金子三勇士ピアノ・リサイタル

躍進する“旬”のピアニストを聴く

金子三勇士のデビュー・コンサートは2011年7月、東京オペラシティに於けるアフタヌーン・コンサートであった。そして、2016年にデビュー5周年を迎えた彼がこのステージに還ってくる。最近の金子は、そのさわやかで溌剌とした姿に加え、積み重ねた経験によるものなのであろう、その表情に「凛とした」ヴィルトゥオーゾの風格が漂うピアニストに変貌しつつある。
今回のアフタヌーン・コンサートも、そうした彼の「今」を聴く、絶好の、そして充実のプログラムとなっている。
もともと金子のリサイタル・プログラムはその強靭な体力とピアニズムに呼応して「サービス精神」に溢れた華やかな内容が多いが、今回はレストランのメニューにたとえるなら、さしずめ「デラックス・セット」とでも言いたくなるような、盛りだくさんの内容で楽しませてくれる。
前半では金子三勇士の自作に加え、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンの名旋律が一挙に楽しめる。そして後半には彼の演奏会に行くなら、いつだって絶対に聴いておきたいリストの「聴きドコロ作品」がズラリと揃っている。
名旋律＆超絶技巧作品を鮮やかに奏でてくれる金子三勇士。同時代を生きるわたし達は、さらに大きな舞台へと躍進するヴィルトゥオーゾの「今＝瞬間」を記憶に焼きつけ、新しい時代を共に歩んでゆきたいものだ。