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舘野泉 「舘野泉 バースデー・コンサート 2019」公演直前インタビュー!

アフタヌーン・コンサート・シリーズ2019/2020後期のスタートは、2019年11月12日(火)東京オペラシティ コンサートホールにて、左手のピアニスト・舘野泉のバースデーを祝うコンサート。2つの新曲を世界初演し、後半には女優・草笛光子さんを迎え宮沢賢治の世界を旅する。盛りだくさんのプログラムは、舘野泉の誕生日にと集った演奏家たちと、きっと、熱い心動かされるコンサートになるだろうと期待が膨らむ。
虫の声が聞こえる静かで穏やかな舘野の自宅で、ゆったりと話を伺った。ピアノ五重奏曲“MYSTERIUM”は、フィンランドの作曲家カレヴィ・アホが、今年春に完成させたばかりの作品です。2019年はフィンランドと日本が国交を結んで100年を迎えた節目の年。この記念に演奏したいと思って、現代音楽の巨匠であり世界的に活躍している彼に依頼しました。「神秘」という名を持つこの作品は、内向的な、聴く人にとっても咀嚼が必要な、そんな曲です。

共演する弦楽四重奏には、大好きな演奏家たちに集まってもらいました。ヴァイオリンの亀井さんとチェロの多井さんは、コンサートでひとめぼれ。「すごい演奏をする人たちがいる」と驚き、それからずっと一緒に演奏しています。音楽家は、色々な考えを持っているものですが、この二人は考えることがユニーク。30代の若い演奏家であるこの二人と一緒に演奏するのはとても面白いので、共演してもらっています。ヴィオラの安達さんとは2年ほど前に知り合ってから、よく一緒に演奏しています。大変腕が利き、音楽的に素晴らしい演奏をされます。ヨーロッパでも活躍して、オーケストラの首席として経験を積まれた方です。彼らに息子のヤンネも加わって演奏します。

音楽には、年齢は関係ないですね。共演者どうしが遠慮をすることなく、正面からぶつかる。彼らは、「舘野さんは優しいやくざですね」と笑いながら言うんですよ。で、僕は、「じゃああなたたちはエレガントな無法者だよ」と言い返すんです。(笑)

2曲目は、アルゼンチンの作曲家パブロ・エスカンデの作品。彼にはたくさんの作品を書いてもらっています。素晴らしい才能をもっている大好きな作曲家です。ブエノスアイレス出身で、オランダで作曲家・チェンバリストとして経歴を積んだのち、現在は京都にお住まいです。とても素晴らしい作品ばかりで、一曲一曲が新しい工夫に満ちていて、非常によく練られた作品だなぁといつも感心します。

以前、金管アンサンブルとヤナーチェクのカプリツィオ(これもピアノと金管アンサンブルの名作)を演奏したときに、素晴らしくてすごい音楽だったんです。それで、金管アンサンブルと一緒に演奏する、ヤナーチェクにも匹敵する曲を、とリクエストしました。アヴェ・フェニックスと名づけられたこの作品は、500年に一度燃え尽きて生まれ変わる不死鳥を、「舘野さん、あなたもフェニックスだ」と、パブロが発想して書いたそうです。金管12本と打楽器、そしてピアノという大編成で演奏しますから、非常に華やかで、色彩感豊かなパンチのある作品となりました。先日発表しました通り、金管アンサンブルは、日本のトップ奏者たちに集まっていただきました。

素晴らしい共演者たちと、決死の気持ちで演奏しますから、きっとお客様には喜んでいただけると思います。内向的な一曲目に対して、この作品は曲の方から来てくれるでしょう。

後半は、草笛光子さんと一緒に、宮沢賢治を題材にした作品を演奏します。

吉松隆さんも、宮沢賢治が大好きなんです。彼に「宮沢賢治の作品を作って」とお願いしたら、実は昔書いたんだよ…といって取り出してきて、改作をして出来上がったのがこの《KENJI…宮沢賢治によせる》です。8篇の詩とピアノによる作品で、朗読と、語りかけるようなピアノの書き方です。迫力があってユーモアもあり、悲しみもあります。曲の終わり頃には、客席で、皆さん泣いているんですね。銀河鉄道で永遠の星空に旅立っていくような感じで。演奏している我々が泣いてはいけない、と思いながらも、涙が出てきてしまうんですよ。終わってみたら草笛さんも泣いていました。途中、岩手の言葉で朗読する箇所があるのですが、ユーモアがあって、いつも楽しい気持ちにさせられます。

もう20回ちかく演奏をしていますが、東京では2回目です。どうぞ楽しみにしていてください。草笛さんの魅力に、皆さん感動されると思います。

ところで、左手のための作品は、世界中で今、日本でもっとも多くかかれています。2004年、日本で初めて誕生した左手のための作品は、間宮芳生さんの「風のしるし」でした。復帰するときにと書いてもらった作品です。当時は、作曲する方もどうやって書いたら良いのかわからなかったそうです。林光さんや吉松隆さんらも、かつてはそうでした。でも作品が増え、演奏される機会が増えるにつれて、どういう風に弾いているか実際に見て、聴いて、左手のための音楽がどんどんつくられるようになりました。

左手だけで弾いているという意識は、実は僕にはありません。左手に集中して、ひとつのモチーフを大事に貫くと、集中力がもたらす十分な力を感じます。神様がもし「きみはよく頑張ったから、もう一度両手で弾けるようにしてあげる」と言ったとしても、僕は断ることにしているんです。このままで、満足していますし、音楽をやっているだけ、ですから。
心の中に浮かんでくることだけを自然に実現していくと、次にやるべきことも浮かんでくるんです。

色々な方に、「このコンサートは、今年一番のおすすめです」とお伝えしています。ぜひ聴きにいらしてください。

舘野泉


◆舘野泉のプロフィールなどアーティストの詳細
https://www.japanarts.co.jp/artist/IzumiTATENO
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舘野泉 バースデー・コンサート2019
2019年11月12日(火)13:30 東京オペラシティコンサートホール
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