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【公演直前インタビュー】フェルッチョ・フルラネット

 マリインスキー・オペラの『ドン・カルロ』で、最高権力者であるフィリッポ二世を歌うのが、「理想のフィリッポ二世」と呼ばれる大ベテラン・バス歌手のフェルッチョ・フルラネット。コミカルな役も演じるが、ヴェルディが書いた深遠でシリアスな役は、フルラネットの真骨頂だ。劇中に使用される映像のシューティングの合間を縫って短いインタビューを敢行。ただそこにたたずんでいるだけで、完璧なオペラの世界が存在しているようだった。
今回の演出はジョルジオ・バルベリオ・コルセッティによるものですが、数えきれないほど『ドン・カルロ』に出演されてきたフルラネットさんにとってよい演出ですか?
「奇抜ではない、歴史的な衣装を使った納得のいく演出だと思います。今は色々な現代演出がありますからね。この役は、私にとって妥協したくない役なのです」


フィリッポ二世のような存在感のある役を演じ続けていると、ご自身の人生にも影響があるのではないですか?
「当然そうだと思います。1980年にこの役を初めて演じてから36年がたちましたが、36年間ずっとこの役を温めてきたとも言えます。若かった頃とは死に対する考え方が変わりましたし、他の登場人物に対する想いも変化してきました。この役の素晴らしさは、毎回新しい発見があることです。自分の人生における発見が役に反映され、オペラでの役が人生にも影響を与えていく…そんな相互作用があります」


カラヤンを筆頭に黄金時代の指揮者たちと共演を重ねてきたフルラネットさんにとって、ゲルギエフ氏はどのような指揮者ですか?
「ゲルギエフ氏とは色々なオペラをやりました。『ドン・ジョヴァンニ』に『ドン・キショット』、『ボリス・ゴドゥノフ』も…彼は偉大な音楽家であり、私にとって親しい友人でもあります。夏の音楽祭でもオペラでも、彼と共演するのは大きな喜びです」


36年間フィリッポを演じられてきて、最も印象に残っているプロダクションはありますか?
「1986年のザルツブルク・イースター音楽祭です(カラヤンが私財を投じて1967年に設立した音楽祭)。カバーとして待機していた『ドン・カルロ』で、フィリッポ二世役のジョゼ・ヴァン=ダムが体調不良となり、マエストロ・カラヤンに指名されて急遽私が歌うことになったのです。数分ビデオを見て、その12時間後には舞台に立ち、世界中で放送されて私の名前は広く知られることになりました。このフィリッポの鬘は、そのときにつけていたものです。縁起をかつぐタイプではないのですが、この鬘だけは特別なものなのです」

小田島久恵(音楽ライター)

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マリインスキー・オペラ 来日公演2016


「ドン・カルロ」
10月10日(月・祝) 14:00/10月12日(水) 18:00
「エフゲニー・オネーギン」
10月15日(土) 12:00/10月16日(日) 14:00
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