21番「ワルトシュタイン」。第3番では、いささか頭でっかちにも感じられたベートーヴェンの音楽が、この曲になると、いかに生理的なヨロコビを伴って奏でられていることか。この作曲家の表現が少しずつ身体化していくプロセス、それをリフシッツのピアノは明確に描いてくれるはずだ。

●ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 Op.2-3
Op.2の3曲は、ベートーヴェンがボンに住んでいた頃に構想、ウィーンに移ってからも作曲が続けられ、1795年頃に完成、ハイドンに献呈された。そのなかで、第3番はもっとも規模が大きく、交響曲を思わせる4楽章形式のなかに、あらゆる要素を埋め込もうという野心が濃厚だ。

第1楽章(アレグロ・コン・ブリオ ハ長調 4/4拍子 ソナタ形式)
リズム動機を主体とした第1主題に続き、ハ短調の経過句的な旋律を経て、落ち着いた雰囲気のト長調の第2主題が呈示される。
第2楽章(アダージョ ホ長調 2/4拍子 二部形式) 
ホ長調のA主題、ホ短調のB主題による、A-B-A-B-Aの構成。主調のハ長調から離れたホ短調(三度調に相当)を主題におくという、中期ソナタで本格的に行われる試みも。
第3楽章(スケルツォ アレグロ ハ長調 3/4拍子 三部形式)
フーガの展開を思わせるスケルツォ主題と、駆け巡る分散和音によるイ短調のトリオ部、そして長いコーダによる構成。
第4楽章(アレグロ・アッサイ ハ長調 6/8拍子 ロンド形式)
軽快に駆け上がるロンド主題(A)によるA-B-A-C-A-B-A構成。Bはト長調、Cはヘ長調のコラール風の旋律。高音トリルなどを交えたコーダも変化に富む。

●ピアノ・ソナタ 第15番 二長調 Op.28 「田園」
1801年に作曲。冒頭楽章の呈示部の穏やかで落ち着いた流れから、ロンドンの出版社が「田園」というタイトルを付け、それが定着している。その裏側では、「人工」という標題でも問題ないような、ベートーヴェンらしい執拗な動機労作が最終楽章などで行われている。

第1楽章(アレグロ ニ長調 3/4拍子 ソナタ形式)
主音が連打される持続低音の上に、牧歌的に歌われる第1主題。第2主題はイ長調でやはり穏やかな歌。
第2楽章(アンダンテ ニ短調 2/4拍子 三部形式) 
持続低音の上に、メランコリックな主題が奏される。ニ長調の中間部はウィットに満ちた舞曲。
第3楽章(スケルツォ・アレグロ・ヴィヴァーチェ ニ長調 3/4拍子 三部形式)
躍動的で、いくつかの細やかな動機を組み合わせたようなスケルツォ主題。ロ短調のトリオ部は流れるような旋律でごく短い。
第4楽章(ロンド アレグロ・マ・ノン・トロッポ ニ長調 6/8拍子 ロンド形式)
A-B-A-C-A-B-Aの構成。この楽章でも、持続低音のリズムに乗って軽快なロンド主題(A)が開始される。B主題は分散和音で、C主題はカノン風の旋律。

●ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 Op.10-1
前作の第4番まで、様々な要素を4楽章形式のなかに意欲的に盛り込んできたベートーヴェン。この第5番は、ハイドンやモーツァルトのような3楽章形式に回帰し、より凝縮され、引き締まった音楽が試みられている。ベートーヴェンのドラマトゥルギーがもっとも発揮されるハ短調で書かれている点にも注目したい。ベルリンへの演奏旅行から戻った翌1797年に作曲。

第1楽章(アレグロ・モルト・エ・コン・ブリオ ハ短調 3/4拍子 ソナタ形式)
強打される主和音に導かれる第1主題、変ホ長調の第2主題によって構成。展開部には、ヘ短調の新しい旋律も盛り込まれる。
第2楽章(アダージョ・モルト 変イ長調 2/4拍子 二部形式)
たおやかな第1主題と、ホ短調の第2主題による展開部のないソナタ形式。コーダにおける一貫したリズムは、やはり「ワルトシュタイン」冒頭楽章を連想させる。
第3楽章(フィナーレ プレスティッシモ ハ短調 2/2拍子 ソナタ形式)
跳躍するユニゾンで開始する第1主題、変ホ長調で出現する第2楽章による。コンパクトながら躍動に満ちた楽章。

●ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」
ベートーヴェンは、1803年に新しいエラール製ピアノを手に入れる。音域は広がり、ペダルも最新式。そして、ウィーン式ではなくイギリス式のアクションに変わったことで、明瞭かつ鋭敏、そしてダイナミックな響きを可能にした。この中期ソナタの傑作は、そんなテクロノジーの進化が生んだといってもいい。タイトルは、ボン時代からベートーヴェンを支えたパトロン、フェルディナント・フォン・ワルトシュタイン伯爵に献呈されたことから。1804年に作曲。

第1楽章(アレグロ・コン・ブリオ ハ長調 4/4拍子 ソナタ形式) 
ハ長調の主和音の連打の上に動機的な音型が現れて第1主題を形成する。ホ長調の第2主題は、コラール風。推進力に満ちたこの楽章に、唯一コントラストをもたらす存在だ。
第2楽章(序奏 アダージョ・モルト ヘ長調 6/8拍子 三部形式)
瞑想的で断片的な主題とそれが歌謡的になる中間部による構成。緩徐楽章ではあるが、次のロンド楽章への序奏として機能。
第3楽章(ロンド アレグロ ハ長調 2/4拍子 ロンド形式)
A-B-A-C-D-A-B-A(コーダ)の大規模なロンド形式。シンプルにしてクールなロンド主題(A)、Bは三連符のエチュード的な動きとイ短調のたくましい旋律、Cは切迫するように進むハ短調。Dは、実質的にロンド主題の展開部的な役割を負う。

文:鈴木淳史(音楽評論)

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ベートーヴェン生誕250周年記念 首都圏8館共同制作
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【Vol.1】in 横須賀 「ワルトシュタイン」
2020年4月25日(土)15:00開演 よこすか芸術劇場
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【Vol.1】in 横須賀 「ワルトシュタイン」
2020年4月25日(土)15:00開演 よこすか芸術劇場 (問)横須賀芸術劇場電話予約センター 046-823-9999
【Vol.2】in 横浜 ・桜木町「悲愴」
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2020年5月3日(日・祝)18:30開演 武蔵野市民文化会館 小ホール (問)武蔵野文化事業団 0422-54-2011
【Vol.6】in 東京 「告別」
2020年5月4日(月・祝)14:00開演 東京文化会館 小ホール (問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212
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2020年5月6日(水・休)15:00開演 所沢ミューズ アークホール (問)ミューズチケットカウンター 04-2998-7777
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2020年5月8日(金)19:00開演 ウェスタ川越 大ホール (問)ウェスタ川越 049-249-3777
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