2013/9/18

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チェコ・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターのインタビュー

ヨゼフ・シュパチェック(チェコ・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター)に聞く
2013年3月リサイタルのために来日した、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の若きコンサートマスター、ヨゼフ・シュパチェックさんに、ご自身のこと、そして今年秋に来日するチェコ・フィルハーモニー管弦楽団のことなどを伺いました。

ヨゼフ・シュパチェック

Q:忙しい中お時間を作っていただきありがとうございます。また、お父さま(チェコ・フィル チェロ奏者)にもご同席いただいて大変光栄です。まずはシンプルな質問から!日本はお好きですか?
シュパチェック(以後、S):はい、大好きです。まず食べ物が好きです。お寿司はもちろん、刺身、ラーメン、餃子、から揚げなど、みんなほんとうに美味しいですよね!

Q:チェコはビール大国ですから、この点はどうでしょう?
S:確かに私の国にはとても美味しいビールがたくさんあります。ヴァイスビール(酵母入りの白ビール。ドイツ・バイエルン地方で有名)タイプもありますが、私は特にチェコのラガーやピルスナーが好きです。日本のビールでは、特にキリンやアサヒが好きです。

Q:ビールだけでなく、チェコと日本は似たところがありますね。チェコ人は非常に謙虚で親切です。そしていつも笑顔でとても丁寧に接してくれます。
S:私にとっては、同じことが日本人に対しても言えます。いつも温かく迎えてくださって、とても心地よいのです。

Q:ところであなたのキャリアについてお聞かせください。プラハの音楽界では、チェコ・フィルに素晴らしいコンサートマスターが入った、と注目の的ですね。現在24歳、若くして名門チェコ・フィルのコンサートマスターに就任したきっかけを教えていただけますか?ソリストとしての活動を続けながら、コンサートマスターに就任したのはなぜですか?
S:私は、フィラデルフィアのカーティス音楽院を経て、ニューヨークのジュリアード音楽院で修士号を取得しました。ジュリアード音楽院では、イツァーク・パールマン氏に学んでいたのですが、先生がチェコ・フィルでコンサートマスターを決めるオーディションがあることを教えてくれたのです。
その頃はまだ、自分の将来について、アメリカに残りソロ活動を展開していくべきか、ヨーロッパに戻るべきか決めかねていました。しかし、チェコ・フィルのコンサートマスターになれるチャンスがあるのでしたら、逃す手はありませんよね。何しろ、素晴らしいオーケストラですから!さらにチェコ・フィルには複数のコンサートマスターがいますので、自身のソロ活動も行えると思ったのです。2つのことを同時進行するわけですから、ご想像のとおりとても忙しい毎日を送っています(笑)。体力的にはハードですが、こういったことができるのも若いからこそ。今はこの充実した活動をとても楽しんでいます。またチェコ・フィルは私のソロ活動にも非常に協力的で、海外での活動にも力を貸してくれています。とても感謝しています。

Q:1年に何公演くらい演奏していますか?
S:チェコ・フィルの活動は始まったばかりですが、今のところ月1回の定期演奏会(1プログラムにつき3公演)に加えて、ニューイヤーなどの特別公演やオーストラリアやイギリスなどでの海外ツアーにも参加しました。外国公演に参加することで多くの刺激を受けますし、より多くの人たちに私のことを知ってもらえるので、嬉しいです!

Q:今回はソロ・リサイタルだけでなく、チェコ・フィルのチェリストでもあるお父さまもメンバーに入った、言ってみれば同僚とのアンサンブル・コンサートも行っていましたね。こうやって親子で頻繁に演奏しているのですか?
S:そうですね、よく一緒に演奏旅行をしています(笑)。

Q:ご家族は皆さん音楽家ですか?
S:母はプロの音楽家ではありませんが、音楽を楽しんでいます。ギターを弾いたり、歌ったり。1歳半下の弟は現在チェコ・フィルのアカデミー生としてチェロを学んでいます。

Q:ということは、弟さんもチェコ・フィル団員候補ということですね?こんなにシュパチェック家の音楽家が増えれば、チェコ・フィルも名前を変える日が来るのでしょうか(笑)。
S:もしかしたら、そんなこともあるかもしれませんね!(笑)。

Q:お話を聞けば聞くほど、あなたの音楽生活はとても充実していることが判ります。
S:世界的にも高い評価を得るチェコ・フィルでの活動は、私の音楽経験をより充実したものにしてくれています!本当にありがたいことです。

Q:マエストロ・ビエロフラーヴェクについてお聞かせください。若手音楽家の教育にこれまで力を注いできたマエストロですから、彼はあなたの演奏活動にも理解がある方だと思います。マエストロのことは、以前からご存知でしたか?
S:私がカーティス音楽院で学んでいた時、マエストロがフィラデルフィア管弦楽団に客演なさったことがありました。その時、夕食をご一緒し、音楽のこと、人生のことなどお話ししたことを覚えています。それが、今はこうして一緒に仕事をしているのですから、人生は不思議なものですね。

