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《マゼッパ》現地取材レポート【マリインスキー劇場】

知られざるチャイコフスキーの傑作「マゼッパ」、2019年12月の日本公演に先駆けて3月に行われた現地での鑑賞レポートを公開します。ぜひご覧ください!《マゼッパ》(2019年3月7日)
この1950年のイリヤ・シェルピャノフ演出を2009年に蘇演したという《マゼッパ》、まさに手に汗握る時代劇だった!十七世紀ウクライナの政治的混沌を背景に、老指導者マゼッパが年の離れたマリヤと愛し合い、その父コチュベイの反対を押し切り結婚。父親は失脚のうえ悲劇的処刑、派手な戦闘、そしてマゼッパが最終的に失脚し逃走する際に見るのは父の死に精神の平衡を失った妻マリヤ……という、ジェットコースター・ドラマ。どこを切っても話も音楽も派手で面白い!

歌手も皆レベルが揃っていた。現在急速に国際的活躍の場を拡げつつあるヴラディスラフ・スリムスキー、一幕で彼の歌う七十代の指揮官マゼッパが、マリヤを巡ってコチュベイと口論する場面の迫力にいきなり圧倒される。マゼッパに娘を奪われ反撃を試みるも逆に捕えられ極刑に処される地主コチュベイには、ロシアの誇る名バス歌手ウラディーミル・ヴァネーエフ。特に死を前にした牢獄でのモノローグでの格調高い悲劇的歌唱には心を揺さぶられた。2017年にこの劇場のソリストになったばかりのマリヤ役のエレーナ・スティキナは、この日がマリヤ役の初舞台だったが、チャイコフスキーのヒロインにぴったりのメランコリックな美声が印象的。このオペラの最後を締める、哀しい子守歌も素晴らしかった。

多様なスタイルの合唱を楽しめるのも、この作品のよさだ。一幕の男女の踊りと共に歌われる素朴な民謡。頭領二人、コチュベイの一族郎党、マゼッパ率いるコサック軍による、歌で描く壮大な対決劇。処刑されたコチュベイの死を悼む歌では厳かな讃美歌の響き。同時に、三幕冒頭の「ポルタワの戦い」のような管弦楽の華やかさも特筆すべきだろう。これまで日本で紹介されてきた《スペード》《オネーギン》といった作品にはなかった、「序曲1812年」のようなチャイコフスキーの音楽の勇壮な側面をたっぷり楽しむことができる。わくわくし続けの四時間だった。

森岡実穂(中央大学准教授)

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巨匠ゲルギエフ&ロシア芸術の殿堂 マリインスキー歌劇場が総力を結集して贈る
マリインスキー歌劇場 チャイコフスキー・フェスティヴァル2019
▼画像をクリックするとPDFで詳細をご覧頂けます▼
歌劇「スペードの女王」
2019年11月30日(土)15:00 東京文化会館
2019年12月1日(日)15:00 東京文化会館
歌劇「マゼッパ」(コンサート形式)
2019年12月2日(月)18:00 サントリーホール
マリインスキー 歌劇場管弦楽団 演奏会
2019年12月5日(木) 19:00 サントリーホール(チェロ:アレクサンドル・ブズロフ)
2019年12月6日(金) 19:00 東京文化会館(ヴァイオリン:五嶋龍)
2019年12月7日(土) 13:00 東京文化会館(ピアノ:セルゲイ・ババヤン、辻井伸行)
2019年12月7日(土) 18:00 東京文化会館(ピアノ:セルゲイ・ババヤン)

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