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舘野泉&ラ・テンペスタ室内管弦楽団 日本ツアー記者懇親会レポート

日本フィンランド国交樹立100周年の今年、親善大使に任命された舘野泉氏とラ・テンペスタ室内管弦楽団による記念公演が開催されます。この公演に先立ち、駐日フィンランド大使館で記者懇親会が行われました。冒頭には、フィンランド大使館臨時代理大使 ユハ・ニエミ氏による挨拶がありました。
「日本とフィンランドはこれまで多くの場面でWin-Winの関係を築いてきましたが、中でも文化交流での成果は大きなものでした。その中で舘野泉先生の果たしてくださった役割は大きなものです。今回、日本フィンランド国交樹立100周年の親善大使を選ぶにあたっては、真っ先に舘野先生のお名前が上がり、お引き受けいただくことになりました。この記念年にあたり、舘野先生とラ・テンペスタ室内管弦楽団の日本公演は、とても大きなイベントとなります」これを受けて舘野泉は、「日本とフィンランドの音楽的な親交は古くからとても深いもので、それはこれからも続いていくでしょう。今年が、シベリウスはじめフィンランドの音楽を日本に紹介してくださった指揮者の渡邉暁雄さんの生誕100年の年だということにも、運命的なものを感じます」と語りました。ラ・テンペスタ室内管弦楽団は、舘野泉氏の息子であるヤンネ舘野氏がコンサートマスターをつとめる室内楽オーケストラ。ヤンネ氏の学生時代の仲間たちが中心となって結成され、親密なつながりのなかで活動を続けています。2011年の東日本大震災のあと、南相馬でコンサートをした最初の海外オーケストラでもあります。
日本フィンランド国交樹立100周年記念公演のプログラムは「生きる喜びへ~友好百年目にささげる音楽の花束~」がテーマ。取り上げるのは、まずシベリウスやラウタヴァーラ、ノルドグレンという、19世紀から21世紀にかけて活躍したフィンランドの作曲家たちです。ヤンネ舘野「フィンランドは小さな国ですが、たくさんの優れた作曲家がいます。その代表であるシベリウスの作品としては、一般的に『フィンランディア』や交響曲などの大曲が有名ですが、室内楽オーケストラのための親密な作品にも魅力的なものがあります。例えば『ラカスタヴァ(恋する人)』は、フィンランドの森の雰囲気が感じられる作品。ラウタヴァーラ 『フィンランド神話』は、凍った世界を表現するような音楽が、不思議な感覚に導いてくれます。またノルドグレンは、フィンランドでも忘れかけられた存在ですが、本当にすばらしい作曲家。『弦楽のための交響曲』は彼の若い頃の作品で、ショスタコーヴィチに世界観が近く、演奏するたびに鳥肌が立つような魅力があります」

また、同じノルドグレンの作であるピアノ協奏曲第3番は、小泉八雲の怪談「死体にまたがった男」から着想を得て書かれたという。

舘野泉「どうしてこのような話を選んだのだろうと思うような、恐ろしい怪談がテーマの作品です。男に捨てられ、絶望して死んだ女。彼女の元に戻ってきた男は、女の呪いで自分には恐ろしい運命が待っていることを知ります。それを回避する方法はただ一つ。夜中に男を探して暴れ出す女の背にまたがり、髪を掴んで何があっても離してはいけないということ。男は恐怖の中なんとかそれを成し遂げ、白々と夜が明けていった。…そんなお話です。人間の中にある、恐怖、絶望、苦しみ。そして最後は静かに、それでも世界は続いていく…ということが表現される作品です」

また、日本人作品からは、熊本出身の作曲家、光永浩一郎の「左手ピアノと室内管弦楽のための『泉のコンセール』」が取り上げられます。舘野泉「光永浩一郎さんは、ピアノが人生の一部であると感じさせるピアノ曲を書く方。そこで、ピアノ協奏曲を作曲してくださらないかとご提案しました。この曲は2016年の熊本地震を挟んだ時期に書かれています。とてもピアニスティックな作品で、最後は生きる希望を感じさる中で音楽が閉じられます」

指揮のエーロ・レヒティマキ氏は、今年30歳。もとはピアニストを目指していたそうですが、怪我のためクラリネットに転向、さらに指揮者として活動するようになるとゲルギエフに認められ、世界の注目を集めた気鋭の若手。今回が初来日となります。

今回のプログラムはいずれも、舘野泉のピアノや、フィンランドの文化を熟知したラ・テンペスタ室内管弦楽団の共演で聴くことに大きな意義のある作品ばかり。遠いフィンランドの澄んだ空気と、日本、フィンランドがこれまで育んだ交流に思いを馳せる一夜となりそうです。

取材・文:高坂はる香

今回のツアーで演奏される『光永浩一郎:左手ピアノと室内管弦楽のための「泉のコンセール」』について音楽の友に掲載されたヘルシンキ公演(世界初演)の批評より
「泉のコンセールは、まったく余分なものがない。その芯の中心まで音楽的に書かれた作品で豊かな変化と色彩感覚に満ちたものだった。他の追随を許さぬ舘野泉の演奏の秘密は、歌う旋律線を心の奥底にまで響かせていくことだろう。アルフレッド・コルトーやアルトゥール・ルービンシュタインのような数少ないピアニストだけが持つ才能である。第1楽章のカデンツァで繰り返される単純な音型の中に驚くべき旋律の虹を彼は紡ぎだした。第2楽章ではすべての聴衆が一体となったソリストとオーケストラの哀愁にみちたジャズふうのワルツに酔いしれた。終楽章は躍動するリズムと、緊張感あふれるコラールの対比が見事。」(取材・文:マルッティ・ラウティオ)

◆今回のラ・テンペスタ室内管弦楽団日本ツアーの成功に向けて、クラウドファンディングも行われています。
【舘野泉&ラ・テンペスタ室内管弦楽団・日本ツアー成功への道】
期間:2019年3月27日~4月25日
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日本フィンランド国交樹立100周年記念公演
舘野泉&ラ・テンペスタ室内管弦楽団~2つのピアノ協奏曲~
2019年5月25日(土) 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
公演詳細はこちらから