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『アンナ・カレーニナ』東京公演初日レポート

7月20日、待望のエイフマン・バレエ『アンナ・カレーニナ』が東京公演の初日を迎えました。ロシア文学の傑作、トルストイ原作の『アンナ・カレーニナ』をもとにした本作品は、エイフマン・バレエの代表作でもあります。踊りも、物語の展開も非常に完成度が高く、観劇後はしばらく物語の世界から抜け出せそうにありませんでした。
汽車のおもちゃで幼い息子アレクセイが遊ぶ場面から物語が幕を開けます。アンナ(レズニク)と、夫カレーニン(ヴォロブーエフ)の気持ちがすれ違ってしまう様子が、お互いのかみ合わない視線で巧みに表現されます。そんな中アンナは若く魅力的なヴロンスキー(スボーチン)と出会い、その愛にひた走りおぼれていきます。ヴロンスキーは青年将校らしく胸を張り、誇らしげに顔を上げるポーズを繰り返します。跳躍や回転といった見せ場も多く、鮮やかです。
二人が出会う場面をさらに彩るのは、上流社会の男女の群舞です。リフトが繰り返され、多声的に展開される踊りはとても華やかです。アンナの踊りは、ヴロンスキーとの出会いでより自由に、軽やかに、開放的になっていきます。そんなアンナを、厳格で感情を表に出そうとしない夫カレーニンが厳しく諫めます。冷めきってしまったカレーニンへの想いと、燃え上がる新たな恋心が、アンナの内なる烈しさに火をつけ、アンナの踊りは次第に歪んでいきます。アンナが夫と息子とともにいるスポットライトの光の輪を抜け、もう一つの光の輪、おもちゃの汽車が回る線路の中に立ち、彼女の上に雪が降る場面で一幕は終わります。雪の中鉄道自殺を遂げる悲劇的な結末を見事に暗示した演出です。
二幕は酒場のシーンで始まり、お酒の入った男たちの踊りは妙にリアルで面白く、椅子を効果的に用い、盛り上がりました。アンナがついに家庭を捨ててしまうと、カレーニンは苦悩のモノローグを踊ります。カレーニンが抑えていた感情――アンナの不貞と別離による心の痛み――がひしひしと伝わってきます。一方、ヴロンスキーとアンナが二人だけの時間を過ごすために向かったヴェネツィア旅行の場面は、群舞の煌びやかなカーニヴァルの踊りで始まります。続いて、ゆったりと椅子に腰掛け蠱惑的なポーズをとるアンナ。妻として、母親としてではなく、女性として生きることを選んだのだと感じました。ヴロンスキーは彼女を愛おし気に眺めキャンバスに筆を走らせます。2人はしかし心から逃避行を楽しめません。アンナは鞄にひそませたアレクセイの人形をこっそりと手に取り、ヴロンスキーは将校としての生活を思い出します。

家庭を捨ててまで恋愛を選ぶ人生を、社会が決して許さなかった時代。社交界に戻っても、彼らを待っていたのは人々の冷たい目でした。2人は追い詰められてゆき、アンナの烈しさもどんどん狂気を帯びていきます。ヴロンスキーは足にすがりつき懇願するアンナについていけなくなります。アンナは悪夢の中で、一糸まとわぬ姿で髪を振り乱し、同じように裸の男女たちに囲まれ身体を歪ませ、振り回されます。アンナが内なる官能の狂気に呑み込まれていく様子が、極限まで折り曲げられたり、伸ばされたり、ねじられた身体で見事に表現されていました。
列車は、群舞の小刻みなステップや回る車輪のような腕の動きで表現されます。アンナが橋の上から鉄道(=群舞)に身を投じると、彼らはすぐさま彼女の周りに集まり死を悼む群衆に姿を変えます。列車をダンサーで表現する独創性ももちろんのこと、この場面転換の巧みさやすばやさにも驚きました。群衆の中から、うつ伏せに担架に乗せられたアンナの遺体の足の裏が、こちらを向いて白く浮かび上がります。
結末がわかっていても非常にショッキングなラスト・シーンでした。上流社会も、夫も、息子も捨てて、まさに命を懸けてしまったアンナの許されざる烈しい恋の、残酷な末路でした。

7月21日の『アンナ・カレーニナ』は、2019年エイフマン・バレエ日本ツアーの最終公演です。
皆さまお楽しみいただければと思います。

取材・文:梶彩子

当日券は12時45分より東京文化会館当日券販売窓口にて発売いたします。

また開演30分前より、U25(公演当日に25歳以下)の方を対象にした特別鑑賞券も発売いたします

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※当日券が売切れになった場合は、取扱いございませんのでご了承ください。
※お支払いは現金のみです。

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21年ぶり待望の来日!世界に衝撃をあたえ続ける
エイフマン・バレエ 日本公演 2019

7.21 [日] 14:00 「アンナ・カレーニナ」
会場:東京文化会館
(問)ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212

エイフマン・バレエ 日本公演2019 特設サイトはこちらから