2018/5/28

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キミン・キムのインタビューその1[マリインスキー・バレエ]

ウィーン国立バレエ団の来日公演「海賊」では、観客の度肝を抜くような高く鮮やかな跳躍とともに、端正でエレガントな舞台姿、パートナーリングの巧みさでも魅せ、熱狂を呼び起こしたキミン・キム。東洋人初のマリインスキー・バレエのプリンシパルであり、数々の国際コンクールで優勝。アメリカン・バレエ・シアター(ABT)、パリ・オペラ座にもゲスト出演するなど、世界中で引っ張りだこの人気を誇りますが、いよいよ所属するマリインスキー・バレエの来日公演に登場します。まずは彼のこれまでの歩みを中心に語っていただきました。キミンさんとのバレエの出会いはどんなものだったのでしょうか。
9歳の時にバレエを始めました。母がクラシックの作曲家という仕事をしていたので、ぼくたち兄弟にバレエを習わせたのです。あるとき母に、兄と「眠れる森の美女」の公演に連れて行ってもらい、二人で感動して大泣きをしました。幼いぼくがダンスを観てこんなにも感動して泣くなら、大人はもっと感動するに違いないと思ったのです。ぼくが受けた感動を踊りで伝えられたらと思って本格的にバレエに取り組むことにしました。

お兄さん(キム・キウォン)も韓国国立バレエのダンサーとして活躍されていますね。
周りからも羨ましがられるほど、兄とは仲良しです。兄なのですが、友達、仲間と言ったほうがいいかもしれません。電話でも頻繁にやり取りし、お互いの踊っている映像を観ながら指摘し合ったりするのですよ。大変な時に最初に相談する相手で、お互いに助け合っています。

ウラジーミル・キム、マルガリータ・クリークというマリインスキー・バレエ出身の教師からキミンさんはバレエを学ばれましたね。どんなことを彼らから学びましたか?
バレエは、まずは基本がしっかりしていないといけません。基礎があってからテクニックがあり、その上で演技力が存在することを二人は強調していました。演技力については、作品ごとのキャラクターを研究することが大切だと。彼らとはキャラクターの解釈について話し合いながら分析することをしていました。いくら素晴らしい才能を持っていたとしても、良い教師の教えがなければ才能は花開きません。ぼくのダンスの90%以上は、教師が作ったと言っても過言ではありません。とても幸運だったのは、ぼくとバレエに対する価値観が一致していることです。この二人を一番信頼し、今もお父さん、お母さんと二人のことを呼んでいるくらい、家族同然の付き合いなのです。ロシアに移り、マリインスキー・バレエに入団されてから、どのような苦労がありましたか?
苦労というものはありませんでした。自分でいうのもなんですが、胸を張って「頑張りました」と言えるほどものすごく努力をしたのです。でもこの努力は少しも苦痛には感じませんでした。自分が入りたい!と思ってマリインスキー・バレエに入団して夢がかなったわけだし、バレエが本当に好きなので、それがつらいと感じられたことはありません。あえて挙げるとしたら、ロシアにいるので韓国の家族と離れていることくらいです。

バレエはもともと西洋の文化ですが、私たち日本人同様、東洋人のキムさんが西洋のヒーローや貴公子を演じるにあたってはどのようなことを心掛けられていますか?
マリインスキー・バレエには、マリインスキーならではの伝統的なスタイルがあり、それを守ろうとしています。ぼくは伝統を守りながらも、自分ならではの個性も加えていきたい。その個性とはぼくがアジア人だからこそ出てくるものだし、あえて隠そうとは思っていません。人にはそれぞれ長所、短所があり、ぼくは短所を隠すよりも長所を拡大して見せようと心がけています。
日本のダンサーの跳躍力、回転力などの強いテクニックはぼくも大好きです。ぼくは熊川哲也さんをとても尊敬していて、彼の映像をよく観てたくさんのことを学びましたが、自分の長所をよくわかっているのだろうと感じています。

キミンさんが一番好きなダンサーは誰ですか?
過去のダンサーも含めると、マリス・リエパとウラジーミル・ワシーリエフです。彼らの作品の解釈、そしてそこから伝わってくる感受性が、ぼくが追求しているものと同じだからです。映像を観ながら今も彼らから学んでいますよ。ペルミ国際バレエコンクールで金賞を受賞したのですが、賞を獲ったことより、ワシーリエフが主催するコンクールに出場して受賞できたことの方が嬉しかったのです。クラシック・バレエの殿堂であるマリインスキー・バレエですが、最近は現代作品のレパートリーも増えています。キミンも古典ばかりにこだわっているのではなく、ジョン・ノイマイヤー、ウェイン・マクレガー、ウィリアム・フォーサイスの作品を踊りたい、特にノイマイヤーと仕事がしてみたいし、いずれは振付にも挑戦したい、と意欲をのぞかせました。彼の新しい顔を観る機会も遠くはないかもしれません。まだ踊っていない作品では、「スパルタクス」のタイトルロールにチャレンジしたいと熱く語ってくれました。

取材・文:森 菜穂美

美しく、輝かしい感動がよみがえる・・・
マリインスキー・バレエ

11.28[水] 18:30 「ドン・キホーテ」ヴィクトリア・テリョーシキナ/キミン・キム
11.29[木] 14:00 「ドン・キホーテ」アナスタシア・マトヴィエンコ/ティムール・アスケロフ
12.5 [水] 18:30 「ドン・キホーテ」レナータ・シャキロワ/フィリップ・スチョーピン
12.2 [日] 18:00 「マリインスキーのすべて」
12.3 [月] 18:30 「マリインスキーのすべて」
12.6 [木] 18:30 「白鳥の湖」ヴィクトリア・テリョーシキナ/ウラジーミル・シクリャローフ
12.7 [金] 18:30 「白鳥の湖」エカテリーナ・コンダウーロワ/ティムール・アスケロフ
12.8 [土] 12:00 「白鳥の湖」ナデージダ・バトーエワ/キミン・キム
12.8 [土] 18:00 「白鳥の湖」オクサーナ・スコーリク/ザンダー・パリッシュ
12.9 [日] 14:00 「白鳥の湖」アナスタシア・マトヴィエンコ/ウラジーミル・シクリャローフ
マリインスキー・バレエ2018年来日公式サイトはこちらから

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