Q:それは、その時からマエストロはあなた期待していた、ということでしょう?
S:当時、私がどのようなヴァイオリニストか、マエストロはよくご存知でなかったと思うのですが・・・。
でも、そうだとしたらとても嬉しいですね。
実は9歳のとき、私はマエストロの指揮でプラハ・フィルと共演をしています。巨匠ヨゼフ・スーク氏と、バッハの「2のヴァイオリンのための協奏曲」をチェコ・フィルが本拠地にしているルドルフィヌム・ドヴォルジャークホールで演奏させていただきました。そう考えると、マエストロのもとチェコ・フィルでコンサートマスターを務めるということに、不思議な縁を感じます。

Q:お父さまを前にしてお答えになるのも難しいことだと思いますが(笑)、シュパチェックさんはこの伝統あるオーケストラのコンサートマスターに若くして就任されました。オーケストラの中にも世代の違いを感じますか。またリーダーとしての責任をどこに感じますか?
S:もちろん、コンサートマスターは今年始めたばかりですから、自分が何を言うべきか、どう伝えたら良いかということには、とても気を使っています。しかし、学生からプロになる過程は非常にスムーズでした。オーケストラでの仕事が始まった1週間目から、すでに同僚から受け入れられたと感じました。

Q:あなたにとってチェコ・フィルの素晴らしいところとはどんなところでしょうか。
S:やはりオーケストラの魂(Soul)です。ドヴォルジャークやスメタナをはじめ、我が国チェコには優れた作曲家が数々のすばらしい作品を残しています。これらを演奏するたびにチェコ・フィルはそれを“魂”で感じ取り、我がものとして表現をするのです。我々は自国や文化への愛を深く持っています。

ヨゼフ・シュパチェック

Q:コンサートマスターとしては2年目を迎えられますね。この間一番印象に残った演奏会のことをお話いただけますか。
S:それはいい質問です。なぜならば、これまで演奏してきた多くの公演で、私自身が感動しているんです(笑)。最近ではヤクブ・フルシャが指揮したドヴォルジャークの協奏曲などがあります。マエストロ・ビエロフラーヴェク指揮によるドヴォルジャーク・シリーズも心に残る公演でしたし、シナイスキーやエッシェンバッハ、ビシュコフが客演する演奏会もすばらしかったです。

Q:学生のときに見ていたチェコ・フィルと、実際にコンサートマスターとして関わるチェコ・フィルの違いは?
A:まず、事務局が一新しました。新しい首席指揮者の就任に伴い、事務局のメンバーも一新したことで、新鮮な空気と新しいスピリットが宿りました。新しいエネルギーがみなぎっています。それはひとつひとつのコンサートにおいて、楽団員が渾身を込めて演奏に取り組み、そして自らが音楽を心から楽しんでいることで、皆さんにもお判りいただけるでしょう。

Q:まさにそうですね。これまでの十数年間、混沌とした時代を過ごしたことは事実でしょう。あなたも新風を巻き起こした一人ですが、チェコ・フィルが、改革あるいは新しく取り入れたことというのはなんでしょう。
S:それはブランディングではないでしょうか。今や世界中のオーケストラが自らの個性や魅力を聴衆にアピールし、市場開拓に力を注いでいますが、チェコ・フィルはこれまでそういった活動を行ってきませんでした。新体制では、このブランディングの重要性を見直し、我々の存在を世界に向けて発信することにより力を注いでいます。その成果はすでに実証されていると思います。

Q:音楽面でも良いスピリットがみなぎっていることが実感できるわけですね。
S:良い音楽活動を展開するために、国の文化省は経済的に大きなサポートをしてくれています。我々はより質の高い仕事をすることで、誠心誠意その行為に応えなくてはなりませんし、実現していると思います。

Q:最後に、日本のファンに向けてのメッセージを一言お願いします。
S:ぜひ我々、新生チェコ・フィルのコンサートに来てください!スピリットとエネルギーに溢れた私たちの演奏は、あなたの期待を裏切ることはないでしょう!

Q:秋の日本公演を心から楽しみにしています。ありがとうございました。
オフィシャル・ホームページ:http://www.josefspacek.com/web/home.aspx

取材:武蔵野市民文化会館楽屋にて(2013年3月4日)


―甦る“誇り高き響き”―
ビエロフラーヴェク指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
2013年10月30日(水) 19時開演 サントリーホール
2013年10月31日(木) 19時開演 サントリーホール
2013年11月03日(日・祝) 19時開演 ミューザ川崎シンフォニーホール
詳しい公演情報はこちらから

